テラーノベル
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桃源暗鬼
ますしき
現パロ・ドルパロ
⚠️前半かなりグロい
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朝、鳴り響く電子音に”起きろ”と促されては、寝ぼけ眼でスマホを探る。
とめどなく鳴り響いていた音を止めれば、そこにあるのは、朝特有の心地よい静寂。
心地よい、静寂の、はず────
────何百年も前に起きた、桃と鬼による、日本全土を巻き込むほどの大戦争。その中心となる地に、俺、”淀川真澄”はいた。
その戦いの中で俺は、最前線で戦う主力達の邪魔をせんとする桃達を逃がすまいと徹底的に排除していた。
「チッ、やってもやってもキリがねぇなァ」
己が鋭利物を振りかざす度に増える血の海を眺めながら不満をこぼす。
周囲の状況を再確認し、桃が辺りにいないことがわかると、また別の担当エリアへと向かう。
エリア周辺まで来たと同時に、能力で自分の存在を感知させぬよう動き、1人、また1人と桃の首元に刃を通す。
いくらクソ桃共が憎いといえど、命を奪うことに抵抗が無いわけじゃない。
ただ、俺が桃共を見逃して、そいつらが前線へ入り込んだ時、 万が一、そこに”アイツ”が居たら、別の桃との戦闘中、 不意打ちで殺されるかもしれない。それだけは、絶対に避けたかったがために、俺はこの”汚れ仕事”に手をつけた。
そんな事を考えていたら、不意に”アイツ”が俺の脳に想起した。
キレ長の目。その輪郭の中に佇む、紅く染まった炎のような瞳と、目元に小さく落とされた2連ボクロがある、アホ丸出しのあほ面で、俺に向かってにへゃりと笑いかけてきたり、ケーキを勝手に食べられたと泣きべそかいてたり、俺の発言に対してムキになって怒ってきたり、そんな、ウザったらしくて、でも、愛らしくてしょうがないアイツが。
不意に頬が緩む感覚を覚えた。その瞬間、仕事中であると同時に、命の駆け引きをしている場で何を考えているのか。集中しろ。と自分を捲し立てる。
己の血を体内に取り込み、相手の間合いに入る。気づかれぬよう近づき、右手に握った鋭利物で喉を掻っ切っては、別の桃の方へと移り、頸動脈を切る。
一仕事を終え、別のエリアに移ろうとした時、視界の隅に医療班が見えた。
桃のいる可能性のある場所でなぜ治療所を構えているのか。地下で治療するのではないのか。そう考えていたのもつかの間、そこに運ばれてきた隊員を見て、俺は、芯から凍るような感覚に襲われた。
俺は、任務中であるにもかかわらず、そこを目掛けて息も絶え絶えになりながら走った。
治療所につき、運ばれてきた隊員の姿を確認する。
一瞬、俺の心臓は何者かに強く掴まれたかのように動かなくなった。
左半分の上半身は中の内蔵が見えるくらい深く抉られており、そこからはとめどなく血液が流れ続けいる。左足は辛うじて股関節部分と繋がっている状態。顔の右半分は原型を留めてはいない。当人の呼吸は、 左の肺が失われているからか、荒く、浅く、非常に速いテンポで行われている。
瀕死の状況に追い込まれていた、その隊員は、俺が人生で初めて愛した鬼────
“一ノ瀬四季”だった。
一ノ瀬の呼吸と重なるように、俺の呼吸もだんだんと浅くなっていく。酸素が正常に身体に行き届いていないからか、視界は霞み、手足には上手く力が入らない。額からはじわじわと嫌な汗が浮かぶ。
考えたくもない最悪から逃れるかのように、震える手を鼓舞するように動かす。一ノ瀬の頬にある切り傷を避けて、そっと、優しく触れた。
一ノ瀬の頬は、俺の体温より遥かに低く、金蔵にのように冷たかった。俺の体温に気づいたのか、一ノ瀬は重たい瞼を開き、か細く、今にも消えてなくなりそうな声量で、俺の名を呼ぶ。
「まッす”カヒューッ、みた”い”、カヒューッ、ちょー、」
いつものようなトゲトゲしい雰囲気ではなく、絶望のどん底に叩きつけられたような顔をした、酷く呼吸の荒い俺を安心させるがため、へにゃりとした笑顔を弱々しく咲かせた。
俺を安心させようと無理に喋り、一回、また一回と、一ノ瀬の命を繋ぎ止めるために存在した血液は、空を泳ぐように逃げていく。
「一ノ瀬、喋るな。頼むから喋らないくれ。」
一ノ瀬は、俺の焦りを含んだ声に若干驚いていたが、再度俺に笑いかけ、素直に聞き入れてくれた。
俺は一ノ瀬の首元へと手を移動させる。一ノ瀬が生きている確証を得たかったがために。
「一ノ瀬、死ぬな。俺より先に死ぬんじゃねぇ。」
貼り付けた笑顔とは裏腹に、全身からは吹き出るように冷や汗が溢れる。
徐々に薄れていく、一ノ瀬の脈に、焦りと恐怖を覚えて。
死ぬな。しぬな。しぬな。しぬな。
しぬんじゃねぇ。しなないでくれ。
お前がいないと、俺はまともに呼吸もできねぇんだ。
お前が笑って馬鹿やってるだけで、俺は生きていられたんだ。
お前がいるだけで明日に希望ってもんが見いだせるんだ。
なのに、お前が居なくなったら、
これから、何を希望に生きればいい。
色褪せた、モノクロで、つまらない世界で。
俺の隣で笑ってくれ。
泣いてくれ。
怒ってくれ。
じゃねぇと、お前にこの思いなんか、
一生伝えられねぇじゃねぇか。
だから頼む、しぬな。
徐々に光が失われていく紅い瞳に、ひたすら
どろどろと黒く煮詰まった願いを込めた。
一ノ瀬が運ばれてきてから数分後、一ノ瀬の容態を聞きつけた花魁坂が息を切らしてやってきたと同時に、俺を強く押しのけ、一ノ瀬の脈を図る。一ノ瀬が、まだ生きていると信じて。
しかし、その時には、もう、
“一ノ瀬の命の炎は、ついえていた。”
あれから桃と鬼の戦争は、鬼側の勝利で幕を閉じた。俺たち鬼には、陽の下で、一般人と同じように暮らせる権利が与えられ、桃とも平和条約を結び、お互いが対等に肩を並べ、歩んでいけるようになった。
そんな明るい未来を誰よりも願って、
最前線で自分の寿命をすり減らしてでも戦ってきた”アイツ”は、
歩むことすら出来ねぇ。許されねぇ。
そんな、残酷で、悲痛な現実に、嫌気が刺したのか、
俺はひとりで
首を吊って死んでいた。
あれから長い年月が流れ、今の時代に転生した。もちろん、前世の記憶を所持したまま。そして現在、大学生2年生として、この世界でなんの意味も持つことなく生きている。
そんな俺の現在も、先程まで鳴り響いていた無機質な電子音も、地下の部屋で寝泊まりしていた頃、毎日のように聞こえていた、アイツのうるさくとも、暖かい声の聞こえない、この朝の静寂も、
大嫌いだ。
朝から思い出したくもなかったトラウマを思い出し、気分は最悪に等しかった。
気だるい体を動かして、大学へと向かう準備を進める。食事は思うように喉を通らなかったため、食べるのをやめた。さっきから鳴り止まない通知に目をやれるほどの気力もなかったため、スマホをポケットに突っ込んで家を後にした。
改札を通り、予定時刻に来た電車に乗り込む。
通勤ラッシュのせいで人が過密している電車内は、まるでおしくらまんじゅう状態。そんな息苦しい時間を耐え抜き、1歩、1歩と大学へ足を運ぶ。
ふと、街ゆく人混みの中に、無意識にあの紺色の髪を探している自分がいた。
いないことは、分かりきっているのに。
街の交差点付近、映し出される広告を上の空で眺めていた。頭のどこかで、今日も、この世界にいない”アイツ”を探してる自分を情けなく思って。
その時――
「……一ノ瀬?」
画面を凝視したまま、全身が硬直する。
そこに映っていたのは、前世で凄惨な最期を遂げた時とは違い、煌びやかな衣装をまとい、前世と同じ、底抜けに明るい笑顔をした、一ノ瀬だった。
無意識に探していたあの愛おしい姿は、今や国内で期待の超新星として、世間一帯に知れ渡っていた。
「あ!一ノ瀬四季くんだ!!ほんとに可愛いしかっこいいよね~!」
「わかる!歌も上手いし〜、なにより顔面国宝~……」
一ノ瀬の歌はお世辞でも上手いとは言えなかったけどな。それに、アイツは顔面国宝より、アホ面の方がお似合いだろ。
と楽しそうに話す女子高生たちの会話に、俺は嫌味ったらしく心の中で呟いた。一ノ瀬のことは、俺だけが知ってればいいのに。そんな、どす黒い感情と一緒に。
その後、ずっと一ノ瀬のことで頭がいっぱいだったからか、講義中、教授に当てられた際、「一ノ瀬」と間違えて答えてしまった。
その失態に大きく舌打ちしたことで、俺の印象は悪化し、俺の周りにいた人間はさらに減った。まあ、俺の隣には”一ノ瀬”しか要らねぇから、問題ねぇがな。
大学を終え、俺はある人物達を呼び止めた。
「おい、”京夜” “無陀野”」
「!真澄か」
「あ!まっすーじゃん!やっほ~!てか今日の朝送ったラインまだ未読なの酷くない!?」
こいつらふたりは、生憎前世の記憶は無いものの、今世、同じ大学で、しかも同期という、あまりにも出来すぎた関係だった。
この関係を、一ノ瀬とも築けなかったのか?と神に対しての文句をつくづく考えてしまう。
「うぜぇしきめぇから見ねぇ」
「さすがに傷つくんですけど!?」
「はぁ、時間の無駄だ。真澄。用件を言え。」
相変わらずせっかちなこって。そんな事を考えながらも、2人に質問を投げかける。
「お前ら、一ノ瀬四季って知ってるか?」
「名前と顔は。可愛らしい人だとは思った。」
「え!まっすーもだのっちも四季くん知ってんの!?!?俺その子めっちゃ好きで、ライブ結構行くよ!」
「チッ、好きになってんじゃねぇよ」
「俺の人権は??」
「てか、好きなら今度のライブ一緒にいこ!まっすーたちの分勝手に買って全部当たっちゃったから!笑」
その言葉に、体が少し反応した。
“一ノ瀬のライブに行く。”
これはきっと一生に一度しかない一ノ瀬に会えるチャンスなのかもしれねぇ。
そもそも、出会えたところで、一ノ瀬が俺のことを覚えているとは限らねぇし、
他の奴らと同じように愛想笑いさせるだけかもしれねぇ。
でも、
それでも、
アイツが笑っている姿を真近で見て、アイツが幸せであることに安心したいと思った。
まったく、俺も変わっちまったな。
いや、正確には、あいつに変えられちまったの方が正しいのかもな。
そんな事を考えながら、俺は迷うことなく口を動かす。
「いつだなんだよ?そのライブってのは」
「明後日!まっすー達行けそー??」
俺はポケットに入っているスマホを取りだし、今月のカレンダーを確認する。
幸い、その日のシフトは入れていなかった。
「問題ねぇ。」
そう短く返事をすると、
「俺も予定はない。」
と無陀野も答えた。
チッ、と心の中で大きく舌打ちをこぼす。
正直、無陀野には来て欲しくはない。
なぜなら、あいつも前世では、一ノ瀬のことを”そういう意味”で好きだったからだ。
教師と生徒という関係上、それ以上は踏み込めなかったためか、進展はなかったと見てるが。
それに、今回のライブがトリガーとなって前世の記憶思い出しましたー。となっちまうと、こいつとは今世もライバルとして対立しなきゃなんねぇ。クソめんどくせぇ。
だが、ここでこいつが来ることに不満を零せば、京夜が無陀野よりめんどくなることが目に見えているので言わないでおいた。
「じゃあ!明後日の予定はまた連絡するねー!」
「ああ、頼む」
「忘れんじゃねぇぞ」
そんなたわいもない会話を最後に、2人の元を後にした。
明後日、一ノ瀬に会える。
やっと
やっと会える。
俺の
俺の
“一等星”に。
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変なところで終わってしまい申し訳ないです。
この作品続きは気ままに書いていこうかなと思っています。
純粋に文才が欲しい…。
皆さんの感想、心よりお待ちしてます。
コメント
1件
うわ…読み終わった…すごく重くて、でも綺麗な話だった…。 最初の戦場の描写から、もう心臓がきゅってなった。真澄が四季のために“汚れ仕事”を引き受けてて、でも「クソ桃共が憎いといえど、命を奪うことに抵抗が無いわけじゃない」ってとこで、彼の優しさがにじみ出てて切なかった。 四季が運ばれてくるシーン…あれはほんとに辛かった。「死ぬな」「俺より先に死ぬんじゃねぇ」って必死で祈る真澄の声が胸に刺さった。 で、転生後の話。真澄が「大嫌いだ」って言いながらも四季を探し続けてるの、わかるよ…好きすぎて全部嫌になる時ってあるよね。最後の「一等星」って言葉に全部詰まってた。 続き、すごく気になる。真澄がライブでどんな顔するんだろう。読ませてくれてありがとう🖤