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20××年5月12日 妻が死んだという知らせを受けた。彼女は僕の幼馴染であり、10年前に結婚した。結婚式の記憶は鮮明に残っている。僕は彼女にプロポーズする際に、既に自分の身内と呼べる者は皆、他界していた。そんな僕に対し、彼女は「結婚すれば貴方はもう家族同然」という言葉と共に受け入れてくれたのだ。
彼女の両親は僕達の結婚に反対していたし、彼女自身も両親の死を受け入れていなかった節がある。だからこそ、僕の求婚を受け入れてくれたことがとても嬉しかった。
彼女が死んでしまったのならば、せめて遺体だけでも引き取りたいと思うのだが、彼女の親族はそれを許してくれないらしい。そもそも彼女と血の繋がりのある親族は誰もいないのだから当然の話なのだが。
彼女の葬儀にも出席できないなんて、と最初は思った。けれど今はそうでもないかなと思う。
僕は彼女――如月さんのことを、ちゃんと見送れただろうか? 彼女は最後まで綺麗だった。そのことだけははっきり覚えている。
でも、そんな彼女のことを本当に覚えていてくれる人はどれくらいいるんだろう? 私がこんなことを考えてしまうのは、今日が葬式だからかもしれない。いや、多分そうだ。だって、これからまた一年経てば、彼女の命日が来るんだもの。その時になってしまえば忘れてしまう人もいるだろうし、そもそも記憶に留めていない人だっているはずだ。
だけど、それでもいいと思う。むしろそれが普通なんだ。
生きている人間は皆、僕達のことを愛していたんだろうね。
それは本当に良かったと思うよ。だってさぁ……。
その想いを踏み躙って殺した挙句、喰い散らかしておきながら「愛されていた」なんて宣う連中は、さすがに見過ごせないじゃないか? はっはっは。冗談じゃない。僕達の邪魔をするなら誰であろうと容赦しないし、何人たりとも許さない。例えそれがどんな存在であってもだ。まあもっとも――「あなた達は例外だけどね?」
「はぁ……、はぁ……! くそ、なんだあの化物は!?」
「こっちに来るわよ!」
「逃げるしかないだろう、こんなところにいてたまるか!」
「ええい、どけ! 俺が先に行くんだ!」
「待て、落ち着け、冷静になれ! あれはもうどうしようもない! 逃げなければ死ぬだけだぞ!」
――ああそうだ。僕達に立ち向かった君達に同情の余地はない。何故なら彼らは僕の大事な仲間に手を出したからだ。それだけで万死に値するというのに、その上でさらに罪を重ねようとしている。そんな奴らはたとえ神でも許すつもりは無い。だから僕は君たちを許すことはない。なぜならばそれはつまり……
「あなた達が何をしようとも、この結末を変える事は出来ないという事だよ」