人工星の中心に浮かぶ巨大なクリスタル状のコア――それはまさにこの星系の生命線、そして全ての運命を握る「心臓」だった。その光が脈打つたびに、周囲の空間が揺れ、時間の流れさえも歪んでいるように感じる。
ウィリアム「これがこの星系を支える“心臓”か。俺たちが選ぶべきは――」
雅也の目には決意が宿っていた。彼はこの決断をすることで、すべての結果を背負う覚悟を決めた。
橘「破壊すべきだ。どんなに美しくても、この危険な力を抑えきれるとは思えない。」
加藤が険しい表情でその背後に立ち、手にした武器をぎゅっと握りしめた。
加藤「俺も賛成だ。だが、どうやって壊す?」
その時、ウィリアムが前に出てきた。彼の顔には冷徹なまでの冷静さが浮かんでいた。
ウィリアム「このクリスタルは物質ではない。だが、分かる。心臓を壊すには中心に最も強力なエネルギーを打ち込む必要がある。」
橘「最も強力なエネルギーか……」
ウィリアム「爆発的なエネルギー、または、内部の空間を一瞬で解体できる力が必要だ。」
彼の目の前に現れたのは、ウィリアムが持つ特殊な爆弾だった。それは、ただの爆発物ではない。エネルギー波を利用して物質そのものを分解する能力を持った兵器だった。
加藤「それを使うのか?」
ウィリアム「一度起動すれば、この星系を含む周囲の空間すら一瞬で変容するだろう。ただし、それは……あくまで全てを終わらせるための手段だ。」
全員が一致してその決断を下す。ウィリアムが爆弾をコアの中心に取り付け、橘と加藤はその周囲の警戒を続ける。周囲のエネルギー波動がますます強くなり、時間の流れが急速に速くなるのが感じられる。
橘「こいつが本当に破壊されると、何が起きる?」
加藤「知らねえ。けど、今はそれが最良の選択だ。後悔する暇もねえ。」
爆弾を設置したウィリアムが振り返り、静かに言葉を放つ。
ウィリアム「それでは、心臓を壊す。すべてを。」
彼はボタンを押すと、爆弾が光を放ちながら炸裂し、次の瞬間、空間そのものが引き裂かれた。コアの中心に爆発が広がり、膨大なエネルギーが放たれる。まるで宇宙の中の一つの星が消滅するかのような圧倒的な力が、周囲を飲み込み始めた。
その瞬間、全員の周囲で時空が歪み、光と闇が交錯し、引き裂かれるような音が響き渡る。加藤は一歩後ろに下がり、橘はウィリアムの指示に従い、必死でその場を離れようとした。
橘「これは……!」
コアが爆発し、全ての構造物が崩れ始める。人工星は徐々に崩壊し、地面も宇宙空間そのものも引き裂かれる。宇宙が一つの生命体のように、全てを呑み込もうとしている。
加藤「早く離れろ!こいつは手遅れだ!」
爆発が広がり、周囲の空間が完全に消し飛んだ。残るのは、空虚な宇宙だけ。
数分後、周囲が静寂に包まれる。人工星が消失し、破片が空間に漂っていた。加藤、橘、そしてウィリアムだけが、無事にその場から逃れることができた。
橘「……終わったのか。」
加藤「いや、終わったわけじゃねえ。けど、あの心臓は確かに壊した。」
ウィリアムは何も言わず、無言で彼らを見つめた。その瞳に浮かぶのは、達成感ではなく、冷徹な空虚感だった。
ウィリアム「我々の選択が正しかったかどうか、それは時間が教えてくれる。」
その言葉の通り、宇宙の中で新たな道が開かれ、何か大きな力が目覚めようとしていた。だが、心臓が壊されたことで、それは確実に新たな時代の幕開けを意味するものだった。