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均衡を保っていた場が突然動き出す。先に動いたのはカナだった。
ビーム兵器を弾くという性質、その有無を確かめるべく牽制として新たな兵装『試作品ビームカノン』をアサルトナイトに撃ち込む。
火力は推定Dランクのビーム兵器と同等なのだが、名の通り試作品なので消費するENも激しく何発も多用は出来ない。また、固定砲台のようなものなので追従はほとんど出来ない。
しかし、そのデメリットをあまり感じさせない理由がある。それが”射程の長さとビームの太さ”この二点に限る。
まず射程だが、恐ろしいことにこの兵装はマップの端から端まで届いてしまう。それだけでも壊れ性能なのにそれに加えて戦姫まるまる一人を飲ま込む程の太さ。これが消費ENのでかさの要因であると同時にビームカノンの強みでもあるのだ。
そんなトンデモ兵器をカナはすぐさま取り出して、アサルトナイト目掛けて放った。カナの視界はビームカノンと発射されたビームが眩しくほとんど視界は取れていない。だが、距離はそれほど離れていない。人間で言うところの3〜4メートル程度。そんな距離感で即座にカノン砲を取りだし速射をしたのだ。万が一避けられたとしても無傷では済まないはず。そう思いカナは行動した。
「はぁ…はぁ………。もっと手頃なビーム兵器持っておけばよかった…。消費EN半端ないわ。」
「………ほんとそうしてくれると助かったわ」
ビームが消え、視界を確保した時ボロボロにはなっているが、剣を構えるアサルトナイトの姿がそこにはあった。
「やっぱりビーム兵器を弾くんだね。」
「それにも限度ってものがある。だから盾も使うし、今回は使った上で使い物にならなくなった訳なんだけどね」
確かによく見ると彼女の足元には背に当てていた盾が変わり果てた姿になって、転がっているのが確認できた。
「あの一瞬で盾を取り出し構えたのか」
「即座に盾を地面に突き刺し、剣を前に構えてビームを切り裂かせてもらった。まぁ、先にも話した通り、限度はあるがな」
「本当に私を『敵』と認めてくれてるんだな」
「負けた時の屈辱を晴らすため、それが行動理由になるがね。さて、次はこちらのターンと行こうか」
装備は大きく傷ついてるが、彼女自体にはそれほど大きなダメージは入っておらず、すぐさま攻撃に転じる。
対してカナは先程のカノン砲によりかなりのENを消費して直ぐにキビキビと動くのは難しい状態。しかし、相手は待ってくれる訳もなく盾を上手く使い攻撃をいなしていく。
「避けてばかりじゃ勝てないけど、どうするの?」
「私だって好きで避けてる訳じゃないが、ビーム兵器を弾く事を知った以上、迂闊にサーベルを取りだし攻撃に転じるのはナンセンスだろ?」
「まぁ、それが正しい判断であるのは違いないけど、いずれ限界は来る。貴女がここでとる行動…とれる行動はひとつだけ。覚醒を使うことよ」
事実彼女の言うことはあっている。防戦一方で勝てるケースは極々稀だ。
戦姫大戦にはしっかりとした時間制限が付けられており、二分という限られた時間内での戦闘で相手のライフポイントをゼロにするか、判定勝ちを狙うか。これが基本的な二択で、後者の判定勝ちというのが防戦一方でも勝てるケースになる。
だが、それを可能にするためには相手と自身で耐久性の差がないと厳しいものであり、現状ではカナとアサルトナイトにはそれほど大きな差は生まれていない。つまり判定勝ちを狙うのはほぼ無意味な行動でもある。
それを狙うくらいなら、覚醒を使い再度こちらのターンを獲得する方が現実的だ。他の戦姫達も基本的に判定勝ちを狙うものはおらずやりきるか否かの場合が多い。
もちろん今のこの状況を打開するため覚醒を使えばなんとなるかもしれない。だが、覚醒を使ったところで根本の問題であるビーム兵器を弾くことの解決策にはならない。
主導権を得れるかもしれないが、それがそのまま勝ちに直結もしないのが現状なのだ。だからまだ覚醒を使わないし、もっと言えば使えないのだ。
幸いなことにほかの兵装は実弾のものばかりで有効打ではあるが、相手は自身と同じく近接を得意とする戦姫。そもそも距離を置くことは困難。
だから今はとにかく攻撃を避けて、避けきれなければ盾でいなして何とかして隙を作れないかを見極めているところだ。
「隙を見て何とか打開しようと考えてるみたいね?」
「そう見える?」
「残念だけどそうね」
「実はそれどころじゃなくて、今を生きるのに必死なんだよね」
「ふっ…。嘘つくならまともな嘘つきな!」
先程の攻撃よりも少し威力を上げ、更に猛攻は激カしていく。そして、遂にその勢いに負け盾を大きく弾かれてしまいそのまま袈裟斬りを受ける。
幸いなことにすぐに後ろに下がる判断をしたおかげで傷は浅いが、それでも自身の装備と相手の装備とで格差があり、その格差だけは実力で何とか埋めることなんかはできない。
後ろに下がったのも言ってしまえば気休めでしかなく、カナにしてみれば傷を受けること自体が致命的なのだ。
「くっ…!」
「カノン砲には驚いたけど二度は効かないと思いな」
「そもそも使えないっての……」
「装備の差で貴女は負ける。大人しく降伏しな!」
「絶対嫌だね。てか、アンタもそれはしない女っての分かって言ってるでしょ?」
「もちろん」
「性格の悪い女…」
「私が本当の戦姫大戦を知れたのは貴女のおかげ。だからこそ、諦めの悪さも見てみたかったのよ」
「………なら、こういう反撃も想定してるってわけね」
シールド裏にもう一本隠してあるビームサーベルを起動させ、虚を突きアサルトナイトの左肩部を貫く。
「!?」
「ちっ…利き手じゃないから外した。」
「そのシールドか!」
即座にシールドを持つ左腕を切り飛ばしてトドメを刺しに行く。が、その瞬間覚醒を発動させ機体性能を一気に引きあげ、突きを回避し左足で鎧を砕く勢いで蹴り飛ばす。
「がはっ!?」
「……はぁ、はぁ」
「卑怯な奴ね…」
「申し訳ないけど私は今何がなんでも勝たないといけない。だから手段は選んでられない。」
「でも、ここで覚醒を吐いたってことは決め切るつもりね?打開策も何もなしで」
「何とかしてみせる。私はいつも壁にぶち当たってから考えて打開してる。」
「とんだ戦闘狂いの戦姫ね」
「大半はリナのせいなんだけどな」