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登場人物
一ノ瀬香花(いちのせ こうか):鳴かず飛ばずの現状から脱却しようとするアイドル。
マネージャー:香花の新企画を見守り、支えるスタッフ。
ナレーション(N):物語の背景や香花の心情を語る。
【夜の公園・回想】
(静かな夜の空気、遠くを走る車の音。ペンが紙を走る音)
N:アンケートアイドル。その名のとおり、活動内容をすべて“アンケート”で決める新企画だ。ファンとの距離が近づいた今の時代らしい、ちょっと風変わりなアイドル像。
香花(N):その話が降ってきた瞬間、胸の奥がふっと熱くなるのを感じた。特別な才能があるわけでもない。オーディションには受かったけれど、鳴かず飛ばずで時間だけが過ぎていく。
香花:「『アイドル戦国時代』と呼ばれる今、このままでは終わる気がしていた。だからこそ――この企画は、もしかしたら自分を変えてくれるかもしれない。そんな予感があった」
N:条件はふたつ。ひとつめは、アンケートで選ばれた内容は必ず実行すること。ふたつめは、アンケートの中身は事務所は一切口出ししないこと。つまり「すべて、自分で考える」ということだった。
マネージャー:「アンケートは一週間後に実施します。それまでに内容を考えてね」
N:マネージャーにそう告げられた夜、香花は公園のベンチで明け方まで紙と向き合った。自分のことを応援してくれる人たちが、どんな選択をしてくれるだろう――それを思い浮かべながら、ひとつひとつ言葉を並べていった。
【事務所・翌日】
(紙を差し出す音)
N:翌日、案をマネージャーに渡すと、彼は目を丸くした。
マネージャー:「香花さん、これ……本気でやるんですか?」
香花:「はい。これが、私の全部です」
N:そのアンケートはファンのもとへ渡り、多くの人が思いを込めて投票してくれた。数日後。マネージャーが勢いよく控室に飛び込んでくる。
マネージャー:「結果が出ましたよ、香花さん!」
【武道館・現在】
(凄まじい歓声と地鳴りのような拍手。まばゆい照明のSE)
香花(N):その声に振り向いた瞬間――私はマイクを手に取る“ふり”をした。
N:一ノ瀬香花(いちのせ こうか)は今、武道館のステージに立っている。まばゆいライト、揺れるペンライトの海、響く歓声。その真ん中で、歌っている自分がいる。
香花(N):アンケートの一番上に書いた選択肢。ファンが選んでくれた、たったひとつの願い。――「香花を、武道館へ連れていく」
N:目の前の景色は、いつか夢見たものだった。そこに立った瞬間、香花は思った。
香花:「……夢って、本当に叶うんだ」