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ゆんしょ
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絶対辰哉
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四月。
新学期が始まって二週間。
校庭では体育の授業が行われていた。
「岩本、ラスト一本!」
💛「はい!」
二年二組。
岩本照はクラスの中心にいるような生徒だった。
運動神経は抜群。
誰とでも話せる。
先生からの信頼も厚い。
だからこそ、少しくらいの怪我なら「大丈夫」で済ませてしまう癖があった。
その日も同じだった。
ダッシュの途中、足をひねる。
「っ……」
一瞬だけ顔をしかめた。
でも、そのまま立ち上がって走ろうとする。
「岩本」
体育教師が笛を鳴らした。
「一回止まれ」
💛「いけます」
「いけそうじゃなくて、一応保健室」
💛「そんな大したことないです」
「判断するのは先生じゃない」
「養護教諭」
「行ってこい」
照は小さくため息をつきながら頷いた。
💛「分かりました」
────────
昼前の保健室は静かだった。
カーテンが風でゆっくり揺れている。
コンコン。
💜「どうぞ」
落ち着いた声が返ってくる。
照がドアを開けると、一人の男性が机に向かって書類をまとめていた。
白衣姿。
まだ若そうだ。
先生は顔を上げる。
💜「どうした?」
💛「体育で足ひねりました」
💜「じゃあ、見せてもらおうかな」
照は椅子に座り、ゆっくり靴を脱ぐ。
先生は足首を見て、腫れ具合を確認する。
💜「ここ痛い?」
💛「少し」
💜「ここは?」
💛「そこは平気です」
質問は短く、手際もいい。
必要なことだけを確認していく。
💜「大きな捻挫ではなさそう」
💜「今日は湿布貼って、部活は様子見」
💛「分かりました」
そう答えながらも、照は部活へ行くつもりだった。
────────
湿布を貼り終え、先生はカルテを書き始める。
💜「名前」
💛「岩本照です」
💜「二年二組」
💛「はい」
先生はさらさらと書き込む。
💜「俺、今年から来たから」
💜「まだ名前と顔が一致してなくて」
💛「新しい先生なんですね」
💜「そう」
💜「深澤辰哉」
💛「よろしくお願いします」
💜「こちらこそ」
それだけだった。
特別な会話はない。
静かな時間が流れる。
────────
湿布を受け取り、照は立ち上がった。
💜「今日はあまり無理しないように」
💛「はい」
💜「もし痛みが強くなったら、午後でも来て」
💛「分かりました」
照は軽く会釈をして保健室を出る。
────────
放課後。
部活の準備をしていると、顧問に呼び止められた。
「岩本」
💛「はい」
「今日は見学」
💛「でも」
「保健室から連絡来てる」
「足首を痛めてるから無理させないでくださいって」
照は少し驚いた。
深澤が連絡を入れていたらしい。
顧問は続ける。
「今日はマネージャー手伝ってやれ」
💛「……分かりました」
────────
その頃、保健室。
深澤はカルテを閉じる。
『岩本 照』
その名前の横には、簡単な処置内容だけが書かれていた。
窓の外では、運動部の掛け声が聞こえる。
深澤は校庭を眺め、小さく呟いた。
💜「ちゃんと休んでくれてるといいけど」
まだ、それだけ。
岩本照は大勢いる生徒の一人。
深澤辰哉は赴任したばかりの養護教諭。
二人の関係は、まだ名前を知っただけだった。
コメント
2件
なんかふっかが保健室の先生ってちょっと想像できるかも…💭
わあ、第1話からすごく静かでいい空気感ですね。足をひねっても「大丈夫」で済ませちゃう岩本くんと、ちゃんと連絡を入れておく深澤先生。まだほんの距離があるからこそ、その温度差が気になります。保健室のゆれるカーテンとか、書き込まれたカルテの文字とか、細かい描写がすごく印象に残りました。これからどう近づいていくのか、楽しみです🌷