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鈴音の一件があった翌日、宮舘の作ったパスタを食べながら、阿部がうーんと声を漏らした。
今、事務所には目黒とラウール以外が揃っている。
向井は昼休憩中で一旦カフェを閉めて、宮舘の料理を一緒に食べている。
💜「阿部ちゃん、どうしたの?」
💚「昨日の件、ちょっと腑に落ちなくてさ」
🩷「腑に落ちないって?」
💚「鈴音ちゃん……服部さんの異能って、翔太達が見た風の異能だよね。多分、竜巻を作るような異能だと思うんだけど」
💙「そうじゃねーの? 俺らに異能使って、余裕が出たからか自分からめっちゃ喋ってたし」
💚「じゃあ、やっぱり変だよ。犯人は一人じゃない」
💜「どういうこと?」
💚「先ず、夢の中の出来事は現実だった。同じところに傷が出来たって話は、他の子の証言で分かってる。つまり、寝ている子をあの山に連れて行く為の異能が必要。それと、めめは木の記憶の中で追いかける服部さんを見たって言ってたけど、他の子はみんな、影に追いかけられたとしか言ってなかった。つまり、影の異能も使われてる可能性が高い」
💛「じゃあ、異能は三つあったってこと?」
💚「もう一つ。服部さんのお母さんだと説明された人。その人に話を聞いたら、何も覚えてなかったみたい。つまり、催眠系の異能も関わってる」
💜「一つの事件に四人の異能者がかかわってるとしたら……組織ぐるみってことか……そういや、その服部さん、命の霊薬の為に必要だった、みたいなこと取り調べで言ってたらしいよ」
💙「また命の霊薬……」
💚「それに、わざわざ俺たちに依頼してきたのも気になる。まるで、犯人を捕まえてほしいみたいな……」
そう言って考え込んでしまう阿部に、他の者達は肩を竦めている。
頭脳明晰な阿部の考えを理解できる者は、今のSnowManにはいないのだから。
❤️「さ。考察はあとにして、食べちゃって。温かいうちの方が美味しいよ」
💚「あ、ごめん、舘様。でも、舘様の料理はずーっと美味しいよ」
❤️「ふふっ、ありがと」
昼食を食べ終わったタイミングで目黒とラウールが戻って来て、入れ違うようにコントロールルームに向かう阿部に「俺、阿部ちゃんについてるわ」と渡辺が一緒に中に入って行く。
そうしていると事務所のインターホンが鳴り、数人の子ども達が中に入ってきた。
🩷「んー? 君たち、どうしたの?」
「あの。この子、ケガしてて……」
見ると、男の子の腕に抱かれているコーギーがいる。
🧡「このワンちゃん、どうしたん?」
「公園で遊んでたら、ドンッて音がして、見たらこの子が倒れてたの。首輪してるのに、誰も近くにいなくって」
「足、ケガしてて、でも病院に行っても飼い主じゃないからダメだって」
「どうしたらいいのかわかんないの……」
泣きべそをかいている男の子たち。
佐久間がしゃがんで男の子と目線を合わせて、コーギーの頭を撫でる。
🩷「知らないワンちゃんのこと、助けてくれようとしたんだね。優しいね。この子のことは、お兄ちゃん達に任せて」
🧡「ちゃんとケガも治すし、この子の家族も探したるからな」
「いいの?」
🩷「もちろん!」
トントンと話が進んでいって、岩本が頭を抱える。
💛「勝手に安請け合いして……」
💜「まあまあ。これも大事な仕事だから。あの子たちの気持ち、無碍にできないでしょ?」
💛「そりゃそうだけど……」
💜「じゃあ、佐久間と康二とラウ、その子の手当てと飼い主さんの捜索、よろしく」
🤍「あ、僕も?」
💜「ラウは二人のお目付け役。突っ走らないように見といて」
🤍「わかったー!」
最年少がお目付け役とは何とも言えないなと思いながら、テンションが上がりまくっている佐久間達を見送った。
コントロールルームに入って椅子に座ったところで、阿部はくるりと体の向きを変えて渡辺を見上げる。
💚「翔太、どうしたの?」
💙「あ、いや……」
💚「俺に話があるんでしょ? 聞くよ?」
💙「えっ、なんで」
💚「命の霊薬の話が出てから、何か言いたそうだったから。俺になら話せることなんだよね?」
顎に人差し指を当ててコテンと首を傾げる阿部に、渡辺はズルいと思いながら息をついた。
💙「阿部ちゃんさ、その命の霊薬ってどのくらい分かってるの?」
💚「正直、ほとんど情報はないかな。めめに聞いた後に調べてみたけど、大勢に拡散されてる感じもないし、出回ってるのも噂か都市伝説程度で、中身がないというか、言葉だけが独り歩きしてるかな」
💙「そっか……」
💚「不安? 翔太が関係してるかもしれないから」
えっ?!と驚いたような翔太の顔に、阿部はごめんねと眉根を下げる。
💙「あー……そりゃ、阿部ちゃんに隠せるわけないか。俺の過去のことは知ってんだろ」
💚「うん。小学生だった翔太が誘拐されて実験台になったっていうやつでしょ……翔太の異能、花からいろいろな成分を抽出できるから、それが命の霊薬かもしれないって思われたんだよね?」
💙「そ。でも結局、命の霊薬はできなかった。その時に涼太とふっかと佐久間に助けてもらって何とか無事だったけど」
💚「探偵になったのは、それがきっかけ?」
💙「まあ、そんなもん。その犯人、赦せなかったし、命の霊薬ってもんが何なのか知りたくて調べて。じゃあ、探偵やっちゃうかって、ふっかが」
💚「相変わらず軽いね」
少年探偵団として、深澤達が小学生の頃に立ち上げたものだというのは知っていた。
その功績から特務調査局として切り替わったのが中学生の頃。阿部と岩本が加入したのがこの頃だ。
少年探偵団が渡辺の事件からだという話は知らなかったけれど、電脳空間で情報収集をしていると、どうしても知らなくていい事まで入ってきてしまう。
本人が話していない事を知ってしまった時、それでも阿部は口にはしない。
それは本来、自分が知ってはならないものだから。
💚「でも違ったんだったら、今回も翔太が狙いっていうことはないんじゃないかな。多分、今、命の霊薬を探してる人物とその時の犯人は同じだよ」
💙「……なんでそう思うの?」
💚「この間の服部さんの事件、組織ぐるみかもしれないって話したでしょ。命の霊薬についても言ってたみたいだし……でも、翔太が心配に思うなら対策しておこう。つけるなら、ふーちゃんの方がいいかな」
💙「つけるって?」
💚「万が一の時に備えて、翔太を守ってくれた方がいいかなって。佐久間とふーちゃん、どっちがいい?」
💙「ふーちゃんで。うるさいんだよ、あいつ。ずっと佐久間がいるのは耐えらんねえ」
💚「だよね。俺もそう思う」
いつでも元気で全力で、底なしに明るくておしゃべりな佐久間。
SnowManのムードメーカーで、その明るさと元気さに救われていることも多いけれど、それが四六時中となれば勘弁願いたいものだ。
💚「あとでふっかに話しておこうか」
💙「……阿部ちゃんの負担にならない?」
💚「大丈夫だよ」
ニコッと笑って答えると、ならいいんだけど、とすぐに引いてくれた。
💚「それじゃ、調べに行ってくるね」
💙「阿部ちゃん、無理しないで」
返事の代わりに頷いてから、阿部は電脳空間へと入っていった。
応接間に残った深澤たちは、命の霊薬についての情報を集めている。
💛「ふっか、どう? あった?」
💜「んー……めぼしいものは出てこないね」
🖤「阿部ちゃんも、大した情報はないって言ってましたもんね」
❤️「ネットで調べるには無理がある、か」
それぞれスマホやノートパソコンを使って調べているけれど、出てくる情報は「命の霊薬って知ってる?」「異能力に関係するらしい」「霊薬飲んだら血が流れなくなったんだって」などという不確かなものばかり。
噂が噂を呼んでいるようなもの。
💜「あ、これは?」
そんな中、深澤が一つのSNSの投稿文を見せ、皆が深澤のタブレットを覗き込む。
💜「なんか最近、命の霊薬って噂あるじゃん? それ俺が作れる!ってウソの投稿した友達、その日から音信不通なんだけど……こわ……だって」
❤️「いつの投稿?」
💜「二日前かな。で、その友達っぽい人の投稿も見つけたよ。それより三日前に、確かに《命の霊薬、作れるんだよね、俺》って投稿してから何も更新されてないね」
🖤「それって、黒い影に追いかけられるようになったのと同じ日じゃないっすか?」
岩本が棚から事件ファイルを取り出して中を見る。
💛「確かに。同じ日だ」
🖤「この音信不通になった人の投稿、写真に木が映ってますね。俺、調べてきます」
💜「舘さんと照も一緒に行ってもらっていい? こないだの件もあるし、何かあったら怖いから」
💛「わかった」
❤️「了解」
さすが、すぐに動いてくれるのは助かる。
だがしかし、問題が一つ。
💜「この写真、どこのか分かんなくない?」
❤️「確かに、情報が少なすぎるね」
💛「阿部に聞いてみるか」
岩本がスマホを取り出して、通常の番号ではない番号を押していく。
これは、阿部が電脳空間にいる時に専用で繋がるものだ。一日に一度だけ、こちらからコンタクトを取る事ができる。
数秒待っていると。
💚『どうしたの?』
💜「阿部ちゃん、ごめん。ちょっと調べてほしいものがあって。俺のスマホに接続できる? そこに映ってる写真の場所が知りたいんだ」
💚『ちょっと待ってね……おっけ。霊薬を作れる、ね……なるほど。分かったらこっちから連絡するから、もう少し待ってて』
そう言うなり通信が切れた事で、阿部が調査に入った事を知り、岩本がスマホをポケットに戻した。
🖤「さすが阿部ちゃん。何も説明してないのに、全部わかっちゃうんだ」
💜「観察力も理解力も俺らとは桁違いだからねー。ホント、阿部ちゃんには頭上がらないわ」
🖤「ふっかさん。一時間くらいで阿部ちゃんのこと止めて下さいね。ほっといたら夜通し頑張っちゃうから」
💜「言われなくても、わーってるよ」
❤️「阿部の異能はエネルギーの消費量が多いからね。カロリーも消費するからどんどん瘦せてくし……ひと段落したら、高カロリーで栄養たっぷりのおやつ作らないと」
🖤「阿部ちゃん、舘さんのおやつ好きだから喜びますね」
何を作ろうかなと頭の中でレシピを探し始めた宮舘。
元々小食で量を食べない阿部は痩せているのだが、こうして依頼などで電脳空間に行く頻度が上がると更に急激に痩せてしまう。
通常で53キロしかないのに、目に見えて痩せてしまった時は46キロしかなかった。これはさすがにマズいと、みんなで試行錯誤をしてどうにか食べさせたものだ。
それからは、阿部が電脳空間から帰ってくる度に食べさせたり飲ませたりするようになった。
宮舘がいない時は、阿部が大好きなこしあんミルクを用意するようにしていて、それはメンバー全員が淹れられるようになっている。
そんな話をしていると、深澤のスマホに着信が入った。
💚『見つかったよ。場所はスマホに地図を表示しておくね。ふっかのスマホでいいの?』
💜「あ、できればめめの方にもお願い」
💚『ん、わかった』
通信が切れると、深澤と目黒のスマホに同時に地図が表示される。
ここに行けば、何かしらの情報が得られるかもしれない。
🖤「じゃあ、行ってきます」
💜「頼んだよ」