すみません、ミスで1回下書きのまま投稿してましたт т
今回が本当のepisode❹です!
一旦完結になります🍊
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なんとなく、今日はまだ一緒に居たかったから。このまま帰るのがなんだか惜しい気がしたから。
「久しぶりに、2人でゆっくり話せる時間がほしい」
そんなもっともらしい理由をつけて、俺はそのまま愁斗くんの家に転がり込むことに成功した。
普段ツンツンしているくせに、結局いつも俺を拒否しない愁斗くんの優しさに甘えた。俺から誘っておいて何だが、こんなにもすんなり受け入れてくれるのが彼の隙だと思う。
スニーカーを脱ぎ、真っ先に室内に入ると、散らかり気味の部屋に、空気いっぱいの愁斗くんの香水の香り。
(どこもかしこも、しゅーとくんだ……)
「散らかってるけど我慢しろよ」
「全然気にならないよ。てか散らかっててもオシャレだね」
机の上の台本を端に寄せている姿も、飾られた小物も、すべてが「愁斗くん」で溢れていて、俺は心地良いようなくすぐったいような気持ちになる。
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シャワーを浴びた愁斗くんが部屋に戻ってくると、俺は持参してきたコントローラーを手渡してゲームを起動した。
「勝負しよう」
愁斗くんは久々なはずなのに、あろうことか俺は負けてしまった。本当に、なんでこの人はこんなに何でもできるんだ。何か一つでも敵った試しがない。
いや、ダンスは負けないけど。
「お前、また弱くなった?」
「わざと負けてあげたんだし!」
そう言い返したものの、俺の言葉は笑い飛ばされる。
「はいはい、負け惜しみ乙」
余裕そうに煽ってくるその顔に、視線をじっと向けた。
愁斗くんは不思議だ。
すごく大人で自分には手の届かない存在みたいに見えるのに、俺より子どもみたいにふざける時もある。
俺がどんなにあがいても、彼には敵わない。そんな憧憬と悔しさが同時に胸に押し寄せる中、愁斗くんがぐっと顔を近づけてきた。
「どうしてもって言うなら、もう1回やってもいいけど?」
勝ち誇ったように笑いながら、俺の顔を覗き込んでくる。その無邪気で余裕たっぷりの表情に、胸がぎゅっと締め付けられる。
彼は全部が無意識なのだ。俺がどんな気持ちで彼と向き合っているのかなんて何も知らないで、急に近づいたり離れたりして俺を振り回す。
いや、本当は全部気づいてたりして。
__本当にズルい人。だけど、そんなところが大好きだ。
気づいた時には、俺は彼に口付けていた。
愁斗くんは硬直している。
そのままベッドに押し倒し、手を繋ぐようにして軽く押さえつける。彼の体がベッドに沈み込んでいく。
頬に手を滑らせると、茶色がかった瞳が揺れた。柔らかい肌の感触に胸が高鳴る。
(…..どうしたら、いつになったら、愁斗くんは俺を見てくれるんだろう)
今俺を見上げている彼の瞳は、いつもの困惑や拒否を示していない。むしろ期待するような色を宿している。
(……なんで、抵抗しないんだよ)
予想外の反応に、胸がざわつく。彼の表情は、まるで俺の次の行動を待つようで__その瞳に飲み込まれそうになる。
「……ふみや、」
名前を呼ばれた瞬間、俺の中の理性が大きく揺れた。
その声は不安でも警戒でもなく、俺を受け入れようとする柔らかさだけがあった。
顔が近い。呼吸が肌に触れる。そんな状況に、俺の心臓はさらに速く脈打ち始める。
(…どうせまた、ガキがじゃれ付いてきたとか思ってるんだ)
悔しい。
それでも、俺の視線を正面から受け止めてくれるその瞳の中には、俺だけを映している。
こんな状況でも、受け入れようとしてくるこの人が、憎らしくて愛おしい。
胸の奥が熱くなる。彼の全てが欲しくてたまらない。自分の中の欲望が、今にも理性を飲み込もうとしている。
大きく息を吐いて、俺は愁斗くんを解放した。そして、彼の胸に自分の額を押し付けるようにして、倒れ込む。
「……もう、なんで嫌がらないんだよ~…」
情けないほど弱々しい声が口をついて出た。
胸の奥がまだ熱い。高鳴る鼓動が止まらない。これ以上続けてしまったら、本当に歯止めが効かなくなる。
「ふみや……お前、自分でやっといて顔赤いぞ」
愁斗くんはいつものトーンで、からかうように笑った。その笑い声に俺は苛立ち、羞恥心で顔をお腹に埋めた。
「うるさい!」
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ようやく落ち着いて顔を上げると、愁斗くんは穏やかな笑みを浮かべて俺を見つめていた。
「しゅーとくんさ、そんなだと俺、本当に襲っても知らないからね!」
叱るようにして言うが、彼の表情は変わらない。
「…いいよ、ふみやなら」
「えっ!!!!」
耳を疑った。予想もしていなかった言葉に、頭が真っ白になる。
頬が熱くなり、心臓の音が嫌が大きく響く。
「うるさいお前!近所迷惑!」
「だ、だって……急にそんなこと言うから!」
そんなこと言われて、俺が声を抑えられるわけがない。
肝心なところをはっきり言葉にしないところも、彼らしい肯定の言葉で愛おしさが募る。
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目を閉じると、さっきの彼の表情が脳裏に浮かぶ。期待するような、俺を信じるようなあの目が、胸にずっと焼き付いて離れない。
いつの間にか疲れが限界を越えていたのかもしれない。気づいたらベッドに倒れ込んでいて、記憶が途切れていた。
これは、子どもって言われても仕方ないな。
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