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第133話:豊穣の収穫祭。巨大スイカを運ぶヒグマと、恐怖のバイオテクノロジー言い訳
抜けるような十勝の青空に、入道雲がモクモクと湧き上がる盛夏。
神獣シロの『豊穣のオーラ』によって一晩でジャングルと化した限界集落の畑は、ついに歓喜の瞬間――『収穫祭』を迎えていた。
「よし。これより我が陣地の最大規模となる食糧調達任務、オペレーション・ハーベスト(収穫祭)を開始する!」
俺が首に巻いたOD色のタオルを締め直し、開始の号令をかけた瞬間だった。
『ミャウ(さあ、私のために美味しい野菜を集めなさいな)』
畑の特等席に置かれたパラソルの下で、シロが優雅に尻尾を揺らして合図を送る。
「キュゥン!」「コンッ!」
その声に呼応するように、黄金の毛並みを持つキツネ兄弟、コン吉とコン次郎が鬱蒼と生い茂るトウモロコシの森へと飛び込んでいった。
高さ三メートルを超える巨大なトウモロコシの茎に器用によじ登り、彼らは自分たちの体よりも大きな『黄金に光り輝くトウモロコシ』を、小さな前足で力いっぱいボキリと折り取っていく。
「わぁっ! コン吉くん、コン次郎くん、すごい! ナイスコンビネーションです!」
小春ちゃんが麦わら帽子を押さえながら、落ちてきた巨大トウモロコシをカゴへと回収していく。
皮を剥けば、中からは真珠と純金を掛け合わせたような、瑞々しく輝く大粒のコーンが顔を出した。
だが、驚くのはそれだけではない。
ズシンッ、ズシンッ……!
「グルォォォォッ!!(大将! 獲ったぜ!!)」
地響きと共にスイカ畑のツルの海から姿を現したのは、体長3メートルの巨大ヒグマだった。
その丸太のような両腕には、『成人男性が丸まって寝ているサイズ』の超巨大スイカが、まるでバランスボールのように抱え上げられている。
ヒグマは二足歩行でトコトコと器用に歩き、俺たちが広げたブルーシートの中央に、ドスゥン!と巨大スイカを誇らしげに鎮座させた。
ジンバルに固定されたiPhone miniのカメラが、この規格外すぎる農業風景を全世界へと生配信している。
同接数はすでに一千万人を突破し、チャット欄は熱狂の渦に巻き込まれていた。
『ヒグマが二足歩行で巨大スイカ運んできたwwww』
『キツネ兄弟のトウモロコシ収穫、手際がプロすぎるww』
『シロ様はパラソルの下で現場監督(完全な王者の風格)』
『こんな楽しそうでバグってる農作業、世界中探してもここだけだろ!』
画面を埋め尽くす歓声の中、今日も世界を裏から牛耳るVIPたちの財布の紐が木端微塵に弾け飛んだ。
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)=”Hahaha! The ultimate harvest! Master, I will buy that giant watermelon for 10 million yen! I want to break it with a sword!“(ハハハ! 究極の収穫だ! 主よ、その巨大スイカを1千万円で買おう! 剣でスイカ割りをしてみたい!)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)=”Foxes harvesting golden corn… This is an agricultural fairy tale! The best investment ever!“(キツネが黄金のトウモロコシを収穫する……これは農業のおとぎ話だ! 最高の投資だよ!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$5,000MeTubeギフト)=”Oh my God! I want to join this harvest festival! Bear, please carry me like that watermelon!“(なんてこと! 私もこの収穫祭に参加したいわ! クマさん、そのスイカみたいに私をお姫様抱っこして!)』
極彩色のスーパーチャットが滝のように降り注ぎ、限界集落の畑は世界一熱いフェス会場と化していた。
「よし。第一陣の収穫完了を確認した。これより、指揮官のエネルギー補給を開始する」
俺はブルーシートの端に折りたたみチェアを展開し、いつものタッパーを開けた。
中に入っているのは、完璧な水加減の『玄米』と、自家製の『大豆ミートのそぼろ煮』である。
目の前には、一口かじれば果汁が溢れ出すであろう巨大スイカと、茹でる前から甘い匂いを放つ黄金のトウモロコシの山がある。
だが俺は、それらには一切目もくれず、ストイックな無表情で大豆そぼろと玄米を咀嚼し始めた。
「……お兄さん。モフモフたちのおかげで最高級のファンタジー野菜が山ほど獲れた最高の収穫祭で、なんでブレずに玄米と大豆ミートかじれるんですか!?」
小春ちゃんが、巨大トウモロコシの皮を剥きながらジト目でツッコミを入れる。
俺は熱いほうじ茶で喉を潤し、涼しい顔で答えた。
「当然だ。戦場において、採れたての未知の食物にすぐ飛びつくのは素人のやることだ。まずは兵站の基本である『保存食(大豆ミート)』で己のカロリーを安定させ、作戦の指揮系統を維持するのが需品科の鉄則だからな」
「相変わらず可愛げのない胃袋ですね!! ちょっとは収穫の喜びに浸ってくださいよ!!」
小春ちゃんの呆れ声をBGMに、俺はカメラの前に向き直り、キリッとした真顔でいつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。シロの魔法によって一晩で規格外の巨大スイカや黄金のトウモロコシが育ち、動物たちが知能を持って農作業を手伝っていると思われているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『この圧倒的なファンタジー収穫祭の真っ只中で、まだ言い訳する気かww』
『主の限界言い訳タイム・チート収穫祭編ww』
『さあ、この成人男性サイズのスイカをどう論破するんだww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは魔法や奇跡などではありません。今回使用したのは、私が自衛隊の需品科時代に極秘ルートで入手した『極限環境サバイバル用の自衛隊基準・特殊高濃度肥料』です。そこに最新鋭の『細胞分裂加速型バイオテクノロジー』を掛け合わせた結果、一夜にして急成長を遂げただけです。そして動物たちは、スイカの糖度から発せられる微弱なアルコール臭に酔って、じゃれついているだけ。ええ、すべてはただの『最新の農業科学の賜物』と『野生動物の習性』が重なっただけですね」
「んなわけあるかあああ!!!」
小春ちゃんが、キツネたちがかじり終わって残った『棍棒のように硬くて太い巨大トウモロコシの芯』で、俺の後頭部に完璧なフルスイング・スマッシュを見舞った。
「アルコール臭に酔ったクマが二足歩行でスイカ運んでくるわけないでしょうが!! だいたい一夜でスイカが大人サイズに育つバイオテクノロジーのほうが、魔法よりよっぽどホラーで怖いですよ!! どう見たってシロちゃんの神がかったオーラが大地の時間を早めたんでしょうが!! 素直に『うちの猫は農業の神だ』って認めなさいよ!!」
『小春ちゃんのトウモロコシの芯フルスイング炸裂ww』
『自衛隊基準の特殊肥料(シロ様のお昼寝)』
『バイオテクノロジー(神獣のチートオーラ)』
『一夜で育つバイオテクノロジーのほうが怖い(ド正論ww)』
『適応力バグおじさん、ついにファンタジーを軍事技術とバイオハザードのせいにするww』
俺の理不尽極まりない軍事・科学的な限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレの物理(芯)ツッコミに、一千万人の視聴者たちは恐怖を忘れ去り、腹がよじれるほどの大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(まったく。騒がしい下僕たちね。早くスイカを割りなさいな)』
シロがパラソルの下で、神秘的な『オッドアイ』の瞳――左目のサファイアブルーと右目の琥珀色――を細めながら優雅に欠伸をすると、ヒグマは「グルォ!(スイカ割りだ!)」と嬉しそうに巨大な前足を振り上げ、キツネ兄弟もポンポンと跳ね回っている。
「……まぁ、理由はどうあれ。冬を越すための圧倒的な兵站(食糧)が確保されたなら、言うことはない」
俺は後頭部をさすりながら苦笑し、十勝の眩しい太陽の下、モフモフたちと小春ちゃんが笑い合う光景を見つめた。
限界集落に訪れた豊穣の夏。
VIPたちの規格外の支援と、神獣の奇跡、そしてどんな事態にもブレない『需品科の言い訳』によって、俺たちの聖域は今日も世界一バグっていて、世界一温かい大爆笑に包まれ続けるのだった。
ゆうき あきや
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#心理描写重視
コメント
1件
いやもう、冒頭からヒグマが二足歩行でスイカ運んできたシーンで吹きました(笑)。バイオテクノロジーで全部説明しようとする需品科の言い訳が毎回秀逸すぎる。小春ちゃんのトウモロコシの芯フルスイングもお見事。これだけバグった収穫祭なのに、なぜか心がほっこりするのは、モフモフたちの無邪気さと家族のような温かさがあるからですね。シロ様の現場監督っぷりも含めて、最高のエピソードでした!