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第8章 「炎の約束」
雄英の中庭。
夜。
風がやさしく吹き抜ける。
世界の喧騒が遠くで響くのに、二人の時間だけは止まっていた。
ダビ:「……俺の名前、もうバレた。」
哀:「知ってる。ホークスが話してた。」
ダビ:「それでも、まだ俺といるのか?」
哀:「うん。」
哀の声は静かだった。
迷いのない、まっすぐな声。
ダビ:「バカだな。俺と一緒にいたら、全部燃えるぞ。」
哀:「燃えてもいい。あなたとなら。」
ダビ:「……そんな簡単に言うなよ。俺の世界、炎と後悔しかねぇんだ。」
哀:「でも、あなたの炎は優しい。
あの日、私を照らした時もそうだった。」
ダビが息を呑む。
彼女の手が、自分の焦げた肌を包む。
熱くて、でも痛くない。
ダビ:「……お前、怖くねぇのか?」
哀:「怖いよ。でも、“いない方が怖い”。」
ダビ:「……お前、もう引き返せねぇぞ。」
哀:「もう、とっくに。」
その言葉に、ダビの表情が少しだけ崩れる。
長い間、誰にも見せなかった“人間の顔”。
ダビ:「……俺さ、初めてなんだ。こんなに生きたいって思ったの。」
哀:「私も。初めて、誰かを“信じたい”って思った。」
沈黙。
二人の呼吸だけが、夜の空気を震わせる。
ダビ:「逃げようか。」
哀:「……どこへ?」
ダビ:「誰も知らねぇ場所。
名前も個性も関係ねぇとこで、ただ二人で生きる。」
哀:「それ、夢みたい。」
ダビ:「夢でいい。お前が笑うなら、それで充分だ。」
哀の瞳に、涙が光る。
それでも、笑っていた。
哀:「ねぇ、約束して。
どんなに遠くに行っても、私をひとりにしないで。」
ダビ:「……約束する。」
哀:「嘘ついたら、わかるからね。」
ダビ:「お前がいる限り、嘘なんかつけねぇよ。」
ダビがそっと彼女を抱き寄せた。
夜風に包まれて、二人の影が一つに溶けていく。
炎がゆらめく。
まるで、世界のどこかで小さな奇跡が灯ったように。
ダビ:「哀、俺はお前の光になれるかな。」
哀:「もう、なってるよ。」
二人の距離が近づく。
そして――炎の明かりの中、
彼は静かに彼女の額に唇を落とした。
それは約束の印。
この世界が嘘だらけでも、
二人の想いだけは、本物だった。
⸻
🌙 次章予告:**「第9章 炎が語る愛」**として、
戦いや混乱の中で、ダビと哀が“言葉より深く”愛を確かめ合う章にするね。
悲しみも熱も全部抱いて、二人が「本当の愛」を掴む瞬間を描く。