テラーノベル
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コメコパァァン
部屋の空気は、まだ朝のまま。
カーテン越しの光。
静かな家の音。
桃はベッドの横に座ったまま、何も急かさない。
翠は布団を握ったまま、天井を見ている。
呼吸は少し落ち着いたけど、体はまだ重い。
沈黙が続く。
桃はただ、そばにいる。
その“何も言わない時間”が、逆に怖い。
翠は、ぽつりと呟く。
「……桃にぃ」
「ん?」
「俺さ」
喉が、ひりつく。
昨日までは言えなかった言葉。
守られるって言われたのに、
それでも言えなかった言葉。
でも今日は、逃げ場がない。
自分の中で、ずっと響いてる。
「……学校」
息が震える。
「……怖い」
はっきり、言った。
ごまかさない。
冗談にしない。
強がらない。
ただ、そのまま。
言った瞬間、涙が溢れる。
「廊下の音も、ドアの音も、笑い声も」
言葉が止まらない。
「背中に何か来る気がして」
「後ろ通られるだけで、息できなくなる」
震えながら続ける。
「教室入ると、どこ立てばいいか分かんなくなる」
「座ってても、ずっと次くるって思って」
「……終わってるのに」
嗚咽混じりになる。
「もう終わってるって言われたのに、
体が信じない」
それが一番、怖い。
頭では分かってる。
でも体が拒否する。
桃は、静かに息を吐いた。
怒らない。
否定しない。
ただ、真っ直ぐ言う。
「そりゃ怖いだろ」
翠は涙で濡れた目で見る。
桃は続ける。
「お前、命削ってたんだぞ」
声は低いけど、優しい。
「怖くならない方がおかしい」
翠は、唇を噛む。
「……弱くなった?」
その問いは、ほんの少し震えている。
桃は即答する。
「違う」
間髪入れず。
「正常になった」
翠は目を見開く。
桃は、翠の胸に手を当てる。
「ここが“もう無理”って教えてくれてんだよ」
「ちゃんと壊れる前に止まってくれてる」
少しだけ、笑う。
「優秀じゃん」
翠の喉が、ひくっと鳴る。
涙がまた落ちる。
「……俺、学校行けないかも」
ついに出た、本音。
桃は少しも驚かない。
「行けない日は行かなくていい」
きっぱり。
「“行けない”って言えたの、今日が初だろ」
図星で、すちは黙る。
「今までは、壊れても行ってた」
桃の声が、少しだけ悔しそうに震える。
「それより、今の方がずっといい」
翠は、小さく言う。
「……逃げてる?」
桃は首を横に振る。
「回復」
その一言が、部屋に落ちる。
翠は、ゆっくり息を吸う。
まだ怖い。
でも。
“怖い”って言えた。
それは、確かに前より一歩。
「……桃にぃ」
「ん?」
「今日、休んでいい?」
確認するみたいに。
桃は、少し大げさなくらい頷く。
「もちろん」
「俺が学校に連絡する」
「今日は家でいい」
「怖い日は、家」
翠は、涙を拭う。
少しだけ、力が抜ける。
「……そっか」
ぽつり。
「俺、学校怖いんだ」
やっと、自分で認めた。
その言葉は、重い。
でも。
今は、一人で抱えてない。
コメント
3件
桃の言葉。どこか、俺に刺さりました。(いい意味で)一時不登校になっていた俺に刺さるのならば、翠はどれだけ深く、刺さったのでしょうか。翠がやっと本音を言えた。とても嬉しいことです。桃も、ちゃんと翠の辛さに向き合えていたのではないでしょうか。読者ながら、翠をここまで苦しめた、という思いがありますが、なんとか無事に終わってよかったです。…終わったと言っても、翠の心の傷はいつまでも癒えないと思います。その詫びと言いますか、やりたいだけというか、翠を苦しめていた奴等はこちらで処分しておきましょうか?勿論、苦しめながら、ね。 どうでしょうか?!結構!なんか!賢そうにしてみました !こはに上から目線な感想言っちゃったけど、今回もめっっっちゃよかったよ!次回の作品も、焦らない程度で、書きたいときにでいいですので、待っています!長文失礼しました!