テラーノベル
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どこにでもありそうな歩道橋。
少し目を向けてみると、ランドセルを背負った少年と少女がいた。
少年は眠そうに大きなあくびをしている。
少年の名前は……“速栄駿”といった。
そして、隣で歩いているのが“花斑桜”だ。
駿「ふわぁ……眠ぃ〜。」
駿は大きなあくびをする。
桜は少しムッとした顔を見せ、駿のランドセルを大きくたたいた。
その拍子に、駿が被っていた帽子が落ちる。
帽子には、今一番人気がある野球選手、“水村祐斗”のサインが書かれていた。
駿は大の野球好きで、その中でも水村選手が好きだと毎日桜に言っては呆れられていた。
駿「ちょっ……。あ、ちょっと汚れてまったじゃねえか!」
駿が怒り出し、桜は慣れたようにハンカチを取り出す。
彼女のハンカチにも、同じように誰かのサインが描かれていた。
駿は大急ぎで汚れを拭き取り、お返しとばかりに桜の顔に汚れがついたハンカチを投げる。
桜「痛ッ!何するの駿くん〜!」
駿はゲラゲラと笑いながら走り出す。
桜はそれを追いかけ、鬼ごっこが始まった。
しかし、ここは通学路。
いくら追いかけようとしても、ほかの生徒達に行く手を阻まれなかなか前に進めない。
それは駿も同じで、困ったように前を見ていた。
「あ〜!せんせーがあぶないからがっこういくときはしっちゃだめっていってたのに〜!」
駿の前を歩いていた小学1年生くらいの女の子が駿を指差して言う。
少し戸惑った駿の右肩に、桜の右手が置かれる。
桜「ねぇ〜?駄目だよね~。お姉ちゃん注意するから言っていいよ〜」
左手をヒラヒラとさせ女の子に手を振る。
右手を置かれた駿は冷や汗をかきながら動こうとするが、ガッチリと掴まれ動けない。
駿「ちょ、さくr……」
桜「んもぉ〜!駿くんのせいでかなたゆのサイン入りハンカチ汚れちゃったじゃん!」
桜もまた、K-POPアイドルにハマっていた。
なかでも、“RWBYNOVA”というグループに所属するKANAが大好きだった。
日本に来日するライブには必ずと言っていいほど足を運び、KANAのグッズが販売されればすべて買っていた。
桜「まあこれファンクラブ会員の人ならいつでも買えるやつだけどさぁ…」
怒ったように頬を膨らませ、駿の方を見る。
何か考えたかのように駿の帽子に手を伸ばし、走り出した。
駿「おま、ちょ!!待て、それ10万人の人が応募した中で俺1人が当たったマジで限定品だから!しかも直筆サインなの!洗ったら消える……」
困ったように頭を抱え、絶望しだす駿。
それでも桜は止まることなく走る。
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駿「ハァ、ハァ……やっと着いた……」
桜の後を追い駿は急いで教室に入る。
桜は荷物を片付け、友達とニコニコと話していた。
駿は気づいた。
“帽子がない”。
駿「おい桜!!帽子何処やったんだよ!」
力強く桜の机を叩く。
「駿、桜ちゃんのこと虐めるなんてサイテー」
「んね、サイテー。だからモテないのよ」
「行こ、桜ちゃん」
桜の周りにいた女子たちが口々にそう言い、桜の手を引いて何処かに行った。
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