次の日の朝。
教室に入ると、胡々はなんとなく周りの視線が気になった。
昨日の昼休みのことがまだ頭に残っていて、どうしても意識してしまう。
(……考えすぎかな。)
そう思いながら席に着くと、佐倉がいつものように胡々の隣の席に座った。
「おはよ。」
「……おはよう。」
その自然すぎる態度に、思わず拍子抜けする。
(佐倉くんは、何も気にしてないんだな……。)
いや、むしろ――
「おい、昨日のこと、まだ気にしてんのか?」
佐倉は胡々の様子を察したのか、じっと見つめてくる。
「……ううん、大丈夫。」
胡々が微笑んでみせると、佐倉は「ふーん」とつまらなそうに視線を逸らした。
* * *
昼休み。
「ねえ、佐倉くん。」
クラスの女子の一人、藤崎美咲が話しかけた。
「ん?」
「最近、神山さんと仲良いよね?」
「ああ。」
佐倉はまったく気にする様子もなく、あっさりと答えた。
「なんで? だって神山さんって、あんまり目立たないし……。」
(まただ……。)
胡々はそっと俯く。
すると――
「だから?」
佐倉の低い声が響いた。
「え?」
「目立つとか関係あんの?」
佐倉の言葉に、美咲は一瞬言葉を詰まらせる。
「い、いや、でも……なんか不釣り合いっていうか……。」
「ふーん。」
佐倉はそれ以上何も言わず、美咲の視線を軽く流した。
「お前さ。」
「えっ?」
「胡々のこと、バカにしてる?」
――ドキン。
胡々は思わず佐倉を見た。
「ち、違うよ! そんなつもりじゃ……!」
「なら、余計なこと言うなよ。」
佐倉はそう言い放ち、美咲から視線を外すと、何事もなかったかのように胡々の方を向いた。
「な、なあ胡々。」
「……え?」
「今度、帰りにどっか寄るか。」
「えっ……!?」
胡々の心臓が一気に跳ね上がる。
「ちょっ、何言って……!」
「別にいいだろ。どうせ帰り道一緒なんだし。」
「で、でも……!」
「決まりな。」
佐倉は胡々の返事も聞かずに、話を終わらせるようにパンをかじった。
周囲はざわついていたけれど、佐倉は気にも留めない。
(もう……。)
胡々は顔を赤くしながら、佐倉の横顔をちらっと見た。
(本当に、ただのクラスメイトじゃなくなってる……よね。)
胸が高鳴るのを、どうしても止められなかった。
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