__お友達_🥀𓈒 𓏸
「なんだ…??何が起こってる…?」
さっきまで普通の昼間だったはず…!日光も差していた
それが今,目の前に広がるのは夜の星空
この有り得ない状況が、彼が危機的状況にいるという事を示している
(有り得ない…!!今,時間は…!!)
ダレイが携帯を取り出し、現在時刻を確認する
おかしな事に、時間はまだ昼の1時を示す
(こんなの…初めてだ)
*携帯から顔を上げる___*すると!ダレイの横を刃物がギリギリのところを通り過ぎる
刃物すら音を立てず背後にあった木に突き刺さった
(…は……)
俺は今…死にかけたのか?
木に突き刺さったナイフを唖然と見つめていると,先程の子供がゆっくり近付いているのに気が付いた
「惜しい…ね、僕は的当ては得意じゃないんだ」
そう言いながら、小さな上着の中から,大きめのナイフを取り出す
男の子手の何倍もでかいナイフはもはや包丁だ
(まさか今…この子供が投げたのか…?)
それにこの子供と出会ってから色々とおかしい…
只者では無い…もはや人間なのかも…
冷静にならなくては…この期に及んで取り乱してはならない…今ここに仲間はいないのだから
「……どうするつもりだ…」
子供は首を傾げ,ポケットから小さなぬいぐるみを取りだした
地面に無造作に投げつけると瞬時にナイフを突き立てる
「!!!」
ぬいぐるみは地面いっぱいに綿を撒き散らかし、真っ二つに分かれた
「……なっ…」
「凄いでしょ、僕の腕…これでも仲間の中でいちばん弱いんだ…」
喋る度に咳を零しながら子供はダレイに歩みよる
切ったぬいぐるみを踏み潰して…
異様な殺気にダレイは子供構わず拳銃を向ける
その動きとは裏腹に子供は初めて微笑んだ気がした
それも嬉しそうに…
「……ッ…ク…一体どうしたら…!」
戦って勝てる相手だろうか…?そんなの分からないが…あのスピード、子供ながら只者では無い。
返り討ちにあうリスクが高い
「バイクに走れ」
「…お前!?」
いつの間に後ろに立っていたのだろう
緊張があったからか,体制バランスが崩れそうになる
「早く、このまま死にたいのか?」
「…?お前…俺を助けるつもりか?」
「お友達も一緒に…連れて行ってあげるよ!」
それが合図だった子供がナイフを投げ付ける
真っ直ぐ飛んできたナイフは…3つだ
どうやら本気で仕留めにかかっているらしい
ナイフが向かってる最中、謎の人物はダレイを押し退け前に飛び出してきた
突如前に出てきた男は”何かで”攻撃を防いだのは分かるが、何で防いだのかは後ろからでは見えなかった
ただこいつも…謎の力を持ってる事が一瞬のうちでわかった
くるりと振り返るとダレイの腕を掴みバイク目掛けて走る
「……!うっわッ!?」
バイクに着くと座席からヘルメットを取り出し
ダレイに被せる
その間も子供はナイフをいくつも投げてくる
……が、ナイフは何故か途中で方向を変え跳ね返るようにどこかへ飛んで行く
「…これは…?」
「時間が限られてる,その間に逃げなくてはならない」
外していたヘルメットのロックを再びつけ直し、バイクに跨るとエンジンをかける
「乗るんだ」
「お前何者なんだ?なぜ俺を助ける?」
「何だ、この期に及んで信用出来ないのか?」
ダレイは頷く
頭を悩ます素振りを見せた後、返答は直ぐに来た
「アンタを助ける必要があるからだ」
「俺助ける…?」
「大丈夫だ。俺を信用しろ」
男はバイクに乗りながら手を伸ばす
真っ暗な夜は月の光で美しく場を照らしている
(今はまだ死ぬ訳には行かない…)
ひとつと賭けに、しっかり掴むことに決めた
ダレイはしっかりヘルメットをつけバイクに跨ると瞬時にバイクは走り出す
速度はみるみると上がっていった
子供目掛け…
ただ当たることは無い
横を通り過ぎ,真っ暗な夜の道を猛スピードで突っ切る
次第にどんどん離れていくと…空がみるみる明るくなり、いつもの光景に戻っていったのである…
「…もういいだろう、下ろせ」
しばらくバイクが走っていると、無言だった空間でダレイが口を開いた
走るバイクの周りは見た事ない住宅街が並ぶ街
どれくらいの間走っていただろうか、もう流石に追ってこれないはずだ
「わかった」
男がバイクを止めると、ダレイはゆっくりバイクから下りる,少し歩いたかと思いきや、その場に立ち尽くす
「……どうした?」
不思議そうに首を傾げた男は疑問そうにダレイに尋ねる
ダレイの顔は何故か青白い
その変化に気付いたのか、男が慌ててバイクから降りた
「まさか…!!どこか怪我したのか!?」
ダレイの返事を聞く前に男はヘルメットを着けたまま身体中を観察するが、目に見える怪我はしていない
ダレイは、少し口を固くしながら…静かに訳を説明した
「アンタ…運転……向いてないんじゃないか…?」
男はダレイの不調の理由が分かった為、ホッとし多様な様子を見せた
そして言葉の意味を理解したのか、少し遅れて言い返す
「スピードが早かっただけだ逃げるためには仕方ないだろう」
「……それはそうだが…」
(ここまでとは…ッ)
普段乗り物で酔うことはほとんどないが…これ程までに気分が悪くなるのか…
すると、ダレイの携帯電話から着信が響いた
(ノアか…?)
「済まない。電話だ」
男とバイクから離れると、着信に出た
「もしもし、ダレイだ」
「お前今どこだ…!?迷子にでもなってるのか??」
あまりにも来るのが遅く、心配になったノアが電話してきたようだ
ダレイはノアに今起こっていた状況を全て説明した
ただ、あの変な現象については省いた。
子供に襲われ、見知らぬ男に助けられた…と
「マジかよ…大丈夫だったのか?」
「大丈夫だ。心配かけさせて悪い」
「気を付けろよ?頼まれたって事は、あらゆる手で殺してくる可能性があるからな…今はあまり…外へ出ない方がいい、そのまま家に帰ってろ」
まさにその通りだ
誰がまたいつ殺しにくるか分からない
あまり目立つ行為はしないようにしなければ…
「…分かった、そうする。」
「あぁ!、あとはこっちに任せろよな!」
電話はそこで終わった
しかしとんだ災難だ…、変に頭痛までしてきた
(あの男の元には戻りたくは無いが…このまま歩きで帰る訳には行かないしな…)
バイクの方には男が何やらタブレットのようなもので何かをしている
ダレイの気配に気づいたのか、タブレットを座席に片付ける
「……電話は終わったか?」
「………待たせたな」
「今日は疲れただろう?ひとまず休もう,なるべくならあんたの家じゃない所がいいが…」
「…どういう事だ?」
「しばらく家には戻らない方がいい」
「……そういう事か」
もう既に始まっている…
刑事なのに逃げるなんて変な話だ。
でも戦って勝てる相手なんかじゃないのは目で見てわかる
「所であんたは誰なんだ?そろそろ答える時なんじゃないか?」
ダレイがそう言うと、男はピクっと動きを止めた
「……?」
そのまま何か考えているのだろう
じっ…と動こうとしなかった
そのうち再び、ロックが外され、今度はしっかりヘルメットを取った
「…お前…!?」
そこには照れくさそうにヘルメットを持った
あのBARの店主…マイクがいた
「お久しぶりです…」
見覚えある顔にほっとしたダレイはその場に倒れ込んだ
その様子をびっくりした様子でマイクは見つめた
「大丈夫ですか!?」
「あんただったのか……喋り方も違い過ぎだろ…焦るだろうが…」
「あっ…それは…」
何かを言いかけたが,マイクはそのまま口をまた閉じてしまった
「何故アンタが…?と言うか、なぜ俺の居場所が?」
何故か身に覚えのある質問にダレイは口を詰まらせた
マイクはわざとそっぽむく
「まさかまた見たな……?あの水晶玉を…」
「し、かし…お客様が心配で私は…」
確かに命は助かったが…やってる事がこんなに大事じゃなければ盗聴器を仕掛ける奴と同じような犯罪だ
バイクにひっそりも垂れながら様子を伺うようにダレイを見つめるマイク
(それにしてもあの態度からこの代わり用…気味が悪いな)
「すみません…お客様が忽然とBARにお越しいただが無くなったので何かあったんじゃないか…と」
しょんぼりしながら話すマイクにダレイは驚いた
「何故そこまでお客にこだわる?」
マイクはすぐに答えた
「お客様は皆、1度訪れれば、二度と来ることが出来ませんから」
「……!」
「ジン・トニックを作る度に、お客様を思い出すんです。私にはお友達が居なかったので…」
理解をした。
マイクの仕事は亡くなった方のみ…、
お客として訪れれば、2度は来ることなんてできない
どこか寂しかった心の穴を埋めてたのが紛れもないダレイだったのだ
ダレイにとって友達はいらない…だが、こんな悲しい状態の彼を見ると、無闇に言うことが出来なかった
「……仕事が忙しかっただけだ、また訪れようと………してた」
明らかに間のある答えでもマイクは気にせずに顔を上げた
「では今回のこと…見逃してくれますか?」
「……あぁ…いいだろう」
なぜ許してしまったのか、同情でもしてしまったのだろうか…
まぁこの男がこんなに反省してるのならば多少は許しても問題は…
「では、全てチャラになったことですし、一件落着ですね」
マイクの顔はニッコリ、あの時の顔で微笑んだ
(…演技か…!してやられた!!)
大人しいなと思っていたら、ただ犯した罪を消すための罠だったのだ
怒りに震えるダレイを満面の笑みで話を続ける
「ではお客様_このまま私の家へ招待します。貴方様の家だと危ないので」
(アンタの家にいても不安だ)
「……分かった、但し運転は俺がする後ろにしがみついてろ」
「そんなに……下手でした…?」
(これは気にするんだな…)
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