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│ 第3章 見つからないもの │
翌朝、宿泊施設の食堂は妙に静かだった。
「……ニュース、なってるな」
曽野がスマホを見ながら言う。
「“山中の洋館で男性が意識不明”って」
塩﨑が続ける。
「場所も、ほぼ特定されとる」
「俺らの名前は?」
佐野が聞く。
「まだ出てない」
吉田が答えた。
「けど、時間の問題だと思う」
誰もそれ以上言葉を続けなかった。
午前中、警察から再度連絡が入った。
《現場確認をしたいので、もう一度、館に来てほしいそうです。》
そう伝えたのは、昨日残っていた女性スタッフだった。
「俺ら全員?」
塩﨑が聞く
《はい。全員です》
館に入ると、昨日とは違う空気があった。
ロープが張られ、立ち入り禁止の札。
「事件扱い、ほぼ確定やな」
曽野が小さく言う。
警察官が五人をロビーに集めた。
《昨日、倒れていた男性ですが… 病院で亡くなりました。》
一瞬、空気が止まった。
「……おい、まじかよ、、」
佐野が声を落とす。
《死因は、頭部外傷。事故の可能性もありますが――》
警察官は言葉を切った。
《館の中で、一つ“見つからない物”があります》
「何ですか?」
吉田が聞く。
《館の管理室にあった鍵です》
「鍵?」
佐野が眉をひそめる。
《この館、部屋ごとに鍵が違うタイプでして、 管理室の鍵がないと一部の部屋は開けられません。》
警察官は、五人の顔を順に見た。
《昨日、管理室の前を通った人は?》
沈黙した。
やがて、 佐野が口を開いた。
「……俺と仁人です」
吉田が、一瞬だけ佐野を見る。
「二階に行く途中、管理室の前を通った…」
《中は見ましたか?》
警察官が続けて聞く。
「扉は閉まってた、」
佐野は答えた。
「鍵がかかってる感じだった」
《触りました?》
「……少しだけ」
その瞬間、空気が変わった。
聞き取りのあと吉田が声をかけた。
「勇斗」
「……何?」
「昨日、その話、してなかったよね」
「覚えてなかっただけだよ」
佐野はそう言った。
「重要だと思わなかった」
「でも、警察は重要視する」
「わかってる」
塩﨑と曽野は、少し離れたところで話していた。
「勇ちゃん、怪しいと思う?」
曽野が聞く。
「まだ分からん」
塩﨑は首を振る。
「せやけど、“鍵”はでかい」
その二人の会話を山中は聞いていなかった。
一人階段の方を見ていた。
その夜、五人は再び宿泊施設に戻った。
「……犯人、俺らの中におるんかな」
曽野が冗談めかして言う。
誰も笑わなかった。
「違うと思う」
山中が言った。
「理由は?」
佐野が聞く。
「もし内部犯なら…もっと雑になる」
「雑?」
吉田が聞き返した。
「うん。多分もっと、、焦りが出る」
山中はそう言って、それ以上説明しなかった。
部屋に戻ったあと、佐野は一人で考えていた。
管理室
鍵
自分は本当に、 触っただけなのか。
それとも――
何かを見落としているのか。
その時、ポケットの中で硬い感触がした。
取り出すと、見覚えのない小さな鍵。
「…… なんで、?」
その鍵が、どこから来たのか。
佐野は、思い出せなかった。
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