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「……お世話?」
「はい!私はグリード城から来ました、これから何も知らないあなたと一緒に行動させて頂きます」
なるほど……城で習った事は必要最低限だけだと思ったが、こうやって実際にこの世界の人が教えてくれるのか……出来ればもう少し早く来れば迷わずに済んだのに……
「……了解」
「やけに即答ですね……あ、あの自分で言っててなんですが疑わないんですか?」
「……別に?疑って欲しいのか?」
「そうじゃなくてですね!あなたはいつもそうやって……」
「……いつも?」
「あ__いつもそうやって……疑わず来たのですか?」
「……そういう訳じゃない、もしも敵だったとしたら終わりだなって思ってるだけだ」
「つまり、死を受け入れる、ということですね?」
「……そこまで言ってない」
「もう!とりあえず私は味方なので大丈夫ですけど今度から用心してください?」
「……子供なのにしっかりしてる」
「んな!?」
「……?」
「私はこれでも18歳の大人です!!!!馬鹿にしないでください!!!」
「……!?」
こんなちんちくりんが18歳!?
「今また失礼なこと思いましたね?!」
「……い、いや」
「とにかく、色々とよろしくお願いしますね」
「……勝手にしてていい」
「では、そうします!」
自信満々に言っていたがぐぅ〜とユキの方から音が聞こえてきた。
「….…」
「はぅっ……」
先ほどまでより一層と顔を赤くして下を向き恥ずかしそうにしながら言ってきた。
「つ、つかぬ事お聞きしますが何か今日食べましたか?」
「……食べてない」
ユキはそれを聞きふわぁっと顔色が良くなって
「だろうと思いました!私が作ります!もう真夜中ですからね」
そう言いキッチンの方までとてとてと走っていき生肉しか入ってない冷蔵庫を開けるが__
「ふわわわ〜!見てください!【グレゴリ】のお肉ですよ!高級肉!」
何の肉かすぐに解ったみたいだ……冷蔵庫から肉の塊のお皿を持って此方を向いたユキの口にはヨダレが垂れていた。
……どんだけ腹が減ってたんだ。
「……高級なのか?」
「グレゴリは内臓に毒を持ってる魔物なんです、しかも死ぬ時にその毒が身体に回って食べれなくなるんです、なので特殊な狩り方をしないと行けません!だからそう言う人の手が加わってる分、お値段が高いんですよ」
「……魔法で毒を抜かないの?」
「今、この時代の魔法技術では無理ですね」
フグみたいなもんか?
「とりあえず任せてください!えーっとこれに合うのはこれとこれと……後はアレを……んーーー!……そぉりゃぁー!」
ユキが背伸びをしてぴょんぴょんとキッチンの上の棚にある調味料を取ろうと頑張っている……あ……。
「……」
「あ!取っていただきありがとうございます!ヒロユキさん!」
「……構わない」
…………服くらいすぐ買ってやろう……パンツすら履いてないのかこの娘は……
「フフッ、知ってますか?お肉料理は何より火加減が大事なんです、ここのは設置された魔方陣なんで火はおおざっぱですけど、私の得意な魔法は火を使う魔法なので」
「……終わったら教えて」
話が長そうだ。
「む、まぁいいですけど……すっごいの作るのでそこら辺で寝ててください」
「……わかった」
ソファに寝転がってユキの方をチラリと見る。
「【グレゴリ】のお肉は柔らかいけど筋がある、食べやすくするには確か包丁をナナメに2センチずつ……」
真剣な表情でブツブツと言いながら料理の下準備をしているな……
ジュゥ!と肉の焼ける音がする、本格的に料理に入ったのだろう。
段々と肉が焼けてくる良い匂いが漂う……そういえば兄さんが「面倒な時はスーパーの肉を焼くだけ焼いて焼肉のタレで頂きながら酒を飲むのが至高」とか言ってたな……
「……兄さん……」
今頃、元の世界でどうしてるのだろう。
自分の最後がどうしても思い出せないが、もしも死んだとして此方に召喚されたならお葬式を開いてる頃か……ごめん、兄さん、母さん、父さん。
またヤケ酒を兄さんいっぱい飲みそうだな。
「……」
あまり考えない様にしよう、兄さんもこう言っていた。
「……“過去は変えれないんだから変えれる未来で全力で立ち向かえ”か……」
あぁ、やっぱり兄さんは兄さんだ、思い出すだけでも支えてくれる。
「……」
________
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__
「ヒロユキさん!出来ましたよ!」
「……おぉ」
「どうです!ヒロユキさん!」
「……すごい」
机の上には大きな鉄板の上にドンッと先程のお肉がジュゥジュゥと音をたてて肉汁を垂らしながら置かれている、縦30センチ程の肉塊を豪快に焼いたその料理は圧巻だ。
「ささ!座ってください!食べましょ」
「……あれ?」
「どうしました?」
「……これ」
2人の前にはスプーンしか置かれていなかった、普通はナイフとフォークだが。
「フフン♪いいんです、ではいただきます」
「……いただきます」
「……」
いただきますと言ったが対面からユキは食べていなくて俺を見ている……早く食べろといいたげだ。
「……」
俺はスプーンでお肉を切ろうと少し力を入れると
「……うそ」
力を入れすぎたと言うくらいスーッとお肉がめくれて肉汁を垂らす。
アイスカップのアイスより柔らかい、しかも中までよく火が通ってる。
「どうです!これが完璧に調理されたグレゴリのお肉です!もう私も我慢できません!てりゃ!あーん……はふはふ」
ユキは同じようにスプーンで口に頬張り。
「ふにゃぁ……幸せです」
幸せそうにとろけてた。
「……はむ」
俺もスプーンの肉を口の中に入れ噛んだ瞬間。
「……!」
口の中で肉汁が溢れだし頬に染み込む。
舌でお肉を転がすと舌の上で踊りしっかりと味付けされた味が広がる……すぐに飲み込んでしまった。
「……うまい」
「フフン♪これがお母さんから習った料理です、私の目標はお母さんに負けないくらい美味しい料理を作る事なんですよ」
ものすごいどや顔で此方に言ってくるが今まで麻痺していた食欲が一気に来ていてそれどころじゃ無く、次々と俺はお肉をスプーンで食べていく。
「~♪♪」
ユキは嬉しそうに俺を見ていた……。
__________
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____
《深夜》
「…………」
ソファで寝ていたユキは外に気配を感じて起きる。
「狙いは私たちじゃ無いかも知れませんが気付いた以上ほっとけませんね」
ヒロユキを起こさないようにプールのある外に出て最上階から飛び降りる。
「そりゃ」
着地の瞬間杖を振ってふわっと着地する。
「へぇ、これはまた面白いねぇ、空から子供が降って来るとは」
「……」
ユキの前には目がつり上がって気が強そうなのが特徴のセミロング髪の女が片手ナイフを構えて居た。
「アンタ、只者じゃないねぇ」
「へぇ、ある程度解る人ですね、なら私との力の差も分かりますよね?」
「確かに私1人ならダメだったかもねぇ」
女の後方の暗闇から4本ほど矢が飛んでくるがユキの3メートル先で燃え尽きて無くなった。
「__っ!?」
「無駄ですよ、アナタのすぐ後ろで10人、そしてまだ奥の建物の屋根に10人……私には解っています」
「へぇ〜……やるわねぇ、で、私達の邪魔をしようって言うの?」
「目的はなんですか?それによって変わります」
「ちょうど、この町に来て何も分かってない馬鹿な子をこの宿に誘い込んだのよ、ここの宿は警備がスカスカだからねぇ」
「そうですか♪それなら話が早いですね」
「そうねぇ、話が早そうねぇ」
ユキは杖をリーダー女に向け、リーダー女はユキにナイフを向ける。
静かな夜に肌を突き刺す様な殺気を放つ2人。
「どうやらお知り合いだったみたいねぇ?妹かねぇ?」
「フフッ、妹ではないですがある意味家族みたいな物です」
「?、意味がわからないねぇ?」
「……….私って炎魔法……得意なんですよね」
ユキがそう言って杖から魔法陣を展開させると
「__っ!?」
リーダー女の後ろから次々と炎が上がった。
「ぎゃぁぁぁあ!あちぃ!あちぃよぉ!」
「何だこれ!どうなってんだぁぁぁあが……」
「姉さん!たすけ……ぎゃぁぁ!」
その炎の正体は後ろから矢を放った女の部下達が燃えている炎だ。
「お料理してあげますよ」
「ちっ!全員容赦しなくていい!いきな!」
号令と共に暗闇から風魔法で素早さをあげた残りの部下達がユキに襲い掛かろうとするが__
「単純な動きですね、ほい!」
ユキは1番最初にナイフで刺そうとしてきた下っぱの攻撃をくるりと避けてその人を土台にして上に飛び上がり。
「【風圧剛力】」
「ぐぁ!」
「ぎゃっ!」
「ぐっ!」
風魔法を放った。
上から攻撃をくらった者達は重い物を落とされた様に地面に倒れ気を失う。
「っと……おっと!」
着地した瞬間、細い圧縮された水がユキを狙って飛んできたので横に飛び片手でハンドスプリングをして避けた。
「そんな位置は狙撃とは言いません……精々、中距離攻撃です」
離れた所で先程と同じ炎が発生する。
どうしたかは解らないがユキが狙撃手を焼いたのだ。
「さて、ここまでして解りましたか?私とアナタ達の力の差が」
まだ余裕という表情を浮かべながら杖をリーダーに向ける。
「…………これは降参ねぇ、逃がしてくれるかしら?」
リーダー女のニヤリとした笑顔は引き攣り汗が垂れる。
予想外の力の差だったのだろう。
「良いですよ?私もそちらに大損害を与えれましたし」
「ちっ……あぁそうだね、大大大大損害だよ、今は感謝しとくわねぇ、お前ら撤退だよ!」
彼女達はユキに背を向けて夜の闇に消えていった………
………
………
「周りに気配は……ありませんね」
夜の月明かりがユキを照らす。
「これくらい気付けるようにならなきゃこの先やっていけませんよ?ヒロユキさん」
別に誰が聞いてるわけでもなくユキは独り言を呟いて部屋に戻るのであった。