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助手席を見ながら、動けないでいると
「ほら、早く乗れって!」
先生が私の後ろに回り込み、背中をグイグイ押す。
『えっ、だって、シートが』
私が少し抵抗しながら言うと、「あぁ?」ってガラの悪い声。
『私が濡れてるからシートも濡れちゃいますって、!!』
「そんなん、後で拭けばいいだろ。」
「気にするような高級車じゃねぇよ」
その言葉と同時に、グイッと助手席に放り込まれた。
乱暴だ、と言ってもいいだろうけど、先生は私が頭をぶつけないように、支えてくれた。
これが、ドキドキしちゃうんだよ。
「ちょっとまってて」
助手席に座っている私にそう告げて先生はドアを閉め、
「ばーちゃーん!!」
窓を閉めてでも聞こえてくる先生の大声。
『…… 』
ずっと座れなかった助手席。
ずっと憧れていた助手席。
そこに、今、私が座っている。
しかも、先生の車で。
『あ……』
シートが濡れちゃう。って思い出して頑張って腕で腰を浮かす。
しんどくなってきた頃、先生が戻ってきた。
ビニール傘
「ほい、これ。拭いとけ」
『……あ』
先生がフワフワのバスタオルを私に渡す。
「てか、お前なんでそんな体制なの。」
ブハッて笑った先生が、「別に濡れていいから」って私の肩に手を置き、グッと押した。
ペタと、お尻が沈む。
「ほら。拭きな」
『ありがとうございます、』
濡れた髪を犬みたいにブルブルと横に振る先生の髪から、水飛沫が飛んで来た。
「あ、飛んだ?悪ぃ」
『大丈夫、です』
「すげえ雨だな。」
タオルから顔を出した先生が、さっきより激しくフロントガラスに打ち付ける雨をみて呟く。
髪が乱れてる。
こんな先生を見たことが無くて、
心臓の音が、外まで漏れそう。
コメント
2件
やばっ!さいこう!しょっぴーかっこよ!