自分が死ぬ夢を見る。
それも、何度も。
「ミッション完了。さっさと帰るぞ。」
司令部のさとみが作戦の終了を告げる。
「回収地点までの経路をマーカーに表示する。そこで落ち合おう。」
「了解!」
機体コックピットのHUD…ディスプレイに映る外の景色の上に、マーカーが表示される。推力全開でブーストをかけ、合流地点へ直進する。
「さァとちゃぁ〜ん!聞こえる〜?」
通信に突如割り込んでくる陽気な声。企業の作戦部主任、ころんだ。
「なんだ、お前か?こちらは作戦を済ませたところだが…」
「アークの特務部隊のアドバンストが1機逃げちゃってさぁ〜!多分第3隊長あたりだと思うんだけど〜!♪」
「その赤いの、そっちの方に向かってるんだけど!倒せそ〜?♪」
俺の機体は作戦で少し損傷し、耐久はあと4割ほど。残弾もかなり心許ない。
「…現在の耐久度では危険だ、ころん。追いつかれる前に撤収する。」
「あそーなんだぁ…ちょっと惜しいけど、ま、じゃぁ頑張ってねぇ〜!♪」
気持ち速度を上げて、集合地点に向かう。
「莉犬、追いつかれると面倒だ。早急に_」
ビィ!!ビィ!!
「っ!?」
ズドぉぉぉぉぉぉん…っ!!
_突然の衝撃、爆発音。
機体状況を確認…っ…?視界が赤い…?
徐々に意識が朦朧としてくる。
何が起きた……?
<<機体システムに深刻な障害が発生しています。直ちに脱出してください>>
コックピットのコマンド音声が無機質な合成音声でそう警告するのが、うっすらと聞こえる。
耳鳴りとそれ以上の何かによって訳もわからないまま、視覚、聴覚、触覚を奪われる感覚が広がる。
「…犬!?莉…!!」
うっすらと遠のいていく意識の中に、さとみの叫び声がこだまする。
<<パイロットに重大なバイタル異常。心拍数減少、血中酸素濃度低下。プロトコルシステムを再起動し…>>
「…っ!?」
無機質な天井。
…夢だ。
カチッ、カチッ…と、掛け時計の秒針の音が響く。
また枕が血で汚れていることに気づくのに、30秒ほどかかっただろうかな。
「起きたか莉犬?」
「…寝起きで悪いが緊急出撃だ」
ドアの外から、さとみが呼ぶ声が聞こえる。
2085年6月24日 午前7時25分