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時 は 戦 時 中 。
誰 も が 、 夢 や 希 望 、 食 料 で す ら 諦 め て い た 時 代 。
男 性 の も の は 皆 、 お 国 の た め と 戦 場 へ 旅 た ち 、 自 ら の 尊 い 命 さ え も 南 の 海 へ と 散 る 。
そ ん な 時 、食 料 で 飢 え て い た 私 を 、 一 筋 の 光 が 優 し く 照 ら し て く れ た 。
「 大丈夫か? 」
『 え…だ、だれ…? 』
「 あ、すまん、びっくりしたよな。 」
「 俺、影山飛雄だ。 」
『 影山、さん… 』
「 おう、お前は? 」
『 私…は、宮浜、菫。 』
「 菫か、わかった。 」
『 …どうして、私なんかに声をかけてくださったのですか…? 』
「 どうしてって言われてもな… 」
「 …俺は、お国のために、いつかは死ぬ 」
「 それがいつかは分からないから、せめてもの…俺なりの、感謝、というか… 」
『 ふふっ、そうなんですね。 』
影 山 さ ん の あ ま り に も の 伝 え 方 の 不 器 用 さ に 思 わ ず 笑 っ て し ま っ た
そ ん な 私 を ま じ ま じ と 見 つ め て い る 影 山 さ ん 。
『 ど、どうしましたか? 』
「 お前、笑った顔可愛いな。 」
『 えっ…!? 』
お そ ら く 、 今 の 私 の 顔 は り ん ご の よ う に 真 っ 赤 に な っ て い る と 実 感 出 来 る ほ ど あ つ か っ た 。
『 そ、そんな、もったいないお言葉ありがとうございます!! 』
私 が そ う 言 う と 影 山 さ ん は 首 を 傾 げ て 見 つ め て く る 。
「 可愛いって、お前みたいなやつのこと言うんじゃないのか? 」
「 だから、もったいない言葉とか、言わなくていいんだぞ 」
影 山 さ ん の 純 粋 で 真 っ 直 ぐ な 嘘 偽 り の な い 言 葉 に 、 胸 を 打 た れ た よ う な 感 覚 に 陥 る 。
『 あ、ありがとうございます!! 』
そ こ か ら 影 山 さ ん と 私 は 、 段 々 と 挨 拶 や 他 愛 も な い 話 を す る 仲 に な っ た 。
『 影山さーんっ!! 』
「 お、菫。 」
『 こんにちは!! 』
「 おう。 」
『 今日、ご飯食べに行きませんか? 』
「 あぁ、いいぞ。 」
『 やった!!じゃあ、行きましょう!! 』
食 堂 に 着 く と 、 影 山 さ ん は 深 刻 そ う な 表 情 で 私 を 見 つ め る 。
『 どうしましたか?そんな顔をなさって。 』
「 俺、出撃命令が出されたんだ。 」
『 …え? 』
『 う、嘘ですよね!?嘘って言ってくださいよ!! 』
「 嘘じゃねぇ。 」
「 俺は、このお国のために死ぬんだ。 」
「 こんな幸せなことはないだろ? 」
『 そんな… 』
私 は 、 お 国 の た め と 言 う 影 山 さ ん の 顔 を 直 視 出 来 な か っ た 。
『 一緒に、逃げましょう…? 』
『 こんなことしてもなんのためにもならないんです!! 』
『 ただただ、人が死んでいくのを見たくないんです… 』
泣 き そ う に な る の を 堪 え な が ら 、 本 音 を 漏 ら す 。
そ ん な 私 を 見 て 、 少 し 驚 い た よ う な 顔 を し た 後 、 ゆ っ く り と 微 笑 む 。
「 逃げるなんてことは出来ない。 」
「 俺は、十分守ってもらった。 」
「 その役割がただ交代するだけだ。 」
「 なんの心配も要らないぞ。 」
影 山 さ ん の 言 葉 に 堪 え き れ な く な っ た 涙 が ポ ロ ポ ロ と 零 れ 出 す 。
途 端 、 影 山 さ ん の 表 情 が 柔 ら か く な り 、 手 が 伸 び て き た と 思 え ば 私 の 頭 に 乗 せ ら れ る 。
『 え… 』
「 大丈夫だ。俺は死なないんだぞ? 」
「 不死身だからな。 」
得 意 気 に 言 う 影 山 さ ん を 見 て 思 わ ず 笑 み が 浮 か ぶ 。
『 ふふっ、ですね。 』
そ の 笑 顔 を 見 て 安 心 し た の か 、 影 山 さ ん は 安 堵 の た め 息 を つ く 。
「 だからな、お前は安心してここにいろ。 」
「 絶対勝ってやるからな。 」
『 とっても心強いですね 』
「 あぁ、当たり前だろ? 」
「 お国のため、だからな。 」
そ う 言 い は に か む 影 山 さ ん の 顔 は 、 寂 し そ う に も 嬉 し そ う に も 見 え た 。
チ ク リ と 、 胸 の 奥 深 く ま で 見 え な い 矢 が 刺 さ る 。
あ ぁ 、 こ の 人 は 本 当 に 純 粋 で 、 強 い 。
そ う 、 思 っ た 。
数 日 後 、 影 山 さ ん を 見 送 り に 行 く 日 、 咄 嗟 に 影 山 さ ん の 服 を 掴 ん だ 。
条 件 反 射 と 言 う や つ だ ろ う 。
「 どうした、菫。 」
『 …行かないで。 』
咄 嗟 に 出 た 言 葉 だ っ た 。
「 大丈夫だって言ったろ? 」
ぽ ん ぽ ん と 優 し く 私 の 頭 を 撫 で て く れ る 。
と て も 、 大 き く て 暖 か い 。
私 の ふ た ま わ り ほ ど 大 き い 手。
そ の 温 も り は 私 を 安 心 さ せ る に は 十 分 で 、 不 十 分 な 気 が し た 。
「 あ、そうだ。 」
そ う 言 い な が ら 影 山 さ ん は ガ サ ゴ ソ と ポ ケ ッ ト か ら 何 か を 取 り だ し た 。
―――軍粮精(ぐんろうせい)
キ ャ ラ メ ル 。こ の 時 代 で は 、 身 近 で は 見 れ な い 、 高 価 な も の 。
『 え、軍粮精…? 』
「 あぁ、これ、菫に絶対渡そうと思ってな。 」
『 あ、ありがとうございます!! 』
「 いいってことだ。気にするな。 」
そ う 言 っ て か ら 影 山 さ ん は 私 の 手 を 握 っ た 。
『 え!?ど、どうしました!? 』
「 菫と離れるの、悔しいんだ。 」
『 え… 』
「 なんなんだろうな。この気持ち。 」
『 えっと…? 』
「 すまん、迷惑だったよな。 」
『 い、いえ!!全く!! 』
私 が そ う 返 す と 、 影 山 さ ん の 口 元 に ふ っ と 笑 み が 浮 か ん だ 。
「 そうか、ありがとな。 」
「 …じゃあ、俺は行く。 」
『 どうしても、なんですよね… 』
「 あぁ。 」
少 し 躊 躇 し て か ら 口 を 開 く 。
『 私、影山さんに恋心を抱いているかも知れません。 』
そ う 言 っ て も も う 遅 い 。
今 の 彼 の 表 情 は 、 困 惑 と い う 文 字 が ぴ っ た り だ っ た 。
『 あ、ご、ごめんなさい!! 』
「 …いや、そうじゃなくて… 」
「 なんつーか、嬉しい。 」
『 え、嬉しい…? 』
「 おう、俺も、菫のこと、好きかもしれない。 」
『 え、ほ、本当ですか… 』
「 あぁ、本当だ。 」
「 来世では絶対、菫のこと見つけるからな。 」
来 世 。
信 じ て も い い だ ろ う か 。
い や 、 信 じ る 以 外 の こ と は 思 い つ か な い 。
じ ゃ な い と 、 今 の 私 は 、 ど う や っ て 自 分 の 心 に 折 り 合 い を つ け た ら い い の か と 分 か ら な く な っ て し ま う 。
「 …じゃあ、行ってくる。 」
私 は 影 山 さ ん の こ と を 直 視 で き ず に 、 深 々 と 頭 を 下 げ て 見 送 る 。
す る と 、 目 頭 が 熱 く な っ て く る 。
ダ メ だ 、 こ ん な と こ ろ で 泣 い ち ゃ 。
そ ん な 考 え と は 裏 腹 に 、 頬 を 伝 っ て 涙 が 落 ち る 。
特 攻 機 に 乗 る 彼 は と て も 眩 し く て 、 キ ラ キ ラ し て い て …
――誰よりも、かっこよく見えた。
ふ わ り と 花 の い い 匂 い が 花 を か す め る 。
い つ の 間 に か 私 の 手 に 握 ら れ て い た の は 、 菫 の 花 だ っ た 。
ピ ン ク 色 の 、 菫 の 花 。
そ し て 、 影 山 さ ん の 手 に は 白 色 の 菫 。
私 は 本 当 に こ の 人 が 好 き な ん だ 。
心 の 底 か ら そ う 思 え る ほ ど 、 影 山 さ ん が 大 好 き だ と 感 じ た 。
こ ん な 私 を 見 つ け て 、 救 っ て 、 話 し て く れ て 感 謝 の 気 持 ち で い っ ぱ い 。
ち ょ っ と し た 仕 草 や 表 情 、 口 調 や 雰 囲 気 全 て が 私 の 心 を 盗 ん だ 。
ど う し て も 忘 れ ら れ な い 。 と 言 う
よ り も 、 忘 れ な い 。
真 っ 直 ぐ で 、 い つ も 前 を 向 い て 世 界 を 見 据 え て る よ う な そ の 視 線 が 、 切 な く と も 、 大 好 き だ っ た 。
い つ ま で も 、 い つ ま で も あ な た の こ と を 想 い つ づ け ま す 。
そ し て 、 来 世 で は 素 敵 な 出 会 い で あ り ま す よ う に 。
―――参照 あの花が咲く丘で君とまた出会えたら
ピンク色の菫 あどけない恋。
白色の菫 純粋、愛。