白 色 ピ エ ロ の こ ん て す と
s e v e n c o n t e s t
二次創作、連載
ミステリー
最初は大嫌いだった。
『無一郎っ!』
カラカラと楽器でも奏でているような澄んだ声も。
こちらを射抜くようにまっすぐとした、僕とお揃いの青みかかった丸い瞳も。
“生贄”という村の道具として扱われている立場も。
そんな立場に置かれているのにも関わらず、反抗一つせずニコニコとなんでも許してしまう、狂っているような優しい性格も。
全部、全部、全部、全部。
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「無一郎、蜜璃。よろしくね。」
「「御意」」
柱二人の長期任務。そう言い渡されたのは秋から冬に移り変わる合間の肌寒い季節だった。
板のように固く締まっている畳から体を離し、お館様に一度礼をして部屋を出る。
「頑張りましょうね、無一郎くん!」
桜の花びらを散り敷かせたような綺麗な桃色とどこか夏の葉を想像させる薄緑色の髪を三つの三つ編みに結った、自分よりも上背のある女性が柔らかい笑みを頬に浮かべながらそう言葉をかけてくれた。
名前は確か甘露寺さんだった気がする。ピヨピヨ言っていて桃色のひよこみたいな人。
「はい」
無邪気そうなニコニコ笑顔を浮かべ、明るい声色で言葉を綴っていく甘露寺さんとは反対に酷く淡々とした口調で言葉を返す。
僕の頭の中は長期任務についての内容でいっぱいだった。
期間は一ヶ月で場所は少し離れた小さな村。年頃の娘が夜になると次々に姿を消すらしい。
僕ら柱が動く1つ前に階級が乙の一般隊士を送ったが男女含めて全員消息不明、安否不明。十二鬼月の可能性があり、もしかしたら上弦の鬼かもしれない。
先ほどお館様から告げられた情報を忘れないようにと脳内に詰め込んでいく。どうせ日が跨いだらきっと忘れてしまうのだろけど。
「…あら、あれじゃないかしら?」
そんな考えに浸かっているとといつの間にか目的地に着いており、すぐ横を歩いていた甘露寺さんの細い指がどこかを指差した。
俯けていた視線を指の刺された方向へと移すと、小さな村の風景が視界を埋めた。天気の加減のせいか村全体の雰囲気には重い影がかかっており小さいこともプラスされ、酷く窮屈で陰気な村に見えた。木にくっ付いている木の実が太陽に反射され、まるで僕たちを威嚇しているかのように刺々しく光り輝く。
「…まずは村の中を見て回ってみましょうか。」
「そうね。私はあっち側を見てくるわ!」
村の中へと足を踏み入れ、糸のように細い道を二手に分かれて歩く。
まだ日が昇っている明るい時刻だというのに村にはひっそりと人影がなく、そのおかげで村の様子を隅から隅までゆっくりと調べられる。
そんな考えを横目に、僕はどこか薄気味悪さの滲んだ村の景色を見渡した。
甘露寺さんと別れてからしばらく時間が経った。
あまりの人気のなさにてっきり廃村になっているのだろうかと思ったが建物やちまちまと飾られている地蔵には結構な年季が入っており、村の中には僅かにだが人の気配がする。
そして、それと同時に下弦ほどの力を持っているであろう鬼の気配も。
間違いない、この村には鬼が居る。
一度甘露寺さんと合流して収穫をまとめようと来た道を振り返ったその瞬間。
「出ていけ!鬼だか何だが知らないが、そんな奴はこの村には居らん!」
突然、男の人の激しい怒りのこもった大声が鼓膜を震わせた。それに合わせて、ドンッという木材か何かを殴りつけるような重い衝撃音が続く。
「うるさい…」
途切れることのない硬く怒りを含んでいる男性の怒鳴り声という名の騒音に思わず眉を顰め、苛立ちに満ちた言葉が頭の中で渦を巻く。せっかく見つけた情報たちがその騒音に打ち消され段々と薄まっていき、またもや苛立ちか積る。
「お願いします、何か知っていることがあるなら教えて下さい!」
「だから何も知らねぇっつってんだろ、余所者は早く帰れ!」
声の聞こえた方を辿ると、甘露寺さんと一人の男性が言い争っていた。
男性は今にも殴りかかりそうな形相で甘露寺さんを怒鳴りつけ、威嚇するように家の壁を力一杯殴りつけていた。先ほどの衝撃音の原因はきっとこれなのだろう。
「この村には鬼の気配がするんです。貴方達の命に関わることなんですよ!」
「鬼は私たち人間を殺すんです。実際この村で何件か被害報告がありました」
甘露寺さんはそんな男性に怯むことなく言い返し、事の重大さを必死に訴える。
だがそのことは男性には伝わらないのか相変わらず声の調子を緩めることなく恫喝するように語気を荒げる。この調子じゃ甘露寺さんがいつ手を出されてもおかしくない。
間に入ろうと一歩踏み出したその瞬間、ふわりとその場の空気が揺れたような気がした。
僕でも甘露寺さんでもあの男性でもない、新たな人の気配。胸がズキンと動悸を打った。
『…何をしているの?』
この場に場違いなほど綺麗に澄んだ幼い子供の声がピタリと鼓膜に触れた。
声の聞こえた方へ視界を俯かせると、透明のようにものすごく澄み切っている波紋のように丸い青色の瞳の少女が淡々とした態度で僕たちを見上げていた。
続きます→♡1000
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