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獣人の少女に能力を与えた後、私は記憶を頼りに獣人の国へと移動を開始しました。
その際に能力で透明になる事を忘れません。転移系の能力を作ってもいいのですが、道中で今回のような思わぬ出会いがあるかも知れないので、あえて空を飛んで向かいます。
獣人の国は大陸の南西部に位置しており、自然の要塞とも呼ばれる険しい樹海を開拓し、今から200年前に建国したようですね。
他国に比べれば国としては歴史が浅く、辺境に位置する為少しばかり下に見られているようにも感じます。
姉妹の記憶が確かなら、二人の両親はその事をよく思っておらず、他国への影響力を高める為に『リヒト教』に入信し、献金を重ねて位階を上げる事に執心していた。
教会内での地位を上げる事で他国に対しても、強く出れると考えたようです。その考え自体は間違ってはいないですね。
この世界で最古にして最大の宗教である『リヒト教』は世界全土に大きな影響力を持っています。国民全員が入信している国もあると言えばその影響力の大きさが分かる筈です。
───神ちゃんを信仰する宗教なので、私の存在が知られたらまずい気もしますねー。
そんな訳で姉妹の両親は『リヒト教』で位階を高めていけば、他国の王と同列の扱いを受けられる思った。獣人の国だからと、舐められたくなかった訳です。
ですが、私が思うに『リヒト教』に入信した事で家臣たちの心が離れたんじゃないかと推測します。
弱肉強食の険しい大地でこれまで生きてきた獣人は、神に祈るなどという行いはしませんでした。自分たちの強さこそが絶対だと信じる脳筋種族だった故ですね。
そんな彼らから見れば、急に『リヒト教』に入信し神を祈りだした姉妹の両親は弱き者に見えた訳です。
強さこそが絶対とする獣人立ちには、それが許せなかった。種族を束ねる王が弱き者であっていい訳がない。その想いが王権簒奪に繋がった訳です。
「というのが私の見解ですが、間違っていますか?獣人の王よ」
場所は獣人の国『ダスティーア』。私の記憶は間違っていなかったようで、しっかりと王都に辿り着く事が出来ました。
この国の王宮は他国のように豪華絢爛な装飾を施してはおらず、どちらかと言えば砦のような印象を受けます。
敵に責められてきても、この王宮がそのまま文字通り最後の砦として機能する訳ですね。
能力を使って透明のまま王宮に侵入した私は、目当ての人物を探して中を探索しました。一番、王が居そうな謁見の間にいなかったのは拍子抜けでした。
姉妹の記憶から王が居そうな候補が幾つかリストアップされた為、次に居そうな執務室に赴けば、ビンゴ! 見事に王を発見する事が出来ました。
透明になった上で新たに『物をすり抜ける』能力を作って執務室に侵入したので、音などの形跡はありません。
気付かれる筈がないと、確信していたのですが私が室内に入室すると共に、威厳ある声が私を制止しました。
「どのような手を使ったか知らんが、部屋に侵入した事は分かっておる。儂ら獣人の嗅覚を甘くみたな!」
カッと目を開き透明で見えない筈の私を睨むのですから、びっくりですよね。
部屋の入口に待機していた近衛兵らしき二人が剣を構えて私に襲いかかってきたので、『目が合った者を昏睡させる』能力を使って深い眠りに誘います。
加えてこれ以上の介入は面倒だと感じた私は姉妹の時と同じように、私と獣人の王以外の時を止めて、邪魔者が入ってこない状態を作ってから透明化を解除しました。
「何者だ?儂を殺す為に送り込まれた刺客か?」
低い声ですね。声に威圧感を感じます。余計な事をするなと言外に言っているようですね。
当然現れた、あからさまに不審な私を見ても動揺する様子はなし。自分の強さによっぽど自信があるのでしょう。
己の権威を象徴するような豪華絢爛な服を身に付けておりますが、筋肉質な肉体には少し似合っていないようにも思います。
服越しでも分かる筋肉の太さ。腕なんて丸太のようですよ!一目で強いと分かります。
オマケに顔が百獣の王ライオンときた。これは強い (確信)。
王様の見た目は人間のような姿をしたライオンですねー、はい。姉妹の二人はアニメとかで見るような人間ベースでしたが、この方は違うようですね。
純血だったりハーフだったりで見た目に違いがあるのかも知れません。私の知識不足ではありますので後で調べておきましょう。
「いえ、私は刺客などではありませんよ。偉大なる獣人の王と縁のある人物と出会いまして、一度お会いしたいと思いこの場に馳せ参じました」
「貴様のような不審な輩を呼んだ覚えはないがな。まぁ良い。貴様、ミアとリアの手下か」
「ふふふ、そのような関係ではありませんよ。ただ彼女たちの身に何が起きたかは存じております。それ故に何故、陛下が王権簒奪を行ったか愚行いたしました。私の見解を述べてもよろしいですか?」
「好きにせよ」
という訳で私の持論を述べた訳です。反応を見るに強ち間違ってはいないようですね。
あ、ちなみに獣人の王が口にしていたミアという名前が私が出会った少女ですね。リアが姉の方です。
「道化らしく口が弾む事だな。だが、間違ってはおらぬ。儂はな、他の種族に媚びへつらう兄上を許せなかった」
「だから、家臣の犯行と見せかけて王権簒奪を行った」
「弱き者に国は纏められん。兄上にはそれが分かっていなかった。他国に下に見られている自覚があるのならば!攻めれば良い!儂らを二度と侮れぬように徹底的に潰せば良いのだ!」
ドンっと机を粉砕する勢いで、獣人の王が机を叩く。
oh……何という脳筋。
私の理想とする黒幕像から外れそうです。『頭脳明晰になる』能力でも与えて脱脳筋をして貰いましょうか?
強靭な肉体を持っていますし、強さという面ならこれ以上の強化は必要なさそうですし、唯一の弱点っぽい頭の方を改善しましょう!
「ならば、偉大なる王の侵攻が成功を願い、お呪いを送りましょう」
賢くなりなさい───脳筋の王よ。
かくして、物語の舞台は整いました。
主役は獣人の姉妹。
相手役はそうですね、帝国の第二王子にお願い致しましょう。優秀な兄に対する劣等感抱えながらも、決して腐る事なく研鑽を重ねています。
私が与えた能力以外何も持ち合わせていない姉妹を上手くサポートしてくれるでしょう。大丈夫きっと上手くいきます。
私の大事な親友ならきっと導いてくれるに違いありません。
悪役は先程据えた獣人の王。生まれ変わった彼ならば私が思い描く物語を紡いでくれるでしょう。
進行は私が努めます。
さぁ始めましょうか。姉妹の美しい絆を描いた物勧善懲悪の復讐劇を。
願わくば私の存在に気付いて欲しい。
───私は真の黒幕になりたい。
#主人公最強
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