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丈一郎:「……あれ、大吾、まだ帰ってきてへんの?」
翌朝、リビングに集まったシェアハウスのメンバーたちは、昨夜から姿を見せない大吾のことを心配し始めていた。
真理亜は心にひっかかる違和感を抱えながら、自分のスマホを確認する。
未読のままのメッセージ
オンラインも非表示
最後のログインは、昨日の夜8時。
真理亜:(なんか……変や)
昨日、自分とすれ違ったあのときの顔。
目の奥にあった「決意」のようなものを、今更ながら思い出していた。
流星:「なあ、誰か大ちゃんの家とか知ってんの?」
流星がソファに座りながら言う。
丈一郎:「真理恵さんなら知ってるんちゃうか?」
丈一郎が真理亜を見る。
真理亜:「でも、叔母さんは今、出張中やし……」
一瞬、沈黙が落ちた。
和也:「俺、正直に言うわ」
和也が口を開いた。
和也:「……昨日、大ちゃんに『真理亜ちゃんのこと好きなんちゃう?』って言ったんや。そしたら、めっちゃ怒って出て行ってもうて……」
恭平:「それ、原因やん……」
恭平があきれたように言った。
和也:「……ごめん」
和也は俯いた。流星も丈一郎も、気まずそうにしていた。
真理亜:「……もう、みんな責めんとこ」
真理亜が小さく言った。
真理亜:「大吾くんが出て行ったのは、私の記憶のことも関係あるかもしれへん。だから……責めたらあかん」
その言葉に、全員がはっとしたように顔を上げた。
丈一郎:「……探しに行こう」
丈一郎が立ち上がる。
真理亜:「えっ?」
丈一郎:「こんなまま、放っておかれへんやろ。きっとどこかで困ってる。助けてほしいって思ってるかもしれん」
和也:「俺も行く」
一家もすぐに立ち上がる。
謙杜「……僕もや。…りゅちぇやって、ほんまは心配やろ?」
流星:「……うん」
そして自然と、2つのグループが編成されていった。
グループA:真理亜、恭平、駿佑、謙杜
グループB:丈一郎、和也、流星
真理亜:「私たちはシェアハウス周辺から範囲を広げて探すわ」
丈一郎:「こっちは、大吾が通ってた塾とか、よく行ってた公園まわってみる」
作戦は決まった。
夕方、グループAは郊外の住宅街に入った。
真理亜はなぜか、胸騒ぎを感じていた。
真理亜:(……もしかして、この辺?)
そのとき――
謙杜:「……今、なんか聞こえへんかった?」
謙杜がピタリと足を止めた。
駿佑:「え、なになに?鳥?」
駿佑が首をかしげる。
謙杜:「叫び声みたいな……いや、気のせいか」
真理亜も耳をすませたが、風の音と遠くの車の音しか聞こえない。
一同はしばらく立ち止まったあと、結局その場を後にする。
夜になり、シェアハウスへ戻った真理亜は、ベッドの上でスマホを手にしていた。
通知が1件届いていた。
送信者:大吾
内容:ボイスメッセージ(0:13)
恐る恐る再生すると、スピーカーからは震える声が響いた。
大吾:「やばい……もう無理かも……助けて……」
真理亜の手が止まった。
真理亜:「……大吾くん……」
画面を見つめていると、続けてもう一通のボイスメッセージが届く。
大吾:「……やめて……やめろって……ううっ、誰か……誰か、助けて……!!」
叫び声。殴られる音。
そのすべてが、生々しく響いてくる。
真理亜:「……これは……!」
真理亜は震える指でスマホを握りしめた。
真理亜:「絶対……助けるから」
心の中で誓いながら、すぐにグループLINEに音声を転送した。