『…………類』
放課後の空き教室。生徒が部活などに向かっている間、オレはずっと類を探していた。見つけたのは空き教室で寝ている姿。机や椅子を適当に避け、壁に寄りかかりながら寝ていたのを見つけた。
「……どうしたんだい?そんな全部終わったみたいな顔をして」
眠そうに目を擦りながら、起き上がる。いつか見た時は違って、類の背は高く、その背中は大きいとは言えないが、小さい、という訳でもなく何故か安心した。
『…もう、えむたちに言ったのか?』
「何をだい?」
『辞退すること』
「言ってないよ。今日、えむくんの家にお邪魔して、お兄さんたちも交えて言うつもりさ」
横に置いてあった鞄を持ち、空き教室から出て行こうとする類を止める。腕を掴む腕に力が入ってしまい、急いで緩める。
『その前に、』
『オレとデート、しないか?』
「…デート?」
『ああ、遊園地のチケットがあってな』
「………」
目を丸くする類に、2枚のチケットを見せた。ヒラヒラと揺れるカラフルなチケットは、今の俺達にはあまり似合わない見た目をしていた。
ずっと無言でいる。無理もない。オレたちは付き合っているわけじゃないし、なんなら今の関係は最悪と言っても過言では無いくらいだ。
『……これで、全部終わらせるから』
『いいか…?』
「……いいよ」
優しく微笑み、チケットを1枚とる。その顔は前に見せてくれた笑顔だった。泣きそうになるのを堪え、オレも無理やり笑顔を作った。鞄を持ち直し、類と隣に並んで歩き出す。会話は無理やり繋げて、無理やり盛り上げた。少しと言うかだいぶ無理やりだ。それでも、久しぶりにこんなに会話をした。その事実が嬉しかった。
校門のところで、寧々に会った。いつも一緒に登下校しているから、今日も類のことを待っていたらしい。
「すまない、寧々。司くんと少し行きたい場所があってね。」
「一緒に帰れないんだ」
「あっそう。別にいいし」
それだけ言うと、家へ帰ろうと歩き始めた。少し歩いた足を止め、振り帰る。
「………なんかあったの?」
「なんでそう思うんだい?」
「最近喧嘩したの?ってくらいギスギスしてたし。それなのに急に一緒に出掛けるとか。誰だって思うでしょ」
「ああ、それもそうだね。心配かけて悪かったね、大丈夫だから安心してくれ」
「………」
あまり納得していない表情で、寧々は頷いた。類の言葉通り、本当に大丈夫な状態になったらいいのに。現実とはなんと酷なんだろう。
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