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オレンジタイフーン
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オレンジタイフーン
シンカスル悪夢⑤
もったいなげに言うと、これまでに無いくらいにおもいっきり脚を後ろへ跳ね上げて…渾身の一撃を放ったのだ!!
鈍器で頭部を殴りつけたような低く大きく響く音がした。
その瞬間…バキンとかゴキッとか固い煎餅でも噛み砕いた時に聞いた事があるような様々な種類の破砕音が彼の身体中に響き渡った。
彼の歯は粉々に砕け、顎の骨も複雑骨折してしまっていた。
彼は…自分の歯を吐き出しながら、また…あの暗闇へ、ファニーズランドの上空へ放り出された!!
これで悪夢から目覚められるのか?…と言う不安と無事に男の子は逃げられたのであろうか?…と心配になる。
そんな事を走馬灯のように思い出すと…無邪気に微笑む月の光が残酷に思えた。
その横で…愉悦に満ち足りたピエロが微笑み、ウインクすると何かを投げつけて来た…
ドスッ!と身体を貫く衝撃を感じ…薄れゆく意識の中で目線を胸へと落とした。
そこには…リンゴの入れ墨を貫いて深く突き刺さるナイフが星空を映してキラキラと切なく輝いていた!
どこまでも深い沼に沈むように落ちていく感覚の中でピエロに目線を戻すと………!?
《さようなら、ゲームオーバーですねぇ!
ホ~ッホッホッホッホッホ~!!》
ピエロは満面の笑みでハンカチを片手にユラユラとはためかせて…手を振っていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!」
彼は狂乱し…絶叫した。
夢なら早く覚めて欲しかった。
………………………うぅ!!
……………………ッんん。
……………………ぁあッ!!
ごつん…と床に頭を打ち付けて、彼はハッと目を醒ました。
身体中に不快感…極まりない、ねっとりとしたベタベタな脂汗をかいていて、シャツもパンツもバケツの水でも被ったみたいにグショグショに濡れていたのだった。
どうやら…あまり記憶に無いのだが、昨日は悪友に自宅まで送って貰ったらしい。
それを推測する事が出来たのは…部屋の片隅でソファーのクッションを枕に座布団を並べ、その悪友が雑魚寝しているからだ。
さらにソファーの横にある強化ガラスのローテーブルの上には…様々なアルコール飲料の缶やビンとスナック菓子や珍味類が散乱していた。
その事からも…ここで雑魚寝している悪友以外も数人が一杯ひっかけて行ったに違い無いのであった。
笑顔のピエロをマスコットキャラクターにしているポップコーンの印刷された袋を見て…先程の悪夢を思い出す。
とたんにグッと胸から込み上げてくるモノを感じて…トイレに駆け込んだ。
ひとしきり…それらを戻し終えると洗面所へ向かい、パシャパシャと顔を洗うのだった。
冷たい水が悪夢から目覚めたのだと実感させると…二日酔いの頭痛に悩まされながらも、少しは気持ちが楽になった。
パンツとシャツを真新しい乾いたものと取り替えた頃には…何か、とてつもなく恐ろしい悪夢をみた事以外…記憶から消え失せてしまっていた。
居間に戻ってみると…悪友は腹を出して熟睡している。
先程は、気付かなかったがテレビが音量を小さくしたまま点けっぱなしだった。
ブラウン管に写し出される映像は…朝のニュースで、中年のベテラン男性アナウンサーが流れるようにつらつらと読み上げるニュースの中で無意識に反応してしまうものがあった。
《え~、続いてのニュースなんですが…かなり気になるニュースとなっておりますね。
ここのところ…幼児から小学生高学年くらいまでの児童の間でインフルエンザや風邪に似た症状を急に発症し、死亡するという不可解な病気が流行しており、政府は…まったく新しい伝染病や感染症などを視野に入れて、緊急の対策本部を設置すると共に…ここ一ヶ月あまりでの爆発的な発症から幼い子供の親や各種児童施設や学校関係者は危機感を募らせている模様です。
いやぁ…恐ろしいニュースですが、コメンテーターの前原さんは医学部出身と伺っておりますが、このニュースに関して何を感じましたでしょうか?》
コメンテーターが危機感を煽るような事を解説している…
その言葉は耳に届かずに…彼は…
「あの男の子は無事なんだろうか?」
口をついて出た自分の言葉の意味が理解出来ずに小首を傾げてしまう。
……………………
…………………
このニュースを食い入る様に見つめている者がいた。
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