「アイス食いてぇ!!」
タオルで頭をガシガシ拭きながらリビングのドアを勢い良く開け叫んだ。
「アイスー?こんな時期に無いよ、明日買えば?」
「今すぐ食いてぇ!この風呂上がりの暑い時に!」
「はいはい、分かったから早く髪乾かして来い。」
「なんだよつめてーなー。」
軽くあしらわれてしまい口をへの字にしながら洗面所に戻った。しかしもうこの欲望は誰にも止められない、今すぐにアイスを食べなければ。寛いでいる青井をよそに上着を羽織った。
「じゃーなー。」
「はーい。……え、じゃーな!?」
少し眠くなってきていたのとあまりにも自然すぎたので言葉を理解するのに間が空いた。ソファから転げ落ちてつぼ浦を追いかけると玄関のドアに手を掛けている所だ。
「待ったストップ!!どこ行くの!?」
「コンビニだけど。」
「待て待て一人で行くな、俺も行くから。」
「心配しなくてもアオセンの分も買ってくるぜ?」
「そういう問題じゃない、こんな夜中に一人で出歩いて何かあったらどうすんだよ。」
「出た過保護、親かって。」
「過保護で結構でーす、なんとでも言え。それで寒くない?」
外に出て歩き始めると静寂の中2人の足音と話し声だけが響いていた。つぼ浦は両手をポケットにつっこんで敢えて雪が積もっている所を進んで歩く。
「さーむ…滑って転ぶなよー。」
「俺がそんな鈍臭い真似するかよっと。…おわっと!?…ふー、セーフ。」
「あっぶな、フラグ回収早すぎんだってwはぁー…お、見て。息白い。」
「はぁーー…冬っぽいな、さみぃ。」
歩きながらどちらがより大きな白い息を吐けるか勝負していたらいつの間にか到着していた。
「こんな寒いのにまだアイス食べたいの?」
「当たり前だろ、どれにすっかなー。」
楽しそうに、真剣に選んでいるつぼ浦を見て思わず顔が綻ぶ。買う物あったっけ、と店内を1周して戻って来てもまだ悩んでいた。
「んーどっちにするか…アオセンはどっちが好きすか?」
「その2つだったらこっち、両方買って半分こするか。」
「よっしゃあざす!あとは…あ、スケボー歪みで消えたんだった。」
「はいよー、じゃあこれで良い?」
「うす!帰ろーぜ!」
帰り道も鼻歌を歌いながらポケットに手をつっこみ雪の上を歩くつぼ浦。青井は近付いてつぼ浦のポケットの中に手を入れ、そのまま上から手を包み込む。
「ぉわっ…なんすか。」
「んー?さっき危なかったし、寒いから暖まってる。」
「…ガキじゃねーっての。」
顔を赤らめながらそっぽを向くがつぼ浦のほうから指を絡める。お互いの手がじんわり暖かくなっていった。
「また照れてる。はぁーほんっともう…お前はずっとそのままでいてくれ。」
「そのままってどのままだよ。アオセンは過保護過ぎるのをもうちょいなんとかしてくれ。」
「なんで?嫌だ?」
「嫌じゃねーけど、あんまり世話とか迷惑とかかけたくねぇから。」
「それが理由なら無理だな、俺はそう思ってないし。」
「…じゃあやっぱ嫌だ。」
「もう遅いわw俺の自己満足かもしれないけどこんぐらいはさせてくれ。」
「んーまぁしゃーねーなぁ。アオセンはワガママだからな。」
やれやれ、と言った雰囲気を醸し出しているが遠い星空を見上げながら絡めた手をギュッと握ってきた。その小さな、確かな意思表示を逃さないようにと握り返して反対の手で頭を撫でた。
コメント
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フゥ。最近の楽しみです。見てるとほんとに心がポカポカします。