テラーノベル
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翌朝にて。
「…………」
俺は冷蔵庫を開けた。
昨日買った食材を確認する。
卵。牛乳。ヨーグルト。プリン。
そして――
「…………」
牛肉。
「…………」
俺はじっと牛肉を見つめた。
「…………」
「らだ男」
「ん?」
後ろからみどりの声。
「何してるの?」
「いや……」
俺は牛肉を指差す。
「昨日、これ動かなかった?」
「うん」
「やっぱり?」
「うん」
「……なんで?」
「知らない」
「だよなぁ……」
俺は牛肉のパックを持ち上げる。
何も起こらない。
「…………」
裏返す。
「…………」
もちろん何も起こらない。
「気のせいだったのかな」
「たぶん」
「だよな」
「うん」
試しに冷蔵庫に戻してみる。
「…………」
「…………」
みどりと顔を見合わせる。
「……揺れた?」
「揺れた」
「マジかよ……。」
数分後。
俺は牛肉のパックをテーブルに置いていた。
「…………」
「…………」
俺とみどりで見つめる。
何も起こらない。
「…………」
「…………」
「……何やってんだ、俺たち」
「牛肉見てる」
「知ってる」
「面白い?」
「全然」
そのとき。
ピンポーン。
「ん?」
インターホンが鳴った。
「誰だ?」
玄関へ向かう。
「はーい」
ドアを開ける。
「よ」
「恭也」
「お邪魔しまーす」
「どうしたんですか?」
「いや、暇だったから」
「暇だから人ん家来るんですか?」
「ダメ?」
「ダメではないですけど……」
恭也が部屋に入る。
そしてテーブルの上を見た。
「…………牛肉?」
「はい」
「なんで?」
「昨日買ったやつです」
「そうじゃなくて」
恭也が首を傾げる。
「なんで2人で牛肉見てんの?」
「……なんとなく?」
「じゃあ俺も見るわ」
「なんで!?」
恭也が椅子に座った。
三人で牛肉を見る。
「…………」
「…………」
「…………」
「何も起きねぇな」
「ですよね」
みどりが口を開く。
「昨日は動いた」
「マジ?」
「うん」
恭也が牛肉を見つめる。
「…………」
「…………」
「…………」
ぴくっ。
恭也が立ち上がった。
「うおっ!?」
「動いた!!」
俺も立ち上がる。
みどりは冷静だった。
「肉だから」
「肉だから!?」
「うん」
「どういう意味!?」
恭也が牛肉を持ち上げる。
「……あ」
「どうしました?」
「裏に空気入ってるだけじゃね?」
「…………」
俺は黙った。
「…………そうかも」
「だろ?」
みどりが言う。
「じゃあ食べよう」
「……まぁ、いいけどさ。」
昼にて。
俺たちは牛肉を焼いていた。
「ジュ――――」
フライパンからいい匂いがする。
「…………」
みどりがじっと見ている。
「まだだぞ」
「うん」
「絶対に手を出すなよ」
「うん」
「分かった?」
「うん」
「…………」
俺が振り返る。
みどりの手には肉があった。
「おい」
「…………」
「それ焼いてる途中のやつだろ」
「おいしそうだった」
「だからって生で食うな!!」
恭也が笑う。
「腹減ってんなぁ」
「笑ってないで止めてくださいよ」
「まあ、みどりだし」
「みどりだからって何でも許されるわけじゃないですよ」
「それもそうだな」
恭也がみどりから肉を取り上げる。
「ほら、もうちょい待て」
「…………」
「そんな顔すんな」
「…………」
「肉やるから」
「うん」
「切り替え早っ」
食卓にて。
「「「いただきます」」」
三人で肉を食べる。
「うまい」
みどりが笑う。
「うん」
「どうだ?」
「おいしい」
「だろ?」
恭也も満足そうに頷く。
俺は二人を見た。
「……なんか」
「ん?」
「普通に三人で飯食ってますね」
「そうだな」
「変な感じ」
「まあ、ドラゴンいるしな」
「そうなんですよ」
みどりが肉を頬張る。
「おいしい」
「……まあ」
俺も肉を食べる。
「悪くないか。」
「……また揺れるかな」
「もういいよ、牛肉パックの話は」
「うん」
俺たちは笑った。
――ただ。
誰も気づいていなかった。
テーブルの端。
空になった牛肉のパックが――
ほんの少しだけ、ひとりでに動いたことに。
「…………」
「…………」
「…………」
「……らだ男」
「ん?」
「プリン食べたい」
「いや肉食えよ」
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天涯孤独
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コメント
1件
最後の一文で全部持っていかれましたね…。牛肉パック、動くだけじゃなくて意思持ってるのかな? 日常の隙間に潜む不気味さが好きです。みどりちゃんの生肉事件も面白かったです笑