テラーノベル
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午後三時。参加者はパートナーどうしで手を繋ぐ時間となる。月呼と侑加は昨日と同じベンチに座った。月呼は侑加に桟明日都がいかにすごいサッカー選手であるのかを語る。
「……でね、彼は人間性もすばらしいの。フィールドでゴミを見つけたら、率先して拾ったりしているんだよ。たとえだれが見ていなくてもね」
侑加は月呼の目を見てちゃんと聞いていた。
三十分後。ミニゲームの前に参加者は全員集合となる。
「今日は皆さんにフットサルをしてもらいます」
バールバラが告げた。
「よっしゃあー!!」
フットサルと聞き、月呼はだれよりもよろこぶ。その場で飛びはねた。
「フットサルって、一チーム五人でやる競技ですよね? 八人では人数がたりないのでは? それとも、四人ずつでやるのですか?」
湯江奈がたずねる。
「はい、それを今から説明します。乙丸さんの言うように、参加者もふたり帰宅となり、フットサルをやるとなるとメンバーが足りないので、チームにそれぞれひとりずつ局員をまぜます」
八人の参加者は二チームに別れた。月呼と侑加、くるると野利彦がオレンジのチームで、気介と湯江奈、慶迅と依榛が紫のチームとなる。オレンジのチームにはバールバラが、紫のチームにはパンゲアという局員が加わった。勝利したチームにはひとりにつき一万円の賞金が支払われるとのこと。
「やった! 前沙と同じチーム!」
くるるが月呼に抱きつく。
参加者はいったん更衣室にて事務局から用意された運動着に着替える。二チームはそれぞれチームカラーのビブスを着装した。
昨日の五チームでいちばんを競っていたドミノ倒しと違って、勝つか負けるかは二分の一の確率となる。月呼はいっそう意欲がわいた。三人のサッカー部の弟がいる姉として、桟明日都が生まれ育った神戸の市民を代表として(月呼は他の参加者に神戸市民はいないと感じている)。
昨日はドミノ倒しに無気力だったくるるも、スポーツ全般に興味がないと言っていたのに、今日はやる気を出している。
前半開始から十分。野利彦のシュートにより、オレンジのチームは一点を先制した。
「ゴリラ、やるじゃん!」
野利彦はこの島にいても鍛えたり走ったりしてばかりで、スポーツマンな印象がある。サッカーに慣れていない様子からして経験者ではなさそうだが、活躍に期待できそうであった。
前半終了まで残り三分。相手チームの慶迅が一点を返し、同点となる。試合がふりだしに戻ると、湯江奈にボールが回った。彼女はどうしたらいいのかわからない様子で、おろおろとしている。
「あっ、しまった」
湯江奈が蹴ったボールが月呼のもとへと転がってきた。月呼にボールを奪うチャンスが回ってくる。
「侑加くん、縦パス!」
味方のチームでいちばん近い距離にいた侑加に向かってボールを蹴った。だが、ボールは思ったように転がってくれず、気介に奪われる。
「あっ」
いくらサッカーが好きでも、試合を見るだけでほぼ経験がないので、うまくはいかない。
四十分の試合時間の末、相手チームが逆転勝利する。月呼と侑加はまたしても賞金を獲得できなかった。
「ああ、悔しい」
月呼は地団駄を踏む。自分自身に腹立たしくなっているのはミニサッカーで負けたからだ。
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「……」
侑加はそんな月呼をじっと見ている。
優勝チームのメンバーに賞金が渡された後、参加者たちは更衣室でまた私服に着替えた。
「ちょっと、局員と会ってくる」
洋館に入ってすぐ、侑加がひと言告げてから、月呼のもとを離れる。彼にも連絡を取るべき相手がいるのだろう。
「私もまた後でお母さんに連絡しておかないとなあ」
その後、月呼は侑加と再び会うまでくるると過ごしたのだった。
コメント
1件
月呼のサッカー愛、めちゃくちゃ伝わってきました!「サッカー好きだけど未経験」なもどかしさが、縦パス失敗のシーンにぎゅっと詰まっていて、一緒に「あっ」って声が出ました。侑加くんが月呼をじっと見つめる視線の温度も気になります。勝ちきれない悔しさが次への期待を高めてくれる、そんな26話でした!