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そういうティニから感じたものは、羨望だった。彼女は住む場所を奪われた苦しみから、チタニーを羨んでいるようだった。しかし、チタニーもまた親を待つという肩書きだけで教会に預けられている。居場所がないのだ。そして、迎えに来る両親も既に居ない。
「ティニ、居場所がないのはチタニーだって同じだ。気持ちのまま何でも言ってもいいわけじゃない」
「あら、それは教養のひけらかしかしら?そうやって、大人ぶれば誰かのためになると思っているのね?」
私は驚いた。
「一体君は、どうしてそんな嫌なとり方をするんだよ」
ティニとは明らかに考えている視点が違うことに気付いた。
「私はただ、大人も子供も関係なく、言葉を言いたいだけよ。気遣った言葉なんて、伝えられなければ後悔するわ」
その言葉はあまりに悲しいものだった。まるで伝えきれなかった後悔が滲んでいるようで、何も言い返せなかった。
「知識があれば…大事な時に誰かのために役立つものなの?」
私は答えた。
「それはもちろんだよ。知識があれば、事が起こる前に回避出来るかもしれない」
「私は灰になる寸前だったってのに?」
私は言葉をつぐんだ。彼女もまた辛いはずだった。けれど、その一瞬を突くかのように、ティニは偉そうな口ぶりで続けた。
「ほら、でしょ?私の経験談には言い返せないわよね。いくら言葉に敬意を払っても、事実にはかえられないもの」
「っ…そんな言い方しなくてもいいと思うけどな」
私は苛立ちが滲み出たのか、彼女を自然と睨みつけてしまった。それを見たティニは、とても悲しそうな表情をした。
「あ…」
私はその顔を見て、一番の被害者は彼女だと言うことを忘れていた。チタニーに楽しい事だけ話したいと願う彼女が、元よりこんな事を言いたくないという事には気付けたはずだった。
ティニは悲しみを振り絞るような、今にも消えてしまいそうな声で言う。
「彼女は悪くないの。無知でいいの。だから、私が抱えている気持ちも知らなくていいの。それが生きる事なんてないから」
「それはっ…」
私はティニの言葉を否定したかった。でも、彼女の寂しげな表情に言葉を失ってしまった。それだと、どちらの気持ちも報われない。真実を知る事は喜びや、問題への突破口を作れるはずなのに。
「ティニールも苦しいの?」
チタニーは、ティニを見つめながら言った。そういえば、彼女は私とティニの言い合いの中、黙って見つめていた。ティニの本心の言葉を咀嚼していたのかもしれない。
「心が悲しんでる。素直になれないみたい。でもきっと、私が近寄っても怒らない」
彼女はそういうと僅かな瞬きの間に、ティニの元へ駆け寄った。
「ちょっと、リエンのところじゃなくていいの」
「ううん、ティニールを迎えに来たの」
チタニーはティニの手を握る。
「こっちおいでよ」
チタニーはティニの手をひいて、私の隣に座り直した。まるで、子供が母親に遊ぼうとねだるみたいな子供の甘えだった。