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お色直しでは、私はコットンキャンディーみたいに可愛くてお気に入りだった、レインボーカラーのふわふわとしたドレスに、
そうして、これも私がとても気に入ったのだけれど、彼の甘い雰囲気にそぐう、スウィートタイプなピンクホワイトのタキシードに、同系色のペールピンクのタイを合わせた装いには、そのあまりの格好良さに女性陣から歓声が上がるほどだった。
「貴仁さんが素敵すぎて、女性のお客さんの視線が集中しちゃっていて……」
彼が女性たちから見つめられていることに、ちょっとだけジェラシーを感じて呟くと、
「君も、男性客の目を集めていて、このまま私だけしか見えないよう、閉じ込めておきたくなりそうだ……」
そんなまさかの情熱的な言葉を、仄かに頬を染めた彼の口から伝えられて、自分が少なからずジェラシーを感じていたことなどすっかり忘れて、一瞬で胸を撃ち抜かれてしまった。
二人で手を携えてのウェディングケーキの入刀に、揃って招待客の皆さまを回るシャンパンサーブ、涙を堪え切れず号泣必至なお父さんへの花束贈呈と、幸せな思い出の尽きない披露宴を終え、彼と共にハイヤーで帰途に着く。
荷物を手にふーっとひと息をつき座席にもたれかかると、そういえばと思い出したことがあって、私は慌てたようにバッグを探った。
「……忘れちゃってた」
手探りしたそれを手に呟くと、
「どうした、何か式場に忘れて来たのか?」
気づいた貴仁さんに、そう問いかけられた。
「ああいえ、忘れたのは式場にではなく、あなたに渡そうと思っていた物でして……」
「……私に?」と、彼が不思議そうに首を傾げる。
「ええ、これを今日はぜひつけてもらおうと思っていたのに、すっかり忘れてしまっていて……。前に話したことのある、オリジナルの猫の香水なんですが……」
私が取り出した物に、彼が目を留め、「ああ、覚えている」と、返す。
「あなたへのプレゼントにって前に買っておいたのに、結婚の予定にかかりっきりでずっと渡せずじまいだったから、特別な日の今日にもと思って持って来てたんですが、……失念しちゃってました」
せっかくつけてもらうつもりだったのにと、落胆を隠せないでいる私に、
「では家に帰ったら、つけようか。特別な日は、まだ終わってはいないだろう」
彼がそう優しげに話すと、それだけで落ち込んでいた気分がふわっと上がるみたいで、
「はい……」と、小さく頷いて、顔をほころばせた。