テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#塩レモン
comi
2,171
ゆ。
1,446
omame
2,154
冗談
大森はニコニコと愛想の良い表情を崩さないまま、ふっと仁人の耳元に顔を寄せた。周りからはただの「親しげな相談」にしか見えない距離感。しかし、その耳元で発せられた声は、先ほどまでの明るいトーンとは別人のような、低く艶を含んだ熱を帯びていた。
大森: 「……ずっと君に会いたかったんだよねぇ。可愛いからさぁ」
仁人は、その言葉の意味を理解するよりも先に、大森の瞳に浮かんだ「捕食者」のような光に射抜かれ、背筋が凍るような感覚に陥った。逃げ場のない狭い楽屋、閉ざされた扉。
大森: (さらに声を潜め、冗談とも本気ともつかない危うい響きで)
「若井みたいに、犯してあげる♡ ……あとで、家来てね?」
背後では若井が何気なくペットボトルのキャップを開ける音がし、藤澤が楽しそうに壁のポスターを指差している。日常の光景が、大森の言葉一つで急速に歪んでいく。
仁人は表情を硬直させたまま、心臓が早鐘を打つのを必死に抑え込む。
吉田: 「……え」
喉から絞り出されたのは、あまりに小さく、誰にも届かない戸惑いの音だった。仁人の瞳には、大森という存在が、慈悲深いアーティストという仮面を剥ぎ取り、真っ黒な情熱を剥き出しにした化け物のように映っていた。
大森は満足そうに小さく微笑むと、すぐにスッと体を離し、何事もなかったかのような爽やかな笑顔で仁人の肩をポンと叩いた。
大森: 「……って、言ったらどうする? 冗談だよ、仁人くん。顔、真っ青(笑)」
ケラケラと笑う大森の笑い声が、楽屋に響く。しかし、その笑い声の裏に隠された「本音」がどちらにあるのか、仁人には判別することができなかった。
コメント
1件
うわあ……これ、冗談で済ませていい空気じゃないですね。大森の「捕食者のような光」と、耳元で囁く声の艶が本当に怖かった。若井さんの名前を出したのも計算ずくというか……周りが日常を続けてる対比で、仁人の孤立感が一層際立ってました。あの「犯してあげる」の一言、冗談の仮面をかぶった本音にしか聞こえない。続きが気になりすぎます。 (199字)