まただ。僕はまた夏休みが始まってしまった。
「皐月!明日から夏休みだけどどこか行きたいところはある?」
結月だ。先程までの狂気じみた表情と打って変わって、可愛らしく元気な顔だ。
「あ、う、ん。そうだね、」
「もお!そうだねだけじゃ分かんないよお!」
「ご、ごめん。ちゃんと決めよっか!」
さて、マジでどうしようか、どうやったら前の状況を抜け出すことができるんだりうか。ていうか、そもそもあの日、結月を家に帰らしたことが原因じゃないのか?ならやることは一つだ。
「結月。明日から家で過ごす予定だったじゃん?」
「うん。そうだけどもしかしてなにか問題があった?」
「いや、違うんだ。もう今日の帰りにそのままうちに来ない?」
「え?それはすごい嬉しいんだけど、生活するためのものがないんでけどどうすればいいの?」
「お父さんは家に帰って来るの何時くらい?」
「7時くらいだけど、」
「ならそれまでに荷物をまとめてうちにいこう?」
「いいの?」
「もちろん!ぼくがさそってるんだし、」
「そうだね、じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな!」
そして僕達は、学校が終わった瞬間急いで結月の家に向かい荷物をまとめたあと、僕の家に向かった。
「おじゃましまーす!」
「親はいないからゆっくりしていってね!」
なんだかこの前も見た風景だな、
幸いにも、結月の家から僕の家は離れているから、結月の父親にばったり遭遇することもないだろう。
「てか、もうこんな時間じゃん!どうする?先にお風呂に入ってくる?それともご飯ができるの待つ?」
「えー、どうしよ、じゃあ先にお風呂いただいちゃおうかな、」
「どーぞー!」
流石に結月が使ったお湯に浸かるのは紳士的にもどうかと思うので、風呂の湯は使わずシャワーですまそう。
そんなことを思いながら、僕はご飯の支度をしていた。すると、
「皐月ー!ごめん着替え持って来るの忘れたんだけど、どうすればいい?」
そんなことを言われどうしようかと悩んでいると、
「私的には、皐月の服を借りたいなあ、、だめ?」
そんなふうに言われて断れる男子はいるのだろうか、僕はもちろん貸したさ。そんなくだらないことを考えつつ、着替えを持ていくと、
「ありがとー!」
すっぽんぽんの結月がいた。
「ちょ!ちょっと!なんで裸なのさ!」
「なんでって、ていうかそんな恥ずかしがること?私達付き合ってるんだよ?」
「そうだけど!」
「いいから早くその服かして!」
そういわれ、強引に抜き取られたときに、つい手をどけてしまった。その時に目に入ってきたのは、最初のときよりはマシだが痣だらけの体だった。これを見ると、親を殺したくなるのも納得できる。
「ふう!てか、皐月の服でかくない?」
深刻なことを考えている僕とは裏腹に、結月は明るい表情で言ってきた。
「そりゃ僕のほうが身長高いもん。」
「わ、くそお、ちょっと腹立つう、、、」
しかしそんな結月の姿を見ていると、こっちも楽しくなってくる。
「さて、じゃあ僕もお風呂に入ってこようかな、」
「あ!皐月!」
「ん?」
「私が浸かったお湯、飲んじゃだめだよ?w」
「飲まないよ!!!!」
僕が顔を真っ赤にしてそう言うと、冗談冗談と言われ爆笑された。
そうして僕はシャワーを浴び、ご飯を食べたあと、結月とゲームをしていた。
「そろそろ寝ないとじゃない?」
僕はそう言い、結月の部屋に案内しようとしたとき、結月が、
「ちょっとまって、今日は皐月の部屋で寝たい。」
「え、けどベッド一つしかないよ?」
「いいから、早く皐月の部屋に行こ。」
そうしてなかば強引に僕の部屋で寝ることになった。
「電気消すよ?」
そう言って電気を消し、お互いに背を向けてベッドに寝転んだ。しかしもちろん寝れるはずもなく、ケータイを見ていると、
「皐月、まだ起きてる?」
鼻をすするような声でそう言ってきた。
「うん、まだ起きてるよ。」
「よかった。なら少し、話を聞いてくれないかな、」
「いいよ。」
そう言うと結月は体をこっちに向けてきた。
「私が親からDVを受けてるのは知ってるよね?」
「うん。」
「それで私さ、自分の家でも人の家でも、家っていう事実が怖くて、全然楽しめなかたんだ。」
「うん。」
「でも今日、皐月の家に来てからはなんだか楽しくて、ずっと気持ちが明るくて、皐月優しいし、ずっと居たいって思えたんだ。」
「うん。」
「こんな気持初めてでなんて言えばいいかわかんないんだけど、皐月がいなかったら私、多分もう死んじゃってる。」
「それはだめだよ、」
「うん、分かってる、けどそう言ってくれるのは皐月だけなんだよ?だから、皐月には捨てられたくないし、私は皐月を大事にしたい。皐月がそうしてくれるように。だからさ、一旦私の気持ちを聞いてくれない?」
「うん。」
「愛してる。この世の何よりも。皐月がいれば何もいらない。それから、こんな私を好きになってくれてありがとう!」
そう泣きながら言ってくる結月はどこか嬉しげだけど悲しさがにじみ出ていた。そんな結月を見て僕は、何も言えず、抱きしめることしかできなかった。ずっと抱きしめていると、さっきまで鼻をすすっていた音がだんだん寝息に変わっていて、安心した表情で結月は眠っていた。そんな結月の表情を見て僕も安心し、気づかないうちに結月を抱きしめたまま眠ってしまった。
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