テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
最近花粉やばくないですか!?
鼻水ダラダラ🤧
それでは👋🏻
勇side
「ハァ、ハァ……っ、ここまで来れば、大丈夫だろ……!」
駅前の喧騒をすり抜け、狭い路地裏の自動販売機の隙間に滑り込む。
俺は背中を壁に預け、その場にズズズとへたり込んだ。
心臓がうるさいくらいに鐘を鳴らしている。
女子たちの視線から外れたことで、暴走しかけていた女子恐怖症のセンサーは徐々に落ち着きを取り戻しつつあったが、代わりに別のベクトルの動悸が俺を襲っていた。
胸元を見ると、大きすぎるパーカーの隙間から、ひょこりと白い毛玉が顔を出す。
仁「みゃう……(ったく、死ぬかと思ったぞ……)」
ぐったりとした様子でため息をつく仁人。
その小さな肉球が、俺の胸にぽす、と置かれた。
さっきまで、この唇に触れていたのは、間違いなく人間の仁人のもので。
勇「……なぁ、仁人」
仁「みゃ?(なんだよ)」
勇「お前、さっき、その……。俺に、キス、したよな……?」
その言葉を口にした瞬間、俺の顔に一気に熱が昇る。
思い出すだけで心臓がバックバクだ。
仁「――ッ!?」
仁人は一瞬で耳まで真っ赤になり、バッと顔を背けた。
仁「みゃ、みゃう! みゃーう!!(う、うるさい! あれは緊急事態だったんだよ! お前が情けなく過呼吸になってるから、仕方がなくだ! 変な勘違いするなバカ!!)」
勇「いや、喋れてねぇから何言ってるか分かんねぇけど! 顔真っ赤だぞお前!」
仁「みゃああー!(うるさいって言ってんだろ!!)」
ポカポカと痛くもない猫パンチを繰り出してくる仁人。
その必死な姿が愛おしくて、俺は思わずふっと笑ってしまった。
不審者に連れ去られそうになって、死ぬほど怖かったはずなのに。
人間に戻ったと思ったらまた猫になっちゃったのに。
こいつはいつも通り、俺の前では生意気で、そして最高に可愛い。
勇「……ありがとな、仁人。助けに行って、結局お前に助けられちまった」
仁「みゃ……(……別に)」
ふいっぽっぽっぽと尻尾を振って、仁人は俺の腕の中に小さく収まった。
その時、仁人の視線が俺の足元に向く。
仁「みゃ!?(おい、お前……その足……!)」
仁人が驚いたように声を上げた。
言われて自分の足の裏を見ると、アスファルトを裸足で全力疾走したせいで、あちこち擦りむけて血が滲んでいる。
アドレナリンが切れてきたせいか、急にズキズキと激しい痛みが主張し始めていた。
勇「あー……。まぁ、気合いで走ってたからな。これくらい、ヤンキーの勲章みたいなもんだろ」
仁「みゃうー!!(バカ言え! 勲章なわけあるか、完全にただのケガだろ!!)」
仁人は呆れたように、でも本当に心配そうな目で俺の足の裏を見つめている。
すると何を思ったのか、仁人は俺の膝の上に立ち上がると、俺の怪我をした足元へとトコトコと近づいていった。
勇「おい、仁人? 何する気――」
仁「……ペロッ」
勇「ぶふっっ!??!?!?!」
ザラリとした、猫特有の小さな舌が、俺の足の甲の擦り傷を優しく舐める。
勇「は、は!? 何してっ、くく、くすぐったい、っていうか、お前っ……!」
仁「みゃう(動くな。猫の唾液には殺菌作用があるんだよ。……気休めだけど)」
大真面目な顔をして、一生懸命に俺の足を舐めて手当て(?)しようとしてくれる子猫。
いや、理屈はわかる。
猫が仲間を毛づくろいするような、親愛の情的なアレなんだろう。
だけど。
中身は、俺の好きな、あの男の、仁人なわけで。
勇「(待て待て待て、これ、さっきのキスよりある意味ヤバくないか……!? 好きな人に足を舐められるプレイって何!? 俺の性癖が歪む!!」
脳内で謎の警報が鳴り響く。
仁人の必死で健気な姿と、その可愛い肉球の感触が、俺の「好き度」をじわじわと、しかし確実に押し上げていくのが分かった。
脳内のメーターが、再びグングンと上昇していく。
勇「あ、青天井……! 俺の好き度メーターがまた、ヤバい領域に……っ!」
仁「みゃ?(ん? なんだ勇斗、また顔が赤いぞ。過呼吸か?)」
不思議そうに首を傾げ、うるうるとした瞳で俺を見上げてくる仁人。
ダメだ、可愛すぎる。
これ以上は、本当に脳の血管が千切れる。
勇「仁人……ちょっと待て、一回離れろ! またメーターがバグる!!」
仁「みゃう!?(なっ、人がせっかく心配してやってるのに何拒否してんだよ!!)」
勇「違う、嬉しすぎて爆発しそうなんだよ! 頼むからその可愛さ自重してくれ!!」
仁「みゃ、みゃああー!(もう知らん! お前なんか一生裸足でいろ!!)」
怒った仁人が、俺のパーカーの中に潜り込んで、お腹のあたりをフニフニと踏みつけ始める。
それがまた絶妙に心地よくて、俺のライフはもうゼロだ。
とりあえず、一刻も早く家に帰って、このボロボロの足を洗い、仁人にちゃんとしたご飯をあげなきゃいけない。
そのためには、この大きすぎるパーカーを着た不審な裸足男として、なんとか人目を忍んで帰宅する必要がある。
勇「……よし、帰るか。仁人、しっかり捕まってろよ」
仁「みゃう(……フン、落としたら爪立てるからな)」
パーカーのポケットからちょこんと顔を出した仁人を手で支えながら、俺は痛む足を引きずって歩き出した。
一度は人間の姿に戻れたんだ。条件は間違っていない。
俺の愛の出力コントロールさえ上手くいけば、次こそはちゃんと、人間の仁人をこの腕に抱きしめられるはずだ。
……まぁ、そのためには、この底なしの「好き」をどうにか手懐けなきゃいけないわけだけど。
俺と仁人の、前途多難で、最高に甘い同居生活は、まだまだ始まったばかりだった。
fin
コメント
1件
古書屋のリオンです。第11話「怪我」、読ませてもらいました。 もうね、健気な仁人くんが足を♡♡♡シーン、堪らなかったです。「中身は好きな男」って設定がちゃんと効いてて、猫の行動でありながら仁人くんの必死な想いが透けて見える。殺菌作用って理屈で誤魔化しながらも、本音は「心配だから触れたい」ってところが、すごく人間臭くて可愛いんですよね。 勇斗の「好き度メーターが青天井」っていう表現も好きです。自分を客観視できる冷静さと、それを超えて暴走する感情のギャップが絶妙。足を引きずって歩く描写で「まだ続くんだ」って思わせる終わり方も、次が気になります。
塩 﨑 _ .
314
178
𝕔𝕠𝕔𝕠
7,286
もなか
79