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丈一郎:「これ……本物やんな……?」
丈一郎が、真理亜のスマホから再生されたボイスメッセージを何度も確認しながら、低く呟いた。
真理亜:「うん。……これ、大吾くんの声や」
真理亜は唇を噛みしめながら言った。
和也:「虐待されとるんや……戻ったんやな、あの家に」
和也の声は震えていた。
流星:「何でや……何でそんなこと、ひとりで……」
リビングは思い沈黙に包まれた。
けれどその空気を破ったのは、意外にも恭平だった。
恭平:「助けに行くしかないやん」
丈一郎:「え?」
恭平:「大吾くん、俺等の仲間やろ?それに……あいつ、ずっと耐えてたんや。昔も、今も」
和也:「……恭平……」
流星:「助けに行こう!……俺、行くからな」
その言葉に背中を押されるように、みんなが一斉に顔を上げた。
駿佑:「行くで」
謙杜:「絶対、助けるんや」
丈一郎:「もう、あいつをひとりで泣かせへん」
作戦会議が始まった。
録音の音声から、どこかの家の中に監禁されていることは明らかだった。
問題は、その「家」がどこかということ。
真理亜:「……昨日、私たちのグループが通ったとき、誰かの叫び声を聞いたよね?」
恭平:「え?あのときの……?」
駿佑:「鳥ってことにしたけど、あれ……もしかして」
一瞬、全員の背筋に冷たいものが走った。
和也:「……あれが大ちゃんの家かもしれへん」
丈一郎:「なら、そこへ行って確かめるしかないな」
丈一郎が言った。
真理亜の父・三城 真(まこと)は警察官だった。
真理亜はすぐに電話をかけ、事情を説明する。真は声を強めた。
三城真(以下真):「証拠があるなら、すぐに動く。だが、下手に突入するのは危険だ。様子を見て、場所を特定してから教えてくれ」
真理亜:「うん。わかった」
作戦はこう決まった。
• 真理亜、恭平、駿佑、謙杜が先に現地へ向かい、家を特定する。
• 親が暴れた場合、謙杜が母親を押さえ、父親は恭平と駿佑が担当。
• 同時に、丈一郎・和也・流星が真理に連絡し、警察の突入を要請。
その夜、4人は再び住宅街へと足を踏み入れた。
空は曇っていて、月も星も見えない。
真理亜:「このあたり……やと思う」
真理亜が立ち止まった。
駿佑:「……あ」
駿佑が突然息をのんだ。
古びた木造二階建ての家の中から、小さな、でも確かな呻き声が聞こえた。
恭平:「真理亜ちゃん、聞こえた……?」
真理亜:「うん、これ……大吾くんや」
その瞬間、スマホが震えた。
大吾から、またボイスメッセージが届いた。
大吾:「……やめて、ほんまにもう、やめて……痛い……うぅ……誰か……」
音声の中には、はっきりとした殴打音と怒鳴り声が混ざっていた。
もう、迷っている時間はなかった。
謙杜:「……まだ生きてる」
謙杜がきっぱりと言った。
恭平:「俺らが……今、助けなあかん」
恭平が拳を握った。
その目に宿る決意は、もう誰にも止められないほど強かった。