テラーノベル
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久々に9人揃っての仕事終わり、彼らは予約してあった居酒屋にいた。
「みんなで飲むの久しぶりだねえ」
にこにこしながら、部屋の奥の席に阿部が進む。岩本は当然のように彼の後ろに着いていったが、その腕を深澤が掴んだ。
「今日は席指定しまーす」
そして言う。
「阿部ちゃんは…そこでいいや。で、康二、目黒、翔太…」
深澤がテキパキと席を割り当てる。
結果、
「………」
岩本は阿部の対角線上、1番離れた席に座らされた。あからさまに不満顔の彼に、みんな気づいていたが気付かないふりをした。
「…ねえ、何で俺ここ?」
最初の一杯のビールが目の前に回って来た時になって、我慢できなくなった岩本が口を開いた。
「そっちがいいんだけど」
「照は今日はここなの」
深澤がぴしゃりと言う。
「何でよ」
納得いかないと言うふうに、岩本はごねる。深澤は、宮舘、渡辺と顔を見合わせた。
「何でって、…ねえ?」
宮舘が苦笑しながら言葉を濁す。
「照と阿部ちゃんがイチャつくからだろ」
幼馴染がオブラートに包んだのとは対照的に、渡辺がズバリと言った。
「特に阿部ちゃんの方がな」
呆れたように深澤が話を繋ぐ。
2人の関係がメンバーの知るところとなってから、遠慮がなくなったのは阿部の方だった。無自覚に親密さ、距離の近さを出してくる。そしてメンバーの前でも自然に出される愛情表現に、岩本がデレるのだ。
放っておくとすぐにくっついて、2人の世界に入ろうとするので、今回深澤は年長組で相談して、席を離す算段をしたのだった。
「みんなグラス回った?」
岩本がまだ何か言いかけた時、佐久間が声を上げた。
「はーい、じゃ、今日はお疲れ様ー!久々の9人なんで、存分に飲んで食べて楽しもう〜!カンパーイ!」
威勢のいい乾杯の音頭で、飲み会は始まった。
岩本はグラスに口をつけ、ちらりと阿部の方に目をやる。すると向井の影からひょっこり顔を見せた阿部が微笑んだ。小さく手を振って見せる。ひかる〜、と唇が動くのをみて、岩本は相好を崩した。
「はい、次何飲む?」
「サラダ食べる?」
深澤と宮舘が淡々と言って、メニューを開く。
「見えない」
岩本は呟いた。深澤はそれなら、とメニューを近づけようとする。が、
「そんな見なくても無くならねーよ」
渡辺の一言で、岩本がメニューを見てないことに気づいた。
「いいから、選べ!」
呆れた顔で深澤は、メニューを岩本に押し付けた。
開始から2時間が経つ頃には、阿部はすっかり酔いが回り、いい気分になっていた。
「このだし巻き玉子、うまぁ〜♪」
温かい玉子焼きを頬張り、にこにこ上機嫌でいる阿部を見て、向井とラウールはアイコンタクトする。
「なあなあ、あべちゃん」
そして切り出した。
「照にぃのどこが好きなん?」
「あー、それ聞きたーい」
向井の言葉にラウールが続く。目黒と佐久間も興味を引かれて阿部を見た。
「え?…全部」
阿部は小首を傾げて笑顔で言った。
「全部、すきぃ」
「全部って、便利な言葉じゃん」
ラウールが即座にツッコむ。
「だって全部好きだもん」
阿部は指を折りながら数え始めた。
「顔も好きだし、声も好きだし、おっきい背中も筋肉質な胸も、長い指も好き」
「まだあるん?」
「あるよぉ」
にこにこ笑って続ける。
「優しいし、頼りになるし、ちょっとヤキモチ妬きで可愛いし、俺のこといっぱい甘やかしてくれるから、俺も甘えちゃう」
「……」
年下組三人は揃って岩本を見る。
当の本人は、遠く離れた席で静かに天井を見つめていた。
耳だけ真っ赤だ。
「そっかー、甘えちゃうかー」
佐久間が笑いながら相槌を打つ。周りは延々と続く惚気をニヤニヤしながら聞いていた。
「そういえば、たまには名前で呼んでもらうの?」
いつぞやの話を思い出し、佐久間が聞いた。阿部はちょっと目を伏せる。
「……たまにね」
「うん?」
「…そういう時だけ、急に名前で呼ぶの」
「……そういう時?」
岩本はビールを口に運びかけ、そのまま止まった。
「セックスの時にさ」
「っ!!?」
盛大にむせた。
ラウールは聞き間違いかとポカンとし、向井は聞かなかったフリをしてグラスを傾け、目黒はつまんでいた唐揚げを取り落とした。
「おぅ…聞いたのは俺だけど、あべちゃんそこまで暴露してダイジョブ?」
佐久間も突然の発言に、思わず赤面した。
「いや〜…ラブラブやねんな〜」
向井が照れ笑いのような顔で言う。
「そうなの。終わった後も、後ろからぎゅってしてもらって寝る」
にこにこしながら、阿部がさらなる暴露をする。
「これ、聞いてて大丈夫な話か?」
深澤がカクテキをつまみながら言う。
とはいえ、止める気はないのだが。
「俺、手が冷たくなりがちだから、握ってあっためて貰って」
「…へぇ〜」
ラウールがニヤニヤしながら岩本の方を見る。
「照にぃ、甘々やなあ」
向井も同じく岩本を見て、聞こえよがしに言った。目黒は無言のまま、呪いを込めた視線を送る。
「うんうん、仲良しだねー」
佐久間は良かった良かった、と笑った。
少し離れたテーブルの隅で、岩本は両手で顔を覆ったまま固まっていた。
「…阿部。もうヤメテ…」
消え入りそうな声で呟く。
「照、阿部ちゃん甘やかしてんなあ」
渡辺がニヤつきながら揶揄う。
「仲が良くて何より」
ホッケの身をほぐしながら、宮舘は淡々と言った。
「なんか、ごめんな」
深澤が気まずそうに言う。周りにストッパーがいないせいで、阿部が酔って饒舌になっている。
「岩本くんって、2人の時甘えるの?」
質問タイムはまだ終わらない。完全に面白くなってしまったラウールが、キャンディチーズを口に放り込みながら尋ねる。
「ひかるはねえ、結構くっつきたがるよ。ちゅーしたいとか言ってくるし」
「…こないだのアレも、やっぱ照にぃからやったんやな」
向井が小さく呟く。
「ヤキモチ妬いた時は、ちょっと強引でイジワルなんだよね」
はにかんだ笑みを浮かべて阿部は言う。その言葉に色々想像してしまい、全員一瞬黙った。
「阿部ちゃんが…俺の知らない阿部ちゃんに…」
目黒がまたダメージを貰い、恨みがましい目で岩本を見る。
「大好きとかも、いっぱい言ってくれる」
「へえ。言うんだ」
今まで興味なさげだった宮舘が、少し驚いたように顔を上げた。
「甘いセリフなんて苦手かと思ってた」
岩本は顔から熱が上がっていくのを感じた。年下組の揶揄はまだ耐えられるが、宮舘に真面目なトーンで指摘されたのが、異常に恥ずかしい。
「阿部ちゃん、その辺でやめたげて」
「照、倒れるぞ」
深澤と渡辺が笑いを堪えながら言う。阿部はきょとんとして首を傾げたが、分かった、と素直だった。
「あべちゃん、水飲みなー」
佐久間がピッチャーから水を注いで渡してやる。阿部が水を飲むと、場が少し落ち着いた。
「席離した方が、火力強かったな」
深澤が呟く。
「だな。まあ、俺は面白かったけど」
佐久間はあっけらかんとして笑った。
「…阿部ちゃん、眠い?」
目黒がぼんやりする阿部に優しく尋ねる。
「ん…ちょっと…」
「阿部、おいで」
岩本が呼んだ。阿部はすっと立ち上がり、言われるままに岩本の隣に来ると、その肩にもたれて座る。
「見せつけるねぇ」
渡辺が枝豆を剥きながら笑った。
「うるさい」
岩本はぶっきらぼうに返し、阿部の身体を抱き寄せる。岩本にもたれたまま、阿部はうとうとし始めた。
「じゃあ」
阿部が眠りかけているのを見て、宮舘が口を開く。
「照は、阿部のどこが好きなの?」
てっきり解散の合図かと思ったのに、まさかの質問タイム続行。
「聞きたい聞きたい」
「教えてや、照にぃ」
「阿部ちゃんが言ったことが、本当かも知りたい」
目を輝かせて、ラウール、向井、そして目黒が食いついた。たじろぐ岩本を見て、渡辺が笑い声を上げる。
「俺が挙げる”あべちゃんの好きなとこ”より、たくさん言ってもらわないとな!な?照?」
佐久間もノリノリで話に入ってきた。
岩本は助けを求めるように、深澤を見た。
「ごめん、俺もちょっと興味ある」
笑いを堪えたような顔で、深澤も言った。
「ん…ひかるぅ…」
阿部が半分夢の中で呟く。
「阿部ちゃんも聞きたいってよ」
「さあ、言ってみよう」
渡辺と宮舘に押されて、岩本は口をぱくぱくさせる。
「えっ、と、ぜ…全部、すき、だけど…」
そして小さく言った。
が、そんな曖昧さで皆が納得するはずもない。
「具体的に」
「もっとあるやろ」
「それだけ?阿部ちゃん可哀想」
「なんだよ、俺の方があべちゃん好きなんじゃねーの」
「照れんな」
「観念しろ」
口々にみんなが言う。最後に宮舘が柔らかく微笑んだ。
「さあ、さらけ出して行こうか」
穏やかだけど、有無を言わさない圧を感じる。
「……笑うとこ」
絞り出すような一言だった。
阿部がうっすら目を開ける。
岩本は視線を合わせないまま、跳ねた前髪をそっと撫でた。
「笑った顔が、一番好き」
部屋が静まる。
さっきまで好き勝手騒いでいたメンバーも、誰ひとり茶化さない。
「頭良くて、優しくて、気遣いできて…誰にでも優しいけど、俺には少しだけ甘えてくれるとことか…全部好きだけど」
一度だけ息をつく。
照れくさい。
恥ずかしい。
でも、それ以上に伝えたかった。
「俺の隣で笑っててくれたら、それでいい」
阿部はゆっくり目を細める。
眠そうなまま、岩本の胸へ頬を寄せた。
「……うん」
小さく笑う。
その笑顔を見た岩本も、つられて少しだけ笑った。
その瞬間。
「「「「おおーーーー!!」」」」
遅れて、歓声と拍手が一気に弾ける。
「岩本くん、言えんじゃん」
「甘いわぁ」
「ごちそうさま」
岩本は、うるせぇ、と返しながらも、顔は真っ赤だった。強がる声の奥に、照れと、どこかほっとしたような熱が混じっている。
その腕の中で、阿部が薄く目を開けた。
「……俺も、ひかるが一番好きぃ」
掠れた声は、ほとんど寝言みたいだった。けれど岩本にはちゃんと届いたらしく、抱き寄せる腕に、ほんの少しだけ力がこもる。阿部はそれに気づいたのか、満足そうにもう一度、岩本の胸へ頬をすり寄せた。
「はい終了ー!」
深澤が勢いよく手を叩く。
「これ以上見せつけられると、こっちの心がもたない!」
爆笑するメンバーの中、岩本は開き直って阿部の肩を抱き寄せた。
「……悪い?」
その一言に、全員が顔を見合わせる。
「席離す意味なかったな」
「結局、くっついてるしな」
深澤と渡辺が苦笑する。
岩本は少しだけ目を細めた。
腕の中では、阿部が安心したように小さく息をつく。
周りではまだメンバーが笑っている。
その笑い声に包まれながら、二人も自然と笑っていた。
#いわあべ
M_Yuzu
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コメント
11件
飲み会の場待ってました。 メンバーと、💛💚の絡み最高です。 いつも楽しみにしています。
も~ホントにたまらん…😆 にゅうひん⭐様の作品に出会って、💛💚にはまっちゃいました💞 次も楽しみにしています!
9人全員登場させてのお話って結構大変だろうに会話のテンポが心地よくって、💛💚も可愛くって……。毎話毎話が傑作すぎますありがとうございます。