「そん、な……」
兄上の神妙な面持ちを前に、俺の口から出たのは、そんな強張ったつぶやきだけだった。
自分が海春を呼び寄せたことで、どこか、この国の優勢を確信している部分があった。たとえ、軍事力で隣国に劣っているのだとしても……。
それなのに、『聖女』の存在の有無でも追いつかれてしまったのだとしたら――。
固唾を呑んだ俺を元気づけるように、サフィヤが後ろから俺の肩に手を置いた。
「……まあ、もしそうだとしても、弱気になる必要はないだろ。ラザラスよりも先に、俺らが聖女神セーラ修道院にたどり着けばいい話だ。海春とおまえと俺なら、そのくらい朝飯前だろ」
な、とサフィヤは力強い光を宿した目で笑ってみせる。
……そうだ、このくらいのことで動揺している場合ではない。
こうなることも、予想できなかったわけではないのだから。
たとえ、隣国で『聖女』が見つかったことをきっかけに争いが激化した*****************************
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