『貴方想い、散りゆく恋』〜身分違いの恋だとしても〜
※6話の後の主様とそれぞれの担当執事で
番外編を作ってます。
番外編 〜ハウレス side〜
コンコンッ。
『主さ――。』
『来ないでっ!』
『っ!』
『お願いだから…今は1人にしてよ。』
『っ、ですが……っ。』
『1人になりたいの…。お願い。』
『…かしこまりました。』
俺は主様の部屋の前から去る。
『俺は無力だ……。』
自分の部屋に戻り、ベットに倒れ込む。
(大事な人が苦しんでいるのに俺は何も出来ないのか…?)
俺はゆっくり目を閉じた。
夢の中――。
『…お兄ちゃん。ハウレス…お兄ちゃん。』
『この声…トリシア…?』
『雪華さんの傍にいてあげて。』
『だが俺は突き放されて…。』
『時には、強引に寄り添うことも大事だと思う。今は一人になりたいって強がってるだけだと思う。お兄ちゃんが慰めてあげて。』
そして、目が覚めた。
『寄り添う…か。』
俺は主様の部屋へ再び向かう。
ガチャ
『主様。』
『なんで、来たの、今は一人に…!』
ギュッ…。
俺は主様を抱き締める。
『え…っ?』
『俺に身を委ねてください。俺に出来ることはこれくらいしかありませんが……
主様が泣いてるのは嫌です。大事な人が泣いてるのは嫌なんです。』
『ハウレス…。』
私はハウレスのことを抱き締め返す。
『あったかい…。』
『落ち着くまでこうしてあげますから…。』
俺の想いは伝えなくてもいい。
俺は想い続ける。貴方のことをずっと――
番外編 〜ハナマル side〜
『なんで、なんで……っ。ぐすぅ。』
『おいおい、主様。飲みすぎだぞ。』
別邸の1階でハナマルと2人でお酒を飲んでいた。
『フィンレイ様……私の事嫌いになったのかな…。だから、あんな…。』
『…俺なら悲しい思いさせないけどな。』
『え?』
『…俺なら泣かせない。』
『っ……酔ってる?』
『…ふっ。』
『あー、やっぱりぃ。騙されないよ〜。』
『ははっ。』
(こういう時執事の立場ってのは辛いな。
言いたくても言えねぇんだから。)
グイッ
俺は主様の飲んでたワインを取り上げる。
『え、か、返して…っ!』
『ダメだ。』
『なんで…っ?』
『酒で悲しみは流れないからだよ。』
『……。そんなの、分かってるよ…っ。なら、どうしたらいいの…っ?この悲しみは…消えない…っ。』
『……。』
俺は主様を抱き寄せる。
『っ…!』
ハナマルの固い胸板に顔が当たる。
『…俺の胸で泣いてもいいからな。主様なら大歓迎だ。』
『ハナマル…っ。うん……っ。』
主様は俺の胸で泣く。
その冷たい雫が俺の胸に突き刺さる。
まるでそれは――振られた時より冷たい、針のように――。
番外編 〜ミヤジ side〜
『いい香り…。』
『落ち着いたかい?』
『うん……。』
夜、コンサバトリーで私は主様と2人で居た。蝋燭を灯していた。
『…ごめんね。夜遅くまで起きててもらって。』
『主様が泣いてたんだ。執事として放っておく訳にはいかないよ。』
『ミヤジ…。ありがとう。』
『あぁ。』
『私、本気で好きだったの。フィンレイ様のこと。優しくて、かっこよくて…。貴族に貶されてもいつも助けてくれた。そんなフィンレイ様のことが私は……。』
主様の瞳に雫が浮かぶ。
『酷いことを言われたのに、私はまだ…好きなの…っ。おかしいかな、私…。』
『そんなことはないよ。』
フワッ
ミヤジは羽織をかけてくれた。
『私が傍にいるからね。いくらでも泣いていい。全部受け止めるからね。』
『うん…。』
ミヤジに寄り添いながら静かに泣いた。
『……。』
泣くほど忘れられないんだね。彼のことが。
私の付け入る隙はないみたいだね。
次回予告
『俺に守らせてくれ。主様。』
『私が忘れさせてあげますよ。』
『どうしたら俺を見てくれるんすか?』
続く…。
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