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第8話:傘をささない理由と、内側の温もり
その日は特に雨が激しく、風も強い日だった。
普通なら家の中でじっとしているような天気だったけれど、そいつがどうしても外に行きたそうに玄関のドアをカリカリと引っ掻くので、僕たちは意を決して外へ出た。
僕はあえて傘を開かなかった。強い風でどうせ傘なんて役に立たないと思ったし、何より、たまには全身で雨を感じるのも悪くないと思えたからだ。フード付きのレインコートを羽織り、ジッパーを上までしっかりと上げる。そして、コートの内側、胸のポケットのあたりにそいつをすっぽりと抱きかかえた。
外に出ると、たたきつけるような雨が僕の顔やフードを濡らした。冷たい雨粒が頬を伝って落ちていく。けれど、コートの内側からはそいつの圧倒的な体体温が伝わってきて、少しも寒くなかった。
誰も歩いていない雨の街を、二人で静かに歩く。
足元で跳ねる水滴の音、屋根を叩く雨音、そして僕の胸の中で聞こえるそいつの規則正しい呼吸音。世界から自分たち以外の人間が消えてしまったような不思議な感覚だった。
「雨の日も、悪くないな」
僕が呟くと、コートの隙間からそいつがひょっこりと顔を出し、雨空を見上げた。
僕はレインコートの大きなポケットの中に両手を突っ込んだ。手袋はしていないけれど、内側から伝わる体温のおかげで、指先までじんわりと温かかった。思い出やガラクタで溢れていた僕のポケットは、いつの間にか「温もりを確かめる場所」になっていた。雨が降るたびに、僕たちの絆は少しずつ深まっているようだった。
コメント
1件
また雨のエピソードですね。傘をささずにレインコートで、胸のポケットにそっと抱きかかえる——その距離感がたまらなく好きです。冷たい雨粒と、内側から伝わる体温の対比が美しくて、ポケットが「温もりを確かめる場所」に変わったという一文にじんわり来ました。雨の日も悪くない、って思える相手がいることのあたたかさが沁みます。
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白米のお米抜き
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PSS(ネタエビ)