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私の名前は橘綾香といいます。
私は昔から要領が良い子だとよく言われていました。
勉強にしてもスポーツにしても同じことですが、一度コツさえ掴んでしまえば後は楽なものです。
努力なんて言葉は必要なく、ただ普通にこなせばいいだけなのですから。
でも私はそれで満足できる人間ではありませんでした。
だってそれではつまらないじゃないですか。
もっと楽しいことがしたいんです。
ゲームとか漫画みたいな非現実的な体験をしてみたいんですよね。
だから私はこの学園に入学しました。
私立聖嶺学園高等学校。
県内有数の進学校として有名であると同時に、多くの芸能人を輩出していることでも知られている高校です。そのため芸能科や音楽科などの学科が存在していますが、今年新たに普通科が増設されたようですね。
新設といっても元々あった特進クラスとは別に作られたわけではなく、単に定員割れして空きが出来たのでそこに滑り込んだだけですけどね。
さて、今日はこの学校の入学試験について説明したいと思います。
この学校は偏差値的には中の下ですが、それでも全国平均と比べると少し上なので入学するにはそれなりの学力が必要となります。
また試験内容は筆記だけでなく面接も行われ、それに加えて運動能力テストなども行われるみたいですね。
ちなみに筆記に関しては問題なく合格ラインを超えていたと思うので大丈夫でしょう。
次に面接に関してですが……こちらはかなり難しいかもしれません。
というのもこの学校では毎年一定数の落第者が出るみたいなんです。
理由は様々でいじめによるものもあれば家庭環境の問題もあるらしい。
原因は違えど共通しているのは全ての原因となる出来事があったということだけだ。
この世には様々な不幸があるけれど、それを乗り越えられるかどうかは当人次第なのでしょうね。
そしてこれは僕の話ではないのですけど、僕の周りにもそういった境遇の人がいますよ。
例えばお隣の家に住んでいる男の子の話とか……?
「ああ、またあいつが来てやがるぜ?」
「うわっ! きったねえ!」
「きたないー!」
「くさいよねー!」
突然聞こえてきた声に驚いてそちらを見ると、数人の女子グループがこちらを見ながらクスクス笑っていた。
どうやら僕に向けられた言葉らしいけど……やっぱり臭いんだね。
一応気を付けてはいたんだけど全然気が付かなかったよ。
う~ん……それじゃ今日はこのくらいにしておこうかな。
***
朝起きるといつものように顔を洗い、朝食の準備をする。
それから母さんと一緒に食べて学校へと向かうのだが、その際に必ず父さんの仏壇に手を合わせることにしている。
別にこれといった理由があるわけではないけれど、なんとなくそうした方が良いと思ったからだ。
ちなみにこの家には僕を含めて四人しか住んでいない。
亡くなった両親の遺産のおかげで生活できているが、それでもギリギリの生活を送っていると言っても良いだろう。
だけどそれで困ったことはないし不満もない。
なぜなら両親とも立派な人だったからだ。
二人は仕事の関係で海外へ行ってしまったが、今でもたまに連絡を取り合っている。
また近いうちに会える日が来るかもしれないね。
ちなみにこの手紙の内容は全て嘘っぱちなので気にしないでほしい。
いや~まさか本当に信じるとは思わなかったよ。
それにしても本当に騙されやすいんだねえ君は。
もう少し人を疑うことを覚えた方がいいんじゃないか? ああ、別に怒っているわけではないんだよ。
ただ少し心配になってしまっただけさ。
君にはこれから色々と苦労をかけると思うけど、どうか挫けずに頑張ってほしい。
応援しているよ。
それじゃあ元気で―――
「ちょっと待てえぇぇっ!」
僕は勢いよく立ち上がると、目の前にいる人物に向かって叫んだ。
「いきなり変なことを言い出すんじゃない! 誰だよお前!?」
「ふむ……やっぱり気づいていたかい?」
「当たり前だろ!」
いつの間に現れたのか、教室にいたはずのクラスメイトたちが全員姿を消していた。
しかも窓の外を見ると雲一つ無い青空が広がっているではないか。
これは明らかにおかしいぞ。
いくらなんでもこの状況で冷静さを保てるはずがない。
いったい何が起きようとしているのだろうか?
「安心したまえ。別に危害を加えるつもりはないから」
「信用できるわけないだろう」