テラーノベル
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「ママ上、どうやって鍵を使えばいいですか!?」
「ママの紋章にラウルちゃんの紋章を重ねて」
重ねるって、胸を触るということだが。
いや、今にも炎で屋根が崩れてきそうなんだ、不埒なことを考えている場合ではない。
俺は彼女の胸の紋章に自分の手を重ねる。
どこまでも柔らかく沈み込んでいく胸に驚いていると、本当に彼女の胸の中に手が入った。
「手がおっぱい食われた!」
ママ上の体がビクンと大きくのけぞる。
「聖剣を……抜いて」
俺は彼女の体の中に、柄のようなものを見つける。
グツグツと煮えたぎるマグマのように熱く、まるで体の中で聖剣が錬成されているかのようだ。柄を握りしめた瞬間、大量の知識が流れ込んでくる。恐らく様々な術式だと思うが、それらが一体なんなのかわかならい。
俺は彼女の胸から一気に聖剣を引き抜く。
眩い光の中、先端に真紅のクリスタルがついた魔術杖が出現する。
「あっ……」
聖剣を引き抜かれたママ上は、艶めかしい声と共にガクッと腰砕けになったので、俺が腰を抱いて支える。
「これが……聖剣? 完全に杖だが」
「ハートカリバー。これがママの封印していた聖剣よ」
「ラウル様、小屋が崩れますぞ!」
メラメラと燃える炎が、柱を伝って屋根に届きそうだ。
俺はええいままよと聖剣(杖)を振る。
「飛べっ!」
俺達の体がふわりと宙に浮かぶと、垂直に加速し漁師小屋の屋根を突き破って空へと浮かぶ。
景色が一気に夜空へと変わって、全員が困惑する。
「うわっ、なんじゃこりゃ!?」
「いってぇ! 頭打ったぞ」
眼下には燃え盛る小屋と入江が見える。どうやら俺達は飛行魔法で、空に浮かんでいるらしい。
「ラウルちゃん、魔法が使えてるわ!」
「いや、100%この杖のおかげだと思う」
この杖から流れ込んできた大量の知識。
それが恐らく本来使ったこともない魔法を使用可能にしているのだろう。
「おい見ろ、あいつらあたしの船を奪うつもりだ!」
ヨハンナが岸辺を指差すと、彼女の海賊船にヴェノムタランチュラが集結していた。奴らは船員を次々に海に蹴り落とすと、帆を下ろし、ロープを解いて出航準備に入っている。
「見てろ、この聖剣(杖)でふっとばし……」
てやる、と言いかけて頭がくらっとする。
「やばい、全員を空に飛ばせてるだけで俺の魔力尽きたかも」
元からラウルは魔法の才能が乏しく、MPもずっと低かった。
4人を空に浮かせているだけでも結構魔力を消費している。
「ラウルちゃん、聖剣を!」
ステラに聖剣(杖)を手渡すと、クリスタルに真っ赤な魔力粒子が集まってくる。魔力は濃密に渦を巻き、折り重なって収束していく。
そして形をなしたのは大輪の薔薇――真紅の魔法の薔薇だ。
ママ上は聖剣(薔薇)を高く掲げると、まるで銃を撃つように両手で持って、照準を海賊船につける。
「ごめんなさい、ヨハンナさん。船を壊します!」
「ええい、盗まれるくらいならひと思いに沈めてくれ!」
「ローズシュート!」
鋭い声と共に魔力が解放される。ワンドの先端から放たれた薔薇の魔弾は、流星のごとく海賊船へと飛ぶ。空気を裂く音と共に、薔薇は回転しながら美しい軌跡を描き、標的に向かっていく。
その後には淡い花びらの残像が舞い散り、まるで儚い夢を見ているかのような光景が広がる。
タランチュラの連中は、突如空から降って来た巨大な薔薇を避けることも出来ない。弾けるように展開した魔力の衝撃波が海賊船を包み込み、ドーム状の爆発を引き起こす。
「ぐああああっ!」
「ぎゃああああっ!」
奴らの叫び声が遠くにいる俺達まで聞こえてきた。
マストがへし折れ、魔力爆発で黒服の男たちが宙を舞う姿がしっかりと見えた。
「うわぁ……すごっ」
「ちょっとやりすぎちゃったかしら」
「ママ上、もしかして結構有名な魔術師?」
「ラウル様、奥様はその昔薔薇の魔術師と呼ばれていた、二つ名持ちの魔女でございます」
「あんな虫も殺せぬママ上が……」
その後俺達はママ上の力で、上空からふんわりと着地。
壊れた海賊船の確認を行った。
「あぁあ、あたしのレッドシャーク号に大穴があいちゃってるぜ」
「船は新しいの弁償するって」
「最新型ので頼むぜ」
『ラウル~、助けて~』
ナハトの声が聞こえて周囲を探すと、フリューゲルカリバーが船の真横の海に突き刺さっていた。
俺が引っ張りぬくと、ナハトが姿を現す。
「ダメだよラウル、ちゃんと聖剣持ってないと。僕が出られなくなっちゃうんだから!」
「やっぱそうなんだ」
「資格のない人間が聖剣に触ると、聖剣が力を失っちゃうんだよ。もし剣をとられそうって思ったら、僕を先に召喚しないと」
「なるほど、気をつける」
それからしばらく船の周辺を探索すると、ヨハンナの船員は無事見つかった。
魔力爆発も海に浮かんでいたおかげで助かったようだ。
「ダメですラウル様、賊は皆死んでおります」
爺の言う通り、船の上でまともに爆発を受けた賊は全員死んでいる。
しかし確認できた死体は3体。それを見てママ上が不安げな表情を浮かべる。
「リーダーの男がいないと思うわ」
「あとごついゴリラみたいな男もいないね」
そいつらには逃げられたのかもしれない。
島に潜伏されると厄介だなと思っていると、その時不意に海からザバッと音がした。振り返ると三連式ボーガンを構えた筋肉質な男がいた。
体の半分が焼け焦げた奴の顔は憎悪と怒りに歪んでいた。
「よくもやってくれたな! 豚野郎死ね!」
水の中に潜伏していた男は躊躇なくボウガンを発射。
まっすぐ飛来する三本の矢。逃れることも出来ず命中すると悟った瞬間、誰かの影が飛び込んできた。
「ママ上!」
俺を庇ったのはママ上だった。
彼女の胸に矢が突き刺さり、衝撃で後方にのけぞると膝から崩れ落ちた。俺は反射的に彼女の体を受け止めると、白い胸が血に染まっていく。
「フハハハハ! 悪党よ、ヴェノムタランチュラの正義の矢を見たか! 我々が貴様らを残らず粛清してくれる! 正義は我にあり!」
「野郎!」
ヨハンナが勝ち誇って大声を張り上げる男に、拳銃をぶっ放す。
弾丸が額に命中して男は仰向けに海に倒れた。
ありんす
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#牛肉
コメント
1件
第12話、熱かったです!聖剣がまさかの杖だった驚きと、「手が♡♡♡食われた!」のツッコミに思わず笑いました。ママ上(ステラ)が「薔薇の魔術師」という二つ名持ちだった裏設定に痺れましたし、ラストの庇うシーンはまさかの展開で胸が痛い…。続きが気になりすぎます!