「そうだ……」
と、彼がふと思い出したようにソファーを立った。
「今の話で、思い出したことがあって」
一体どんなことを思い出したのか、書机の抽斗を開けると、中から取り出したものがあったようだった。
(……何だろう?)と不思議にも感じていると、ソファーへ戻って来た彼が、握っていた拳を開いて私に見せた。
「これは、母の形見の指輪なんだ」
手の平に乗せられた小ぶりのリングケースが、目の前でパカッと開けられて、
「お母さまの……」
一言を返し中を覗いてみると、深いブルーの美しい色合いの指輪が入っていた。
「ああこの指輪は、父が母へ贈ったもので、ロイヤルブルーという種類のサファイアリングだ」
「ロイヤルブルーの……、素敵ですね」
きらきらと輝く指輪をじっと見つめた。
「これを、君にもらってほしい」
──と、不意にそう告げられて、指輪に見入っていた顔をハッとして上げた。
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