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 謙太は鷲見さんの件で一息ついたところだったのかハッとした顔をしていた。

「そのね、その」

 とまた戸惑っていた。鷲見さん以外のことで何を隠していたのだろうか。


「なんだったら今度で良いよ」

 私はそう言ったが謙太は首を横に振った。

「今のうちに言うよ」

 私はいつも自分の話しかしてなかったし彼の話を聞こうともしなかった。それは自分のせいだ。


「……実は、僕。子供ができにくい体質なんだ」

 鷹見さんも言ってた。でも嘘かと思ってたけど本当だったのね。


「子供のころの記憶だからあれなんだけどお医者さんが親にこの子は将来子供が出来ないかもしれないって言ってたんだ」

 出会ったころも付き合った頃もそんな話を聞いたことがない。本人どころか彼の親からもだ。


「そういうの分かってて付き合って結婚したのは本当に申し訳ない!!!!」

 謙太は私の前で土下座をした。すごいゴンと鈍い音がした。床に額をぶつけたのだろう。


「病院で検査して、こっそり治療しようと思って治療し始めたときに梨花ちゃんが親の治療費でお金使いたいって言って。今は治療や検査はストップしているんだ」

 ……あの時のお金の使い込みは治療費検査費だったってわけ?

「お金は使ったかい?」

 だってあれは嘘だもの。使うわけないわ。


「……少しは使ったけど」

 と言うなり謙太は私の手をつかんだ。


「知り合いの知り合いに子供が産めない男性も子宝が出来る民間治療があるって言われてて……そこでお金を出せば体は良くなるかもしれないって」

 それって詐欺じゃん。まさか謙太、それに引っかかって大量にお金を使い込んでいたってこと???


 それに気づかなかった私って。たしかに謙太はいろんな人にいい顔しちゃうし、ましてや自分の不妊が原因でだからそういうのにも藁にも縋る気持ちで手を出してしまったかもしれないけど。


 私はため息をついた。

「お金出すから普通のクリニックに一緒に行きましょう。私自身の身体の事もあるかもしれないし」

「でも、最初の病院だとあまり」

「あまりってなによ。そんなに? 自分騙されていることに気づかないの……」

すると謙太は頭をまた床に擦り付けた。

「今度そのお金を払わなきゃいけないんだぁああああああ」

 って、もう手を出してたんかい!! なんで私は見抜けなかったのよ……。まぁそれは納得できる、私は周りを見ない人間だし……謙太のサインに気付けないったから。


 んー、あの目を覚ます場面ではもう騙されていたのかしら。


「……治療が進まないしどうしようと思ってた矢先に知り合いから声かけられて……」

 って、私のせいじゃん?! 私がお金を共同募金から抜いたから。

それがあったら変な詐欺にかもられなかったのかしら。


 ああ。


「その怪しいところ、なんとかクーリングオフとかできないの?! 消費者センターに電話!!」

「もう無理だよ」

「ねぇ、それいくらなの?」

 謙太はかなり動揺している。今までにないくらい。こんな彼を見たことがない。


 鷲見さんとの件よりも動揺しているし、そんなに不妊のことを隠し通していたことがいけなかったの?


 ん? そいや……鷲見さん。お腹の中に謙太との子供がいるとか言ってたけど?

関係もない、謙太にはこの種がない。でもこれは彼の口からの情報だけだから信ぴょう性ない。


 でも鷲見さんのお腹の中の子供は誰との子供なの?

 なんで彼女は謙太との子供だって言ったの?

お金?


 私まで混乱してきた。

「落ち着かなきゃ、落ち着かなきゃ……ね、謙太……」

 と声をかけると謙太はフラフラしながらベランダの方に行く。


「ちょっと……謙太? 謙太?!」

 彼がベランダをあっという間によじ登ってしまった。私は彼の体を掴むが手を振り解く。


「……謙太?!」

 そしてあっけなく落ちた。


 嘘でしょ……何よこれ。


 こんなにメンタル弱弱男なの? 

 じゃああの電車に轢かれたのも実は……飛び降り自殺?!


 借金を返せなかったり治療費払えなかったり……それで思い詰めて?!


 どっちかといえばそのタイプは私だと思っていた。私は陰気、彼はずっと微笑んできて陽気。

 なのに……そんな彼を全く知らなかった。



 ……夜だけど見える、謙太。

 人通り少ないからなぁ。私早く助けなきゃ……下に行って。まだ生きているかもしれないし。


 いや、もう動いてないから助からない。



 ああ、追い詰めてしまった私がいけない。ここからどう生きればいいのか。


 ……無理。もう一回やり直したい。



 てことは……私もここから飛び降りて死ねばいいのか。



 息を呑む。気持ち悪くなるけど……あの時と同じ感覚、嫌だ。でも……。



 私は謙太と同じベランダから落ちた。


 前は鷲見さんと揉み合いになって落ちたんだっけ。


 と思い出しながら目の前は真っ暗になった。


あなたはそうやっていつも微笑んでいた〜タイムループで夫がクズ認定された件〜

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