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「……んん……」
萌香はぼんやりと目を開けた。体育館の天井がぼやけて見える。周りからは、まだ眠っているいさなやみりんの寝息が聞こえてきた。
「あれ、もう朝……?」
枕元のスマホを手に取り、時間を確認する。5:55 AM。まだ起床時間の6時には少し早い。
「……あと5分寝よ……」
そう思って目を閉じかけたその時——体育館の端からカサッ…カサッ…という小さな物音が聞こえた。
「……ん?」
萌香はそっと体を起こして、音のする方を見つめる。体育館の隅にある荷物置き場の方で、何かが動いた気がした。
「えっ、なに……?」
不安そうに布団を抜け出し、そっと足音を忍ばせて近づく。体育館の薄暗い照明が、荷物の影をぼんやりと照らしている。
「誰かいるの……?」
萌香が恐る恐る声をかけると、突然——ガサッ!!
「ひゃっ!!!」
萌香は思わず飛び上がる。その瞬間、荷物の影から先生がひょっこりと顔を出した。
「おはよう、萌香ちゃん。早起きだねぇ〜!」
「先生ぃ!? なんでこんなとこにいるの!?」
萌香は心臓を押さえて、半ば叫ぶように言った。
「いやいや、ちょっとね〜。みんなの朝ごはん用のパンを隠しておいたんだけど、どこにしまったか忘れちゃってさ〜。」
「……早朝から何してんですか……」
呆れ顔の萌香に、先生は軽く笑って手を振る。
「まぁまぁ、もう朝だし起きちゃいなよ。ほら、布団に戻ると二度寝しちゃうよ?」
「先生が見つかるのが先ですよ!」
二人のやりとりに気づいたのか、体育館の奥からいさなの寝ぼけ声が聞こえてきた。
「……うるさい……あと5分寝かせて……」
みりんももぞもぞと動きながら、ぼそっとつぶやく。
「萌香、先生、朝から何やってんのさぁ……」
萌香はため息をつきながら、眠そうな二人を見つめた。
「もう……今日も地獄の補習合宿が始まるよ……」
その言葉に、いさなとみりんが「うぅ……」と苦しげに声を漏らす。体育館には、また少し静かな時間が流れた——が、先生はまだ荷物をガサゴソ探し続けていた。