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そのまま黒尾達は部活を迎えることになった。
正直言って黒尾は全く回復などしていなかったが。顔はもはや青白くなっている。手は少し震えており限界が来ている。
部員もみな心配そうな目で見ているが、黒尾は知らん顔だ。いや、それに気づかないほど体調が悪く視野が狭まっているのかもしれないが。
「うし!始めんぞ。」
それでも黒尾は心配かけまいといつもの胡散臭いような笑みを貼り付けた。
「無理だけはしないで」
そう研磨は黒尾へ声を掛けた。人に弱っているところを見せるのを嫌がる黒尾を気遣ってか他の人には聞こえないようボソッと。後輩に弱っているところをなるべく見せたくなかったからありがたい。
事情を知っている部員(3年や研磨以外は霊が視えることしか知らないが)はやや心配そうな顔を浮かべている。まあそれも当然と言えるだろう。内心、今にも倒れそうなくらいに悪化している。それでも俺は諦めない 。あと、正直こいつらと居ないと憑いているやつに一瞬にして意識を持っていかれそうになる。
監督やコーチも事情は知っているため、様子をみている。
しかし意地を張っている黒尾を見ているうちに諦めたらしい。目で黒尾をみる。
黒尾自身かなりきている。だが自分に鞭を打つように頬を叩いて気合いを入れた。
「集合!」
そう黒尾が声をかければみんながコーチ達の周りへ集まる。
猫又監督は少し話をした後、不意に体育館の入口へ視線を向けた。
「今日はかなりレアだが、新しくマネージャーを入れることになった。」
マネージャー?
部員みなが首を傾げている。
「さっき来たばっかだから恐らくクラスでの紹介はやってないな。」
この時期にマネージャーとは珍しいな。しかし今ままで音駒はマネージャーがいなかった。それが突然入部となるとなにか理由があるのでは無いか?
などと黒尾が考えているうちに猫又監督は控えているであろうマネージャーに声をかける。
「よし。入ってきていいぞ。」
ガラガラガラ
扉が開いて中から人が出てくる。
出てきたのは猫背気味な女子である。背中を伸ばせば 170cmあるのでは無いか?女子にしては高身長なようだ。
華奢な感じではなくスタイルは良さそうだがヒョロりとはしておらず適度に筋肉がついている。
顔には女子高生が付けているには不似合いな傷があった。目の少ししたの目と鼻の間くらいに、横一文字に切り裂かれた大きな傷だ。見るからに古傷だが、今でもくっきりと残っているほどには深いものだったんだと伺える。
三白眼な目を気だるそうに開いておりその口にはチュッパチャプスのような棒付きの飴がくわえられている。(恐らく校則違反)
少しタバコを吸うときの仕草に似ている。
少し癖のある黒髪は前髪は目に所々かかるくらいには伸びており、サイドの髪は肩より少ししたくらいで切られている。後ろはかなり短く襟足は刈り上げになっている。
間違えるはずがない。
なんで、
黒尾と研磨は小さい頃しか会っていなかったとしても直ぐに気がついた。
黒尾も研磨もいつものポーカーフェイスは崩れ落ちその目は大きく開かれている。
マジか。奇跡が起きた。
あれ?
視界が酷く歪んでいる。目に手を当てると水のようなもの。
ああ。俺泣いてんのか。
マネージャーが体育館に5歩程歩いてきた時、2人は一斉に走り出した。さっきまで目を開いていたのに。他の部員も驚いている。
でも、周りの目を気にしている場合でない。だって俺はいや、俺らはやっと探し求めている人物に出会えたのだ。
言いたいことは大量にある。でも今は会うことの出来た感傷に浸らせて欲しい。何年も待ったんだ。もう会うことは出来ないのかもしれないと諦めようしたときもあった。でもその度に研磨と一緒に己を奮い立たせて信じて来た。
こんなに我慢したんだから、ちょっとくらいいいだろ!
今は3人で抱き合いたい。
今日はクロは一段と具合が悪そうだった。それは当たり前だと思う。だってなかなかに負の感情が強い、体が危険信号を出し始めるくらいのやつに取り憑かれ掛けているんだ。
クロはなんとか意識を保てて居るけどそのおかげか、夜もあんまり寝れてないみたいだし。その証拠にクロの部屋は明かりがついている時間が長くなったし、いつも俺を起こしにくるところを学校に行くギリギリの時間に来ていて本格的にやばいと感じた。
憑かれやすいと一概に言っても俺とクロはちょっと違う。
クロの場合は、クロの霊気と居心地が良くて憑かれやすい体質なのだと零が言っていた。普段は猫とかの霊獣と呼ばれる成仏していない死んだ動物とかがクロに集まる。でも動物達は悪意は全く無いし、クロに擦り寄って少したったら成仏して行ってしまう。
そのくらい霊に好かれやすいんだ。
あと人柄もあるらしい。確かに世話焼きで責任感も並より強いと思うクロは典型的なお人好しでお節介だ。でも根本的な性格がそうなのだから口の出しようがない。
話が擦れたね。つまり、そういう性格をしているおかげでクロはタチの悪い例にも好かれやすいってわけ。
午後の授業も終わってクロと一緒に体育館に向かおうと思ってクロに声をかける。
「クロ。体育館行こ?」
でも、返事がない。まずいかもしれない。俺は急いでクロに駆け寄りもう一度名前を呼んだ。
「クロ!俺だよ研磨。」
そう声をかけると目が正気に戻って一言わりぃと言った。別に謝って欲しいわけじゃないのに。
そのままゆっくり体育館へ向かいアップを始める。
その後もなんとかやり終え集合がかかる。
ふいに監督がマネージャーを入れると言った。マネージャー?
今まで音駒にはそういう存在はいなかった。だからちょっと不安だ。虎みたいに女子と話せないわけじゃないけど、初対面の人と話すのは苦手だし。
そう思っていたらマネージャーが入ってきた。
「え」
自分の口から情けない程にか細い声が出た。だって仕方ないじゃん。
ずっとずっと探していたもう一人の幼なじみが来たんだ。
気づけば目からは涙がとめどなく溢れていた。虎なんか俺を見てギョッとしてるけどそんなのに構ってられない。
零がこっちを見て少し口角を上げたとき、俺とクロは飛び出した。