「ねっ!ねっ!尊さん見てください!あれもすっごく可愛くないですか!」
指差す方向の棚の上には、左から順に
かわいこぶりっ子をしたモモンガ
さすまたを持つハチワレ
嬉しそうに笑うちいかわ
元気いっぱいのうさぎが立っており
うさぎは黄色い体をピンッと伸ばして腕を組み、上部にはうさぎ特有のセリフである「プルャ…」という吹き出しが添えられている。
なんとも絶妙なバランスだ。
「……ふっ、なんか、この空間だけで癒されるな」
尊さんも普段と違い少し照れ臭そうに笑みを浮かべている。
その表情にまたキュンとしてしまった。
◆◇◆◇
店内奥へ進むと、壁一面を使ったディスプレイに目が留まり、思わず足を止める。
「あっ!見てください尊さん!これはご当地のものっぽいです!」
黄色い壁を背景に「ちいかわご当地(GOTOCHI)」と書かれたポップが掲げられ
その下には上段から吊り下げ式のキーホルダーコーナーが広がっていた。
中段から下段にはパンダの格好をしたちいかわたちのぬいぐるみマスコットが所狭しとぶら下がっている。
1番下には色とりどりの靴下も展開されている。
バリエーション豊かだ。
「ぬいぐるみも欲しいですし、キーホルダーも欲しすぎます!!」
ついつい興奮してしまい、語気が強くなってしまうが、この空間では我慢できなかった。
「あっ、さ、さすがにここは自分で買うので…!」
「…そーいうとこ律儀だよな、欲しいのあったら言っていいからな」
数十分後…
そのあともトミカショップで子供の頃よく遊んだプラレールを眺めて懐かしんだり
世界初となるドラゴンボールストアと言われている『DRAGONBALStore』で限定品を購入したり
仮面ライダーストアでは歴代ライダーを眺めつつ尊さんと談笑したり……
キャラクターストリートをひと通り堪能した後
「尊さん……ほんっっとうに連れてきてくれてありがとうございます、楽しくて仕方ないです!!」
思わず口にしていた。
「俺もいいものが見れたし、いい買い物ができた」
尊さんが穏やかに微笑む。
その笑顔が、俺の喜びを倍増させる。
「まだ時間あるし、昼飯食ったらもう少し見て回るか」
「はい!でもなに食べます?」
「どうするか…中華、和食、なんでもあるが」
「確かラーメン屋もたくさんありましたよね?」
「だな、とりあえず空いてるとこ見て見るか」
「それもそうですね!」
そうして俺たちは気分が浮かれていたせいか、自然と恋人繋ぎをして
エスカレーターで1階に上がるときも二人の指は絡めたままだった。
尊さんの手のひらの温もりと、確かな存在感を感じながら、次の目的地へと向かう。
◆◇◆◇
B1に戻り、ラーメンストリートからすぐの場所。行列が見えたと思いきや、外装には大きく
『とんこつラーメン』の文字が張り出されていて、思わず食欲を掻き立てる
『とんこつらーめん 俺式純』が。
その他にも『みそきん』や有名なラーメン店が並びに並んでいた。
そして、俺の目が止まったのは『塩らーめん専門店 ひるがお』だった。
行列はないが、カウンター席はほぼ埋まっている。
店内は落ち着いた木目調の内装で、スープの香りがふわりと漂ってきた。
入ってすぐに入口で食券を購入する。
尊さんは「チャーシュー塩らーめん」を
俺は「チャーシュー塩わんたん麺」を。
電子マネーで支払いを済ませると、
「いらっしゃいませ」
男性店員が案内してくれたテーブル席に向かい合って座る。
荷物を下ろして上着を脱ぎ、待つこと十分弱でテーブルにラーメンが運ばれてくる。
「お待たせしました」
テーブルの真ん中に二つのどんぶりが置かれ、立ち昇る湯気が食欲をそそる。
黄金色に輝く澄んだスープは透き通っていて美しく、ふわっとした鶏油の香りが鼻腔をくすぐる。
「いただきます」
「頂きます」
お互いに丁寧にお辞儀をした後、まず最初にレンゲで一口スープをすする。
塩味の中にも深みのある旨味が溶け込み、その後から感じる爽やかな塩加減が絶妙だ。
鶏や魚介からとった出汁だろうか。
細めの縮れ麺には艷やかな輝きが宿り、箸を入れるとコシを感じさせる弾力性が伝わってきた。
一口啜るたびに複雑な味わいが口の中で広がる。
「んんっ!美味しい……!」
「…最高だな」
そして、注文したラーメンに乗っている大きなチャーシューには濃密な肉汁が凝縮されており
噛めば噛むほど旨味がジュワリと染み出てくる。
俺のラーメンのワンタンも中には餡がたっぷり詰まっていてモチモチとした食感だ。
「こんな美味しいの初めてです……!」
思わず呟くと尊さんも軽く目を閉じて味を堪能していて、その姿にちょっとキュンとしてしまった。
お互い黙々とラーメンに向き合い続けるうちに、最後の一滴まで飲み干してしまった。
「ごちそうさま」
「ご馳走様でした」
お店を後にした時、ちょうど1時半を回っていた。
昼時に比べて人通りは少なくなってきており、空いているベンチもちらほら。
「満腹だな……」
尊さんが伸びをする。
そのリラックスした姿を見られるのが嬉しかった。
「ですね……でもちょっと休憩したいかもです」
「あぁ、一旦あそこのベンチで休憩するか」
通り過ぎていく人々を見ながら二人でベンチに腰掛ける。
歩行者の多さには慣れているつもりだけど、やはり東京駅というだけあって人の波はすごい。
「このあとどうしますか?」
尋ねると、尊さんは少し考えてから、とっておきの提案をしてくれた。
「そうだな…最後にカービィカフェ寄ってかないか?」
「えっ、賛成です!!グッズもスイーツもあるから最後に行きたいなってちょうど思ってたので!」
「よし、なら決まりだな」
◆◇◆◇
休憩後、俺たちはカービィカフェへ向かった。
カービィカフェはキャラクターストリートの一角に位置している、テイクアウト専門店。
他の店とは明らかに異なる雰囲気を醸し出している。
特に目を惹かれたのは、コックの帽子を被り、口元に生クリームをつけたなんとも愛らしいカービィのオブジェだった。
店内もグッズもスイーツもすべてがカービィワールドが展開されていて
昔ながらのカービィファンにはたまらないと思う。
まさしくカービィが大好きな俺にとっても、テンションの上がる空間だ。
それと同時に、クールに見えて、尊さんもこういうの好きなんだ、となんだか嬉しくなる。
尊さんとの共通点が増えるのは本当に嬉しい。
カフェ内は予想通り賑わっていた。
棚には様々なデザインのカービィやワドルディのぬいぐるみやキーホルダーが飾られている。
「ついでだし、グッズも買うか?」
「ん~……っ、グッズ買おうとすると多分3時間ぐらい悩んじゃいそうなので…今日はスイーツだけにします……っ!」
「ふっ、そうか…まあ、いつでも来れるからな」
そうして俺たちはレジに向かう。
レジカウンターの前に設置されたガラス製のショーケースは、色とりどりのスイーツで埋め尽くされていた。
カービィをモチーフにしたプディングやケーキが並び、どれも鮮やかで、思わず目移りしてしまう。
「うわぁ……全部美味しそうです……」
「確かに迷うな」
「やっぱりくるまほおばりケーキのカービィも可愛いし…でもイチゴプリンも食べて洗ったら取って置けますよね…オレンジプリンも気になるんですよね〜。んー…全部買っちゃおうかな…」
尊が呆れたように眉を上げるが、すぐに苦笑に変わる。
「たまにはいいだろ、せっかくだしな」
「で、ですよね!」
「俺も何個か買うか」
「えっ!尊さんも意外と食べるんですね?」
「まあ、今日は特別だ」
店員が優しく声をかける。
「お決まりになりましたらご注文をお伺いいたします」
「えっと、俺は…この、カービィのイチゴプリンとオレンジプリン、それとマキシムトマトのチョコシフォンケーキを一つお願いします!あとはカービィ・パーティも1つください!」
「はい、ありがとうございます、お客様はお決まりでしょうか?」
店員が尊さんに向かって伺う。
「俺は…メタナイトのチョコレートケーキと、抹茶のティラミスを一つずつ。それとメタナイト・ディライトも一つお願いします」
店員が素早くケーキをショーケースから取り出して白い手提げ箱に詰めている。
「以上でよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
◆◇◆◇
店を出て、東京駅を後にする。
手提げ箱に入った可愛いスイーツと、今日買ったグッズが入った手提げ袋がこの一日の楽しさを物語っていた。
「今日一日、本当に楽しかったです、尊さん、連れてきてくれてありがとうございました!」
心地良さで胸いっぱいになり、心からの感謝の気持ちを伝える。
「おかげで俺も羽が伸ばせた、こっちこそありがとな」
尊さんの優しさに満ちた笑顔を見て、俺は最高の幸せを感じていた。
コメント
2件
自然と恋人繋ぎは反則です!!!!!!! 今回も最高でした😭