錆の都の地下深く、冷たく暗い空間に蝋燭の灯がゆらゆらと揺れていた。そこは骸教団の本拠地、恐ろしい儀式と教団の粛清が行われる場所だった。無数の骨で装飾された祭壇の前に、威厳を持って立つ一人の男――カラグがいた。
カラグは教団の最高位司祭にして、暗黒の力を自在に操る術者であり、教団の絶対的な支配者である。彼は冷静沈着で、まるで感情というものを持たないかのように見える。ゆっくりとした動作で、彼は長い杖を祭壇に立てかけ、信者たちに向けて静かに言葉を発した。
「夜刀が去った今、我らの計画に障害はない」
その言葉に、周囲に控える信者たちは恐れと崇拝の混ざった視線を彼に向けた。夜刀の反逆者としての粛清は、カラグによって完遂された。だが、彼の真の狙いはただの反逆者の処分ではなかった。夜刀の死を引き金に、教団の勢力を都全域に拡大し、錆の都を完全に支配する計画が練られていたのだ。
「カラグ様……いよいよ次の段階へ進むのでしょうか?」
信者の一人が、緊張の面持ちで尋ねた。カラグはうっすらと微笑み、彼の質問に応えることなく、祭壇の奥に視線を向けた。そこには骸教団が崇める「骸の女神」の巨大な彫像が鎮座している。鋭い牙と、冷たい瞳で都を睨みつけるかのようなその姿は、見ている者すべてに恐怖を与えた。
「骸の女神が求めているのは、さらなる魂の供物だ。錆の都は、死者と霊の淵に沈むべきだ」
カラグは女神像に一礼すると、再び信者たちの方を向いた。彼の目は冷酷で、魂を見透かすかのような鋭さを帯びている。彼にとって、信者たちは駒に過ぎず、利用することでのみ価値があると考えていた。彼の忠実さは女神と、教団の繁栄のためのみに存在していた。
「すでに、供物は定まっている」
その一言に、信者たちはざわつき始めた。錆の都にいる「異能者」たち――特にゴーストバスターたちが次の標的にされるという噂が広まっていたからだ。カラグは彼らの力を恐れるどころか、逆にその力を教団のものとして取り込もうとしていたのである。
「ゴーストバスターどもが都に潜んでいる。彼らの力が我らのものとなれば、ご加護も一層強まる」
彼の言葉は、信者たちの中に不気味な熱狂を呼び起こした。カラグは一人一人を見渡しながら、その目に宿る狂信の光を楽しむかのように、微笑んだ。そして彼の周囲には、暗闇から現れた霊体が静かに集まり、彼の指示を待つようにじっと立っていた。骸教団は霊体すらも使役することで、より強力な存在となっていたのだ。
カラグはその霊体の一つに向けて、静かに手を差し出す。その霊体は即座に彼の掌に吸い込まれ、彼の中で脈動するかのように震えている。
「行け。我らの敵を滅ぼせ」
彼はその指示と共に、霊体を錆の都に解き放った。その霊体は、かつての夜刀の怨念と共鳴し、さらなる死を求めて闇の中に消えていった。骸教団の支配が、錆の都に広がり始める瞬間であった。
カラグは自らの役目に満足しながら、再び祭壇の前で静かに目を閉じた。彼の思考の中には、都を支配するための冷酷な計画が次々と浮かんでいた。その計画は、骸教団が錆の都の支配者として君臨する未来を確かなものにするためのものであった。
「夜刀はただの始まりに過ぎない。都全体が我が教団の支配下に置かれるその日まで、犠牲を惜しむ必要はない」
彼は冷たい声で呟くと、再び祭壇の蝋燭が一層強く燃え上がり、暗闇が深まる中で信者たちは一斉に跪いた。骸教団の暗い意図は、やがて錆の都全体を覆い尽くす予兆を漂わせていた。
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