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24 - 第24話:恭平は、そんなキャラじゃないやろ?

2025年07月16日

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月曜日の放課後。

美術室の隅、静かな空間で、恭平はひとり絵を描いていた。

誰もいない放課後のこの場所が、最近の“お気に入り”になっていた。

頭の中の景色を、鉛筆一本でキャンバスに映していく感覚。

それが、言葉にできない感情を救ってくれる気がした。

恭平:「……絵って、意外と気持ちええな」

その時。

女子生徒:「えっ!?うそ、恭平!?」

突然、後ろから声がした。

振り返ると――

同じクラスの女子グループが、ドアの前でこっちを見ていた。

女子生徒:「あんた、美術部とか入ってたっけ?」

女子生徒:「うわ〜、似合わん!なんか……マジで意外なんやけど」

女子生徒:「恭平って、そういうタイプちゃうやん!」

恭平は、動けなかった。

女子生徒:「ほら、前に“美術とか地味やから嫌い”って言ってたやん!」

女子生徒:「いや〜、恭平がこういうの描いてるの、ギャップっていうより……ちょっと笑えるっていうか……」

笑い声が、じわりと染み込んでくる。

恭平:「……帰って」

女子生徒:「え?」

恭平:「帰ってって言うてんねん!!」

怒鳴るような声が響いた。

女子たちは驚いたように目を見開き、数秒沈黙したあと、バツの悪そうに教室を出ていった。

静まり返る美術室。

恭平は、描きかけの絵をグシャリと丸めた。

恭平:(……やっぱり、無理や。“好き”とか“夢”とか、口に出したら否定される。“キャラじゃない”って、笑われる。――あいつらにとっての俺は、“おもろくてバカっぽい恭平”だけや)

その夜。

シェアハウスに帰った恭平は、みんなの顔を見ずに部屋へ直行した。

リビングでは、和也と丈一郎が心配そうに会話していた。

和也:「今日、なんかあったんかな……」

丈一郎:「朝は普通やったけどな……あの顔、絶対なにかあるって」

深夜。

恭平はベッドの上で、スケッチブックを開いたまま動けずにいた。

手は震えていた。

恭平:(怖い。もう誰にも、見せたくない)

でもその時――ノックの音。

和也:「恭平、開けて。俺や、和也」

恭平:「……無理や。今日は話す気せえへん」

和也:「いいよ、話さんでええ。横にいるだけでええ?」

しばらくの沈黙のあと、恭平は扉を開けた。

和也は静かに入ってきて、何も言わず横に座る。

恭平:「……俺、笑われた」

ぽつりと恭平がこぼす。

恭平:「“お前はそんなキャラちゃう”って。“美術やってるの、笑える”って……。なんで、“自分らしく”なろうとしただけで、笑われなあかんのやろな」

和也は小さく呟いた。

和也:「……それ、俺も言われたことある」

恭平:「え?」

和也:「“優等生っぽいのに、流星と仲いいんや”とか、“そんなマジメなやつが人の恋愛相談とか乗るの?”とか。誰かが決めた“お前らしさ”って、ほんまに厄介やで。でもそれって、他人が勝手に作った“キャラ”やから。“本当の恭平”を守るのは、自分しかおらん」

恭平は、涙をこらえるようにうつむいた。

恭平:「……俺、絵を描くの、好きやねん。昔から、誰にも言ってへんかったけど、ずっと好きで……でも、それを言ったら壊れそうで、怖かった」

和也がそっと言った。

和也:「怖くても、それを認めてくれる人、ここにいるで」

恭平は、そっとスケッチブックを開いた。

そこには、色鮮やかな、夜空を見上げる少年が描かれていた。

恭平:「……これ、今日完成させたやつ。誰にも見せへんつもりやったけど……お前には見せたかった」

和也:「……綺麗やな。“恭平らしい”って思ったよ」

涙が、ぽろりと落ちた。

“キャラ”じゃない、“本当の自分”が、少しだけ救われた気がした。

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