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魔王城に帰って、まだ明るいけれど魔王さまと寝室に戻った。
私の御機嫌ナナメを、どうにかなだめるには二人になるしかなかったから。
魔王さまと一緒に居て、こんなに機嫌が悪いままだったことは、初めてかもしれない。
「もおおおおおぉ! 魔王さまのバカバカバカバカバカバカ! ヘンタイ! どエス! どヘンタイ!」
部屋に入って、ベッドで二人腰かけた時点で、私はじっと耐えていた感情が全部、一気に噴火した。
魔王さまの硬い胸板をぺちぺちと叩き続け、ひとしきり文句を言った。
「おうおぅ。悪かった、悪かったから。そう怒るなよ」
ぺちぺち攻撃は全く効いていなさそうで、魔王さまは優しく私を抱きしめた。
「ほら、お前の手の方が痛いだろう。落ち着け。あの場ではな、あのくらい言ってやらんと、あいつは本気で王子のためにお前を狙おうとしていたからな」
「ふつうそんな人いないですよおおおお! 人妻ですよ? ありえなくないですか?」
「いいや。酒の席なのをいいことに、俺達の仲がどれほどのものかを探ってやがった」
ぎゅっとされたせいで、私の勢いは急速にしぼんでいった。
「最悪です。魔王さまももっと他に、言いようがなかったんですか……うぅぅ」
自分が単純過ぎて、ちょっと悲しくなってきた。
「悪かったって。泣いてくれるな……。でもな、あのくらい品の無い例えでも言わなければ、どのみちあいつが品の無い事を聞いてきただろうよ」
言われてみれば、そんな気もしなくもない。
あの時の国王は、そこらへんに居る酔っ払いのおっさんにしか、見えなかったから。
「最低……最っっっ低。はぁ。分かりました魔王さま。人間、滅ぼしましょう」
「おいおいおい、お前も酔ってるのか? 簡単にそういう事を言うんじゃない」
「酔ってません……。恥をかかせた国王が悪いんです。わ、わた、わたしの、あんなことやこんなことが、知られてしまっては……」
生かしておくことは、出来ないと思う。
恥は斬り捨てろとか、そんなことわざもあったと思うし。
「待て待て待て。何をどうしたなんて、ひとつも言ってないだろう。大丈夫だから落ち着け」
ひとつも?
そういえば……具体的な内容は、誰も何も言わなかったかもしれない。
「うぅ……。そうかもしれません……」
私の頭の中には、毎夜繰り広げられる物凄くアレなことが、そのまま公表されてしまったような錯覚だったから。
(あ……あんなに激しいことを、それも、まるでおもちゃのように扱われて、それでも大好きと言ってしがみついているような、あんな姿を……)
「おぉい。サラ。何を考えてるのかは分かるが、考え過ぎだ。また顔まっ赤だぞ」
「も、もう、お嫁にいけない……」
「いや、もう俺の嫁だろうがよ」