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八月の終わり、港町。
海からの湿った風が髪を揺らす。
美咲は、駅前で立ち尽くしていた。目の前にいるのは、高校を卒業して以来会っていなかった幼なじみの遥斗だった。
「……久しぶりだな」
「本当に……何年ぶりだろ」
遥斗は少し大人びていて、でも笑った時の目尻の下がり方は昔と変わらなかった。
その笑顔を見ただけで、胸の奥が熱くなる。
二人は歩きながら、町の夏祭りへ向かった。
屋台の並ぶ通りは人であふれ、甘い綿あめや焼きそばの匂いが漂う。
「花火、見に行かない? あの堤防のとこ、昔よく行ったじゃん」
その言葉に、美咲は少し戸惑った。
――あの日も、花火を見た。最後に会ったあの夏の日も。