おはようよりも先に名前を
眩しい。
まだカーテンは閉まってるのに、朝の光がじわっと部屋に差し込んでいた。
いるまはぼんやりと目を開けて、天井を見つめる。
(……あれ、なんか違う)
いつもより静かで、なんか……温かい。
その理由に気づくのに、そう時間はかからなかった。
__となりに、らんが寝てる。
まだ寝息を立ててる。
シーツの中、肩が少し出てて、髪がふわっと頬にかかってる。
「……お前、油断しすぎだろ笑」
いるまは苦笑して、そっと手を伸ばした。
触れる寸前で止める。
でも、触れたい。
(昨日、あんなこと言ってたくせに。……可愛すぎんだよ)
それでも手は伸びて、そっとらんの髪を耳にかけた。
その瞬間。
「……っ、ん……」
らんが小さく眉を寄せて、目をうっすら開けた。
「……ん……いるま……?」
「……おはよ」
「んー……もう朝?」
「朝っていうか、まだ早朝。6時ちょい前」
「ふあぁ……でも、起きちゃったし……」
らんはまだ眠たそうな声で、するりとシーツの中から腕を出して、
そのまま、いるまの胸元に顔をうずめてきた。
「……ぉい、バカ。くっつくな、暑い」
「んー、でも……こうしてないと、夢みたいで不安」
「……夢じゃねえよ。俺はここにいるし、ちゃんとお前の隣にいる」
「……ん、じゃあ、名前呼んで?」
「は?」
「最初に聞きたいの、“おはよう”より、いるまの声で俺の名前読んでほしいの……」
その願いに、いるまは一瞬、照れたように目を伏せて、
それから、落ち着いた声でゆっくりと言った。
「……らん。おはよう」
そのたった一言で、らんの顔がほんのり赤くなる。
「……もう一回」
「調子乗んな」
そう言いながらも、いるまは今度、そっとらんの額にキスを落とした。
「おはよう。……俺の、大事なやつ」
「……俺も、おはよう。世界で一番好きな人」
2人の朝は、誰にも邪魔されない、特別な光に包まれていた。
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