TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

音楽が好きな刀剣様

一覧ページ

「音楽が好きな刀剣様」のメインビジュアル

音楽が好きな刀剣様

3 - 第3話 悲しむ君に暖かい約束を   少女side

♥

11

2024年11月01日

シェアするシェアする
報告する

この大きなお家はお父さんが住んでいる家。

とっても広くて大きな桜の木があって池があって鯉が泳いでるんだよ。

和室というお部屋がたくさん並んでる家だけど一ヶ所だけ普通の部屋が混ざってるの。

お父さんが私のために用意してくれた大きなピアノが一台だけある音楽室。


ここの大きな家をお父さんは本丸と教えてくれた。

確かにお父さんの家なんだけどお父さんだけが住んでるわけでもないし最初から住んでたわけでもない。

私と同じくらいの小さい子供から大きな男の人までいろんな歳の人が何人も住んでるの。

その人たちはお父さんのことを主って呼ぶから変なの、お父さんそんな名前じゃないよ?って言ったらお父さんとか男の人たちは困ったような顔をして、「うーん、学校の先生のことは先生って呼ぶだろう。それと同じように主っていうお仕事してるからお父さんは主って呼ばれてるんだよ」って言ってた。

私も元々はここに住んでたわけじゃなくて半年くらい前にお母さんが入院してからきた。お母さんは精神病院っていうところに入った。

お父さんはめったにお家に帰ってこなかったから本丸でお父さんといれるのが嬉しい。

でもお父さんの周りにはいつでも人がいる。それがお父さんは人に囲まれるすごい人なんだなと自慢にも思うけどいつも寂しかった。

とくに小さい子が周りにいるときは本当に寂しくて悔しさも覚えた。

だって実の子の私とは3年間も会っていなかったのに(その3年前だって小学校の入学式のとき一週間しか帰ってこなかった)赤の他人の子どもと同じ家でずっと暮らしているのはやっぱり信じられない。せっかくお父さんといられるからたくさん話したい。けど他の人に向かって話すのは得意じゃないし話しかけづらい。

お仕事があるから私もそんなこと言えない。

三年生にもなってお父さんに寂しいっていうのは子供っぽすぎるというのもあった。




今日はいつも閉じてる部屋が珍しく開いていた。普通になんでだろうと思って中を覗いてみたら、火が燃えていた。

こんな木でできた家なんてすぐに燃えてしまう!

急いで消しに行こうと部屋の中に入ったら大きな石に足をつまづいて転んでしまった。

それだけなら痛いだけで済んだのだけど自分が持っていたピアノの楽譜を手を着こうとして火の中に投げ入れてしまったのだ。

どうしようと戸惑っている私の前が光ったと思ったら

桜の花が5枚に別れながら落ちてきたのが見えた。


目の前に広がるのは柔らかな白と金が混ざった暖かい色だった。

まるで絵本で見たような真っ白な服を着て肩にマントを掛けて日の光色の髪を三つ編みに結んだ王子様が立っていた。

バイオリンのような優しい茶色の目が開かれた。彼もびっくりしているようだった。

「お兄ちゃん、誰? どこから来たの?」

「え、っと、長く異国にあります。花音行安です。様々な音楽家の元に渡り、数々の音楽に触れて育った少し珍しい刀なんですよ。」

どうやら彼も私と同じくらい戸惑っているようだった


かのん、花音お兄ちゃん。そう呼びかけると嬉しそうに笑ってくれた。笑う姿がとても綺麗。なによりその響きがとてもしっくりきた。

まるで心の中で緩まっていた糸がキュッと結ばれたみたい

ふと、お兄ちゃんの手元を見てみると私がさっき燃やしてしまった楽譜があった。燃えてしまったはずなのになんでお兄ちゃんが持っているんだろう?思わず熱心に見つめていると「これは貴方のものですか?」と首を傾けてた。お兄ちゃん可愛い。うん!と勢いよく首を振るとまた微笑んでくれた。お兄ちゃん綺麗。


花音お兄ちゃんは音楽に育てられたって言っていた。ならピアノも弾けるのかな。弾いて欲しいな。

ピアノの部屋までお兄ちゃんの手を引っ張る。

ぐいぐいとお兄ちゃんを椅子に座らせて横で立って聴くことにした。

でも花音お兄ちゃんは一音鍵盤を押すだけだった。弾いてくれないのかな?と顔を見上げるとなんだかとてもびっくりしているようだった。自分が触らないものに触ったみたいに動かなかった。花音お兄ちゃん、よくびっくりしてるな。

それでも「ああ、すみません。今弾きますね。」と言って弾き始めてくれた。

テレビで見た結婚式や入学式の時に聴いたことのある曲。綺麗で素敵な曲だった。

でもその時聞いたのよりも今花音お兄ちゃんが弾いてくれてる方が何百倍も何千倍も魅力的で美しい。ううん、言葉に表せないほど素敵。

外で聞こえる風の音も鳥の声も何もかもがその場の音をこの曲に譲っているように響きが広がる。

いつのまにか曲は最後の一音になっていた。

その最後の一音が聞こえなくなっても私は動かなかった。動けなかった。


泣いてる


お兄ちゃんが声を抑えながら静かに泣いてる。零れた涙が私の頬まで落ちてきてもそれに気づかないほどに。

なんで泣いているの?

そんなのわからないけどお兄ちゃんが今泣かないといけない気がしたから、何もしなかった。

泣くのは悲しい時や怖い時だけだと思っていたけどお兄ちゃんのはそれだけではなさそう。色々な気持ちがたくさん混ざって一気に涙になってるみたい

白い洋服が涙でどんどん濡れてる。

泣きすぎて目が溶けちゃいそうなくらい涙を流してた。

これからの分の涙を使い果たすくらいまで泣いたところでようやく涙が止まった。


自分よりも高い位置にある頭に手を置いてゆっくり撫でてみる。

深呼吸して落ち着いたようだけどまだ暫く撫でていた。ふと椅子から降りて膝をついて目線を合わせてくれた。そして私の両手を握って

「泣いちゃってごめんなさい。もう大丈夫です。」と微笑んだ。

「無理しないでいいよ。今は私しか見てないから気持ちの整理がつくまでそばにいるよ。誰にも言わないよ。約束する。きっとこの先泣けなくなっちゃうからたくさん泣いていいからね」

頭を包むように抱きしめた。

私の腕を引っ張って抱きしめ返してくれた。

「ありがとうございます、主君。」

そう言ってまた少しだけ泣いていた。



ピアノ椅子に二人で並んで話をする

並ぶと言っても一人で演奏する用の椅子だから私は花音お兄ちゃんの膝に乗せてもらった。

「主君。座り心地はいかがですか?」

ふわふわで柔らかくって100点満点だよと言うと、もっとギュッてしてくれる。でもその主君っていうのは私のこと?主君って呼び方なんか嫌だなぁというのを言ってみたら

「嫌ですか?」

「うん、だって私女の子だもん。君付よりちゃん付が良いな」

「私はね、鈴花だよ。蓮見鈴花。8歳!」

そういえば名前も言ってなかったな

「それは、お母様とお父様からいただいたお名前ですか?」って聞いてくる。

「もちろん、お母さんが鈴蘭の花が好きだからってつけてくれたの。」

「とても素敵なお名前ですね。僕も蓮の花が名の由来ですからお揃いです」

「主君が嫌なら…では、鈴様とお呼びしま「様いらない、やだ」…はい、じゃあ鈴ちゃん」

勝った!でも知らない他の人に名前教えちゃダメだよ、と注意された。お兄ちゃんとお揃い嬉しいな。

「もう一回呼んで!」とせがむと

「鈴ちゃん」とさっきよりも楽しそうに言ってくれる

「私も花音お兄ちゃんとお揃い嬉しいよ。でも花音お兄ちゃんって呼び方長いから『花音にい』で良い?」お好きなようにと言われたから私もたくさん呼んじゃおう。

花音にいなら言ってもいいかな、きっと笑わないで聞いてくれる

「あのね、あのね。お父さんと今一緒に暮らしてるんだけどお父さんがいつも他の子たちを優先するの。娘は私なのに私のことはずっとほっときぱなしで、何年も会いにこないし仕事なのはわかってるけどお父さん嫌いなのかなって」

誰にも言ったことがない弱音がどんどん溢れてくる

「こっちで暮らしてからもお父さんの周りにはたくさんの人がいて私が話しかけるのを邪魔してるみたいでお父さんも気にかけてくれないから寂しいし悲しいよ」

「ねえ、花音にいは私のこと大事にしてくれる?寂しくしない?」

心が何か黒いもやもやで包まれてくようで怖くなった。花音にいは優しいってわかっているのに。これで大事にしないなんて言われたらどうすれば「約束します」

「貴方のことは僕が守ります。貴方を襲うものは僕が排除します。生涯忠誠を誓い、僕の命をかけて貴方を守り続けます。貴方が僕の最優先です。貴方の幸せが僕の幸せですよ」

「だから安心してね 一緒にいるよ」

難しい言葉が多くて全部は分からなかった。でも花音にいが私を大切にしてくれてるのはよくわかった。初めてこんなに私を愛してくれる人を見つけた。あの曲のように優しく包んでくれる。きっとどんなところに行ったって着いてきてくれるよね。

この作品はいかがでしたか?

11

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚